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レポート

《とちぎ地域づくりインターンシップ@県南エリア》活動体験レポート

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地域の課題に向き合い、地域づくり活動の大変さや面白さを肌で学ぶ『とちぎ地域づくりインターンシップ』

『とちぎ地域づくりインターンシップ』とは、「地域づくりの担い手となりうる若者を継続的に地域につなぎきれていない」「地域に多くいる実践者同士のネットワークが不十分」という課題を受け、大学生・高校生・専門学生・20代社会人向けに開催されている、実践者とともに地域づくり活動を行うインターンシップです。

県北・県央・県南という3つのエリアに分かれ、中間支援センターや子どもの居場所づくり、ラジオ局や農地保全など、様々なテーマで活動を行う地域づくり団体のもとで活動体験やインターンシップを行います。

この記事では、県南エリアで実施された活動体験の様子をお伝えします 🙌

今回活動を体験させていただくのは、栃木市を拠点に地域計画づくり、施設開発・運営、コミュニティ事業を行う『合同会社 Walk Works』、小山市市民活動センター「おやま~る」の管理・運営を担う『ゆめ評定』、子どもたちが安心できる環境を提供する『子どもの居場所 OZ』。どの団体も、地域をより豊かにする上で欠かせない活動を行っています。

歴史・景観保持・移住など、まち歩きを通して栃木市を新しい視点で見よう!

最初の活動体験先は、合同会社 Walk Works。今回は、合同会社 Walk Worksの活動拠点である栃木市でまち歩きを行います。

まずは駅前で参加者と合同 会社Walk Worksの遠藤さんと落ち合い、栃木市観光交流館『蔵なび』にて自己紹介を行います。

『蔵なび』には、特産品の展示やスタッフによる観光案内、誰でも無料で利用できる交流スペースがあるほか、移住・定住に関する相談にも応対しています。

移住定住支援コーディネーターの話を聞く参加者

インターンシップに応募したきっかけや今行っていることなどを共有し合いほどよく緊張が解れてきたところで、早速まち歩きスタート!

情緒あふれる蔵の街は、かつては宿場町でした

栃木市は“景観まちづくり”の観点からコンビニや銀行、店舗などを落ち着いたブラウン色に染め、まち全体で美しい景観を維持しています。秋晴れの心地よい陽気のもと歩いていると…なにやら「自転車借りられます」という看板を発見!

「アプリを使って自転車を予約できる・借りられるサービスを社会実験的に実施しているんです」と遠藤さん。観光客の利用が多いと思いきや、通勤や買い物など、地元の方の利用が案外多いのだとか!

駅前や公共空間などに設置されているそうで、“どこでも借りられて好きな場所で返せる”という点が魅力のひとつ。レトロな蔵が立ち並ぶ栃木市には裏路地や狭い小道が多いので、自転車でゆっくり周ることでまた違ったまちの魅力に気づくことができるかもしれません。

また、シェアサイクルが設置されている旧警察署敷地臨時駐車場では、マルシェやフェス、フリーマーケットなど、地域を盛り上げるイベントごとが定期的に開催されているそう。イベントへの来場はもちろん、無料で利用できる広々とした駐車場なので、観光などで訪れた際にはぜひご利用ください 🚗

シェアサイクルの設置がある『旧警察署敷地臨時駐車場』

蔵の町大通りを抜けレトロな街並みを楽しんでいると、さあっと気持ちいい風が吹いてきました…!巴波川(うずまがわ)に到着です!遊覧船が行き来しコイやカモがのんびり泳ぐ、観光客にも人気のスポットです。

栃木市の代名詞でもある巴波川

「社会実験としてテーブルと椅子を川沿いに置いたら、テイクアウトしたものを食べたり、ぼーっとしたり、会話を楽しんだりと、人の賑わいが生まれました。普段何気なく通り過ぎる場所を活用し、立ち止まって風景を楽しんでもらう仕掛けをつくったんです。新しい資源を見つけて新しいことをする=地域づくりではなく、日常のなかで生み出せる価値は沢山あります

