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若いからこそ、未熟だからこそ、可能性がある。地域全体で若者の活動を支える環境をデザインする『NPO法人青二才』の挑戦

みなさんは若い頃、どんなことを考え何をしていましたか?

「自信に満ちていて臆せず挑戦していた」「他人と比較してしまい落ち込んでいた」「忙しい日々に充足感を感じていた」「やりたいことを模索していた」「進路や将来に悩んでいた」。

楽しい時も辛い時ももちろんあるかと思いますが、漠然とした将来に対する不安感や他人との比較による自己肯定感の低下、人間関係の悩みなど、若さゆえの悩みや葛藤も沢山あるはずです。

ただ、大人と子どもの狭間で揺れながら成長していく若者世代は、他人に言えない悩みや葛藤が多いにも関わらず、気軽に相談できる大人の存在やコミュニティが限られてしまうこともまた事実。

地域は若者の力を必要としているのに、自信を持って動ける若者は少ないんです。そのひとつの要因として、“自分について考える機会や自宅と学校以外で関わる大人の数が少ない”ことが考えられます。もっと気軽に相談できる大人がいたらいいし、地域で活動しながら自分に可能性を感じられる人が増えたらいいなと思っています。

そう語るのは、下野市地域おこし協力隊の鈴木 祐磨(すずき ゆうま)さん。自身の原体験も相まって、若者の活動を支える地域をつくるべく『NPO法人青二才』を設立しました。

活動の様子(提供:NPO法人青二才)

“青二才”の意味を調べると、“年若く物事や経験が未熟”とのこと。こう見ると、少しネガティブな意味合いがあるのかな?と思ってしまいます。

ネガティブな意味にもとれますよね。でも“青二才”という文字をよく見ると、“青=(イコール)才”と読める。青を若い、才を才能と変換したら、“若者=才能”という意味になるんです。

若いからこそ、自分だからこそ、すごく可能性がある。そんなふうに「自分の可能性にわくわくできる若者を増やしたい」という想いで名づけました。

NPO法人青二才 代表理事の鈴木さん

今回は、NPO法人青二才の“若者の可能性を引き出す仕事”について伺いました。字面だけでもとても魅力的な仕事ですよね。若い方はもちろん、自分は若くないから…という方もぜひ読んでみてください〜!(鈴木さんいわく、若さは年齢ではなく気持ちの問題らしいのです!)

今回お話を伺ったのは…

NPO法人青二才 代表理事 鈴木祐磨(すずき ゆうま)さん
1994年生まれ、千葉県のベッドタウン育ち。丸い眼鏡がトレードマーク。前職はものづくり教室の先生として、幼稚園生から高校生たちの「好き」「やりたい」を表現する支援を行う。2020年に地域おこし協力隊として下野市へ移住し『シモツケ大学』や『高校生もしもプロジェクト』などに携わり、地域のつながりづくりや「やりたい」への伴走支援を行う。2023年に『NPO法人青二才』を立ち上げ、下野近隣のイケてる若者世代を増やそうと企み中。

地域とのつながりを大切に多彩な企画を展開する『シモツケ大学』

NPO法人青二才は、2023年1月11日に設立された若々しい団体です。スタッフの鈴木さんと髙山さんに加え、数名のインターン生(大学生)と活動を行っています。スタッフとインターン生は10代〜20代で、WEBサイトからも若者ならではのフレッシュさを感じます。

NPO法人青二才の拠点は、下野市にあるシェアスペース&マーケット『WEL』。『だがし屋まんまる』という駄菓子屋が併設されており、夕方は近所の子どもたちで賑わいます。これからカフェやバー、シェアキッチンが新設予定とのこと。鈴木さんは子どもたちや駄菓子屋の店主との交流も深いそうで、仕事をしながら地域とのつながりを大切にしています。

「元気?今日はよろしくね〜!」と気さくな鈴木さん

今日はよろしくお願いします!ちょっと気になっていたことがあって…NPO法人青二才が想定する“若者”ってどの年齢層のことなんですか?