「まちの滞在時間を変える」という遠藤さんの説明に参加者は興味津々。日常のなかに溶け込んだ川という美しい風景をもう一度見つめ直し、立ち止まってもらう仕掛けをつくる。地域づくりや地域活性化においては、そこに暮らす住民の視点や「この場所をどう活用したいか」「どんな景色をつくりたいか」を深く考えること、原点に立ち返ることが大切だと学びました。

また、巴波川は栃木市が栄えたきっかけのひとつ。なぜかというと、麻の一大産地でもある栃木市は、巴波川を使って麻や木材を江戸まで運んでいたという歴史があるから。江戸からは塩や海産物などが運ばれ商売が盛んだったそうで、「今の栃木市があるのは巴波川のおかげ」と言っても過言ではないそう。全く知らなかった栃木市の歴史にも触れ、まちを見る視点がガラリと変わりました。

栃木市の歴史について説明する遠藤さん

あちこち見渡したくなるような景観の美しさや奥深い歴史など、隠れたまちの魅力に触れ、様々な角度からまちを見ることの面白さを実感しました。“地域づくり”という視点に立ってまちを見ると、また違う発見があるかもしれませんね。

「百貨店の空きテナントに市役所が入っています」と遠藤さん
約90年間にわたり役場・市役所として利用されていた『栃木市立文学館

また、面白いなと感じたことが、通りや広場、駐車場など、様々な公共空間でフリーマーケットやマルシェ、蚤の市やワークショップなどの催し物が開催されているということ。古き良き蔵の街ですが、実は移住者も多く、若い方の挑戦のフィールドにもなっているということが新しい発見でした。

数多くの催し物が開催されるという公共空間

どんな形でも活用できるという“公共空間が持つ可能性”について知ることができました。催し物は定期的に開催されているそうなので、今度足を運んでみようと思います ◎

続いては、嘉右衛門町(かうえもんちょう)エリアへ。嘉右衛門町は、文化財保護法により『周囲の環境と一体をなして歴史的風致を形成している伝統的な建造物群で価値の高いもの』とされる“伝統的建造物群保存地区”に選定されており、地域一体となって歴史的街並みが保存・整備・利活用されています。なんと伝統的建造物群保存地区は、県内では嘉右衛門町のみ!

ゆるやかなカーブの道沿いに、蔵造りの店舗や住宅が立ち並びます。宿場町・商家町として栄えていた嘉右衛門町では、通りに面して建てられた見世蔵(店舗)の後ろに蔵や居住スペースを配置する地割が一般的だそう。

移住者や若い方が様々な形で空き蔵を活用しています

興味深かったのが、嘉右衛門町の名前の由来は人名だということ。岡田 嘉右衛門さんが開墾した新田の名前が由来になっています。

栃木市屈指の旧家『岡田記念館

いよいよまち歩きの終着点、嘉右衛門町伝建地区拠点施設『ガイダンスセンター』に到着!この場所は、かつて全国有数の生産高を誇った味噌工場の跡地を整備してつくられたそうです。

ガイダンスセンターで本日のまち歩きの感想を共有し、活動体験は終了となります。

参加者からは、「昔ながらの街並みが残っていて奥が深かった。空き家や空き蔵を整備・利活用しているところ、移住者が活躍できるフィールドが沢山あるところに魅力を感じた」「日常のなかで人の賑わいをつくることは、まちや地域の魅力に直結すると実感した」「歴史的にも色濃く強みがはっきりある栃木市は魅力であふれている。外から人を入れるという動きが盛んで、まちづくりのモデルケースになり得ると感じた」「地元なのに知らないことばかりだった。『まちはどうあるべきか?』『観光したいまちと移住したいまちの違いは何か?』など、インターンシップを通して考えていきたい目標ができた」という声が聞かれました。

一人ひとりに寄り添い、市民活動を幅広く支える中間支援センターの役割を知ろう!

続いての活動体験先は、ゆめ評定。今回は、ゆめ評定が管理運営を担う小山市市民活動センター「おやま~る」にて活動体験を行います。

自己紹介を行った後、センター長の宮岸さんよりおやま〜るについての説明を受け、学びを深める時間に。

おやま〜るの役割は、相談対応や施設の利活用、連携・交流の促進や情報収集・発信など、本当に様々。一人ひとりのニーズや課題に寄り添い、市民活動を幅広くサポートしています。

青年海外協力隊OV、元県域センタースタッフ、NPO法人運営スタッフなど、多彩な経歴を持つスタッフが相談に応対してくれるという点が個人的に魅力的だと感じました。研修室や印刷機があるほか、予約なしで多目的会議室を利用することもできるので、仕事や勉強はもちろん、相談したいことがあるときや市民活動やボランティアに関する情報を集めたいときにぜひご活用ください 🏃‍♀️✨

説明の後は、「おやま〜るについてもっと知ってほしい!」という想いのもと『おやま〜る3択クイズ』の時間へ。「おやま〜るに登録している市民団体の数は?」「おやま〜るが実際に行ったセミナーの名前は?」「センター長の宮岸さんの前職は?」など、難易度の高いクイズに参加者も考え込みます。

子ども・福祉・まちづくり・環境など、200を超える市民活動団体がおやま〜るに登録していること、宮岸さんの前職はエンジニア・青年海外協力隊・羊飼いだということが個人的にとても驚きました…!「羊飼い…?」「どんなきっかけでここに!?」「羊飼いってどんなことするの?」など、みなさん宮岸さんに興味津々!(笑)

マニアックなクイズも沢山あったので、みんなで「ああじゃないか」「こうじゃないか」と話し合いながら交流を楽しむことも、このミニゲームならではの醍醐味ですね。

おやま〜るに関する理解が深まってきたところで、続いては館内を見学する『ミニツアー』に出発!

住居と保育園が入った複合ビルにおやま〜るが入っていること、登録団体が自由に使用できるロッカールームが設置されていること、市民活動やボランティアに関する数多くの資料や本、チラシを自由に閲覧できること、印刷機や多目的会議室は誰でも自由に利用可能なことなど、おやま〜るの実態と活用方法について学ぶことができました。

スタッフのみなさんもとても親切で温かいので、気になった方はぜひ一度足を運んでみてくださいね。

ミニツアーの後は、『若者と地域をつなぐアイデアワーク』を行います。「若い方のイベント参加が少ない」「若い団体がおやま〜るに登録していない」「若い方がそもそもおやま〜るを知らない」など、おやま〜るが抱えるいくつかの課題に対して二つのグループに分かれてアイデアを出し合い、解決策を考えます。

参加者からは、「オンラインイベントを増やしたりと若い方が参加しやすい環境を整える」「TikTokやInstagramのリール動画を活用して施設をPRする」「個性豊かなスタッフに関する発信を積極的に行う」「若い団体に直接宣伝をする」など、若い世代ならではの様々なアイデアが生まれました。

インターンシップでは、ここで出たアイデアを実際に形にしていきます。これから、おやま〜るがどんな拠点になっていくのか。アイデアがみなさんの手によって形になることが今からとても楽しみです♩

最後に本日の感想を共有し、活動体験は終了となります。参加者からは、「200を超える登録団体がいるにもかかわらず、新しい取り組みを実践しようとする姿勢が素敵だと思った」「市民活動を支えることの意義や価値について学ぶことができた」「『ボランティアに興味がある』『地域で活動したい』というときに気軽に相談できる中間支援センターはとても大切な役割を担っていると初めて知った」という声が聞かれました。

施設の整備・懇談会を通して子どもの居場所の意義や価値を知ろう!

最後の活動体験先は、子どもの居場所 OZ。今回は、施設の整備とお弁当を囲んでの懇談会を行います。

「こども食堂や子ども支援の拠点施設に来たことは初めて」という参加者が多いなか、自己紹介を行い、早速活動スタート!まずは、こども食堂で利用しているキッチンの整備を行います。

食品や調味料を棚から下ろし、賞味期限をチェック
きれいにした棚に食品や調味料を入れていきます

スタッフのみなさんは、「みんなでやると進みが早い〜!」と喜んでくださいました。

広々としたキッチンが大方きれいに整ったところで、休憩を兼ねてスタッフのみなさんとの懇談会へ。

おやつに手づくりポップコーンをいただいちゃいました!