明確な定義はありませんが、高校生・大学生・30代までの社会人と関わることが多いですね。あっち(だがし屋まんまるの出店スペース)でスマブラやったりとか、小学生と関わる機会も結構ありますよ!

小学生とスマブラ大会で白熱!(提供:NPO法人青二才)

小学生!?だいぶ幅広い…!それにしても楽しそう〜!普段はどんなことをしているのでしょうか?

大きく分けて3つの活動を行っています!1つ目は、下野市のまちや人をテーマにした授業やイベントを開催する『シモツケ大学』の事業運営です。今年オープンしたこの拠点(WEL)の運営と、月に1回ほどイベントを開催しています。DIYしたり、まち歩きしたり、下野市の面白い人の話を聞いたり。

下野市にゆかりのある人たちと交流する『しもつけミートアップ』の様子(提供:NPO法人青二才)

これも面白かったな。一般の方の持ち込み企画なんですけど、WELの明かりを落として怪談話を聞くっていう。企画・運営のサポートをしたり相談に乗ったりと、伴走者として入りました。当日は20人くらい来て結構盛り上がりましたよ!

夏の夜、ヒヤッとする怪談話をみんなで聞いています…(提供:NPO法人青二才)

主催が“妖怪愛好家”って面白い…!(笑)一般の方と一緒にイベントを企画することもあるんですか!?

あります!ただ、「誰でも一緒にやろう」ということではなく、活動を通して関わった方の次のステップを支えることがメインですね。相談に乗ったり、適切な方につなげてコーディネートしたり。そんなふうに既存のつながりのなかで一緒に動くことが多いです。

活動を通して生まれたつながりをとても大切にされているんですね!

高校生の「やりたい」を地域で実現する『高校生もしもプロジェクト』

2つ目は、まちなかを舞台に高校生が挑戦したいことを企画・実現する『高校生もしもプロジェクト』の伴走支援です

高校生もしもプロジェクト、面白そう〜!

具体的には、大人と一対一で自分のことやキャリアについて話し合える場をつくったり、中高生の交流の場を企画・運営したり、地域のお祭りに屋台出店したり、高校生ラジオを行ったり。今は高校生の「やりたい」を叶えるための伴走支援をしていますが、企画を通じてもっと地域やそこに暮らす方とつなげていきたいと思っています!

高校生と地域のお祭りにて屋台出店!(提供:NPO法人青二才)

高校生と地域をつなぐ視点って珍しいかも…!私が高校生の頃は自宅と学校の往復で、他校の生徒や地域に暮らす方と交流する機会はめったにありませんでした。

中々ないですよね。だから「地域と関わることや企画を立てることは初めて」「自己表現することは初めて」という子がすごく多くて。それってもったいないなと思うので、高校生に限らず小中学生など、早い段階から“地域と関わって何かする機会”を沢山つくっていきたいです。

高校生と活動を行う様子(提供:NPO法人青二才)

どうして“地域と関わって何かする機会”を?

学生は地域で暮らしているにもかかわらず、自宅と学校以外で日常的に関わる大人の存在が圧倒的に少ないと思うからです。地域で様々な人と出会い活動することで選択肢が広がり、自己表現できるようになり自分について深く知れると思っています。それは今後の選択にいい影響を与えるはずです。

「この道を行けば正解」という固定概念ではなく、若い頃に視野を広げて色々な選択肢を持つことはやっぱり大切だと思っています。

なるほど。たしかに学校という同質性の高いコミュニティで過ごしていると、「目立ったことはしないでみんなと同じ選択をしよう」と思うことは本当に多かったですね。それは進路選択にも大きな影響を与えていたと思います。

今はSNSで色々な選択肢に触れる機会も増えたけど、現状まだまだだと思うんです。自分も高校生の頃、家族や先生に相談できなかったし、自分について考える機会も少なくて。学生の頃に悩みを打ち明けられる大人って、数えられるくらいじゃないですか?だからこそもっと気軽に相談できる、関わりを持てる大人が地域に沢山いたらいいなって。

私も、思っていることや悩みをふわっと話せる大人がそばにいたらよかったな…と今になって思います。当時はSNSに書き込んだり友人に相談することで不安を解消していて、“家族以外に相談できる大人がいないことが当たり前”でしたね。誰にも相談できずに塞ぎ込んでしまう人も少なくないのではないでしょうか。

だからこそ相談できる、活躍できる地域の居場所やフィールドは必要だと思っています。そうそう、この間、福祉関係への就職を考えている学生に下野市の革新的な老人ホームをつなげたら「ここに就職したい」と気持ちが傾いて、今度面接するそうです!

スタッフもインターン生も、傾聴して想いを引き出し親身に動ける人が多いので、そこはこれから団体の大きな強みになるんじゃないかと思っています

実際に影響を与えてる…!想いを汲み取り、最適な人や場所につなげてくれる存在ってすごく大きいですね。

でも“青二才”という名の通りまだまだ僕らは未熟なので、例えば「起業するためのスキルを身につけたい」と言われても教えられないんです。できないことは沢山あるけど、若者の可能性を見出して自信を持って適切な人や場所につなぐ。そんなふうに“頼り頼られる関係性”を地域でつくっていきたいです。

ローカルメディアの運営や地元企業・地域団体にてインターンシップを行う『シモツケUターン促進事業』

3つ目は、Uターン促進と郷土愛醸成を目的にした『シモツケUターン促進事業』です。下野市にゆかりのある方や企業・団体について発信するローカルメディア『シーモ』の運営にも携わっています。こんな感じ…!

下野市・下野市地域おこし協力隊・NPO法人とちぎユースサポーターズネットワークと連携して運営を行うローカルメディア『シーモ』(画像: Instagram
2023年夏からスタートしました ◎

わあ!お洒落な雑誌みたいで可愛い…!

下野市出身者向けに「地元をより身近に感じてほしい」「地元の魅力を再発見してほしい」という想いで運営しています。あとは、下野市の企業と地域団体でインターンシップを行う『企業と地域団体インターン』を絶賛企画中です

企業と地域団体インターン?

地元の企業と関わる機会は中々ないので、「インターンシップを通じて地元企業や地域団体、そこで働く人や活動する人について知ってほしい」という想いがあって。取材して記事を書いたり、ワークショップを行ったり…どんなプログラムをつくろうかなと考えているところです!

キックオフミーティングの様子(提供:NPO法人青二才)

恩を返しながら、若者の活動を支える地域をみんなでつくっていく

下野市に特化した多様な事業を展開しているんですね。でも、どうして下野市を拠点に活動しようと思ったのでしょうか?

本当に、縁とタイミングですね。下野市に全くゆかりはなかったけど、友人に誘われて下野市で地域おこし協力隊として活動するなかで色々な人とつながりました。そして「安定した自分のホーム(居場所)をつくりたい」と思っていた矢先、中間支援組織を設立する話が流れてきたので「やらせてください」と手を挙げたんです

WELで仕事をする鈴木さん

僕は「下野市だから」と移住したわけではありませんが、暮らしてみていいなと思ったことはすごく沢山ありました。一番は「自分のホームをつくりたい」と言った時に、応援してくれた方・関わってくれた方が沢山いたこと。この地域でいただいた恩を返しつつ、関係を紡ぎながら暮らしていきたいと思ったことが下野市に拠点を置く決め手になりました。

下野市で暮らす人たちに惹かれた部分が大きかったのでしょうか。

そうですね。自分は外から来た“よそ者”で何ができるか分からないし、いなくなる可能性もあるじゃないですか?それでも「一緒にやろうよ」と声をかけてくれたり、プライベートでも仲良くしてくれたり、苦しい時に沢山支えてもらったんです。