「こども食堂ってどんな場所だと思う?」というスタッフの問いかけに対し、「家でご飯を食べられない子どもたちが来る場所」と参加者が答えます。スタッフのみなさんは頷きながら、「今は共働きで時間的に余裕がないご家庭が多く、毎日スーパーで購入したお弁当やお惣菜を食べるということもごく普通なんです」と言います。

「こういう話も耳にしました。『学童に行っていない近所の子どもに“おかえり”と言ったら無視された。だからもう一度言ったら、“おかえりって言われたらなんて返せばいいんですか?”と言われた』と。家に帰っても誰もいないことが当たり前で、“ただいま”という機会がない。また、両親は子どもと十分に関わる時間的余裕がない。そこで『子どもたちがゆるく大人と関われる場をつくりたい』という想いが芽生え、活動を始めることにしました」

参加者は、真剣なまなざしでスタッフの話に聞き入ります。

「ただ、『困っている子だけ来てね』と呼びかけてしまうと『お金がないと思われたくないから』という理由で来てくれない。だから助けを必要としている子どもをしっかり救えるように、あえて対象者を広く設定しています。また、なるべく化学調味料を使わない・こめ油を使う・野菜を洗剤で洗わないなど、子どものことを想って活動しています。コストはかかるけれど、無料とはいえ手は抜きません」

子どものことを第一に考え活動している一方で、スマートフォンを所有していない・SNSなどを見る時間的余裕がない困窮家庭にこうした居場所を周知させることは中々難しいそう。そんな“届けたいに届けられていない”もどかしさを感じながら、イベント出店やチラシ配りなど、対面での関わりを大切に地道に居場所や活動の発信を行っていると言います。

困窮家庭の現状や子ども支援のリアルな話に驚き「子どもの支援は難しそう」と考え込む参加者に、「この場所に来てお茶を飲むだけでも支援になります。子どもに『なにしてるの?』と話しかけられたら『お茶飲んでるんだよ』と返す。そこから子どもたちと対話を重ねていく。それこそが居場所の支援だと思っています」「ボランティアをする上では、自分の生活がなによりも大切。最初は見学だけでもいいので、自分に合った形を探してみるといいかもしれないですね」と、スタッフのみなさんが関わりしろについて語ります。

子どもの居場所 OZには、基本的にルールがありません。だから何時に来ても何時に終わりにしても、それが定時。また、“スタッフを大切にする”という風土があり、注意ではなく意見を言うこと、「ごめんなさい」ではなく「ありがとう」と伝えることを心がけているそう。参加者は、「自分でも関われるかもしれない」「ボランティアに興味がある」と目を輝かせていました。

懇談会の後は、こども食堂などで提供されている手づくりのお弁当をいただきます。どれも味付けが絶妙でとっても美味しく、すべて手づくりというおかずの数々からは染み渡るような優しさが感じられました。子どもたちだけでなく、親御さんにとっても温かく健康的な手づくりご飯は嬉しいはずだと確信しました…!

こども食堂などで提供されている手づくりのお弁当

最後に本日の感想を共有し、活動体験は終了となります。参加者からは、「身近な人の『困った』という声に意識的に耳を傾けようと思った」「今の日本の困窮家庭は少ないとなんとなく思い込んでいたので、こども食堂の利用者が多いという話を聞いて驚いた」「ボランティアとして活動してみたい。関われる余白が沢山あることは嬉しい」という声が聞かれました。

今回3つの団体の活動を体験してみて、「地域づくりはひとつじゃない」と学びました。

友人との何気ない会話やまちなかで目にした風景、身近な「困った」という声。

日常のあらゆる場面に地域をより豊かにするヒントが落ちています。

まっさらな状態で新しいことを始めること、全く新しい資源を使うことだけでなく、「日常のなかで工夫する」「周囲の困っている人の声に敏感になる」「今ある資源を使って新しいことを考えてみる」ということも、自分だからこそできる地域づくりになり得るかもしれません。