数えきれないほどの恩をいただいたので、今はみんながわくわくすること・喜ぶことをこの地域で実践して、恩返ししたいなと思っています

あとは、自分が若者世代だからです。活動しながら「若者の力ってすごく大きいんだな」「地域で求められてるんだな」と実感することが多くて。同時に「若者の力を地域で活かしきれてないな」とも感じたので、自信を持って動ける若者を増やしたいというところも大きいですね。それは、自分自身も含めてです。

設立総会の様子。地域の方々と話し合いを重ね、約1年間の構想期間を経て『NPO法人青二才』設立へ(提供:NPO法人青二才)

これはNPO法人青二才の“設立総会”の写真です。地域の方々のアツい想いを沢山聞いて、すごく背中を押されたんです。

この写真、家族みたいですごくあったかいなあ…!

家族みたいだよね!(笑)NPO法人にした理由は、会員が必要だったからなんです

会員が必要だったから、というのは?

一緒に地域をつくりたい方々がいたので、わざわざ人を巻き込まないと運営できない団体にしたくて。僕は人を頼ることが苦手なので、関わり続けるための口実として。この方々と一緒に、より多くの人が下野市と関われるきっかけ(入り口)をつくっていきたいです。

地域に密着した形で活動を行う鈴木さん(右端)(提供:NPO法人青二才)

自分たちだけでなく「みんなで地域をつくりたい」という想いが根底にあるんですね!

そうなんです。つい先日、Instagramで「カメラ譲ってください」って投稿したら、なんと4台も集まって。他にも「このカメラどう?」と声をかけていただいたり、応援メッセージをいただいたり、拡散していただいたり。

もともと人に頼ることは苦手だったけど、青二才な僕らだからこそ、できないことや困っていること、実現したいことを発信しないといけないなと改めて感じたんです

NPO法人青二才の Instagram より

発信をきっかけに4台も集まったんですか!?すごい…!

実際に集まったカメラが他の活動に役立って、さらなる発信につながっていく。「やりたいけどできない、助けて」と自分の未熟さを分かった上で伝えて、代わりにできることを提示する。そんな循環をどんどんつくっていくことが大切で、ずっとこういうことがしたかったんだなと自分なりに腑に落ちた瞬間でした。

私も人に頼ることは苦手なんですが、自分の不得意なことは得意な誰かにお願いして、自分の得意なことを誰かのために役立てるという生き方ってすごく本質的というか…まさにつながりのなかで生きているようでいいなあ。

一番の目的は“若者の活動を支援すること”じゃなくて、“若者の活動を支援できる地域をつくること”。自分たちだけが取り組むよりも、他の地域団体とつなげたり若者の活動を受け入れられる場所をつくることを大切にしています。

例えば、応援基金をつくってお金で支援できる環境づくりをしたり。ひとりでも多くの若者の活動を支える基盤と入り口をつくっていきたいです。

地域に多様な入り口と選択肢をつくり、若者の可能性を広げたい

暮らしている地域に濃く関わることで視野や可能性が広がりそうだし、新しい景色が生まれそうですね。下野市のこれからが楽しみです!

これからもっと、地域と関われる様々なきっかけをつくっていきます!まち歩きの会、お酒を飲む会、ボードゲームの会…企画ごとに参加者層は違ってくると思うので、多様なグラデーションで仕掛けづくりをしていきたいです。

下野市出身じゃないけど気になる…!

出身地や居住地、世代問わず、参加大歓迎ですよ!“若者世代が対象=若者の活動機会を増やす”という意味なので、そのきっかけとなる入り口はスマブラ大会でもまち歩きでも多世代交流でも、なんでもいいと思っています。

そこが彼ら彼女らの活躍する場所になったり、自己表現できるようになったり、次のステップに踏み出せたりする。そんな価値が生まれることを望んでいます。

若者同士だけでなく、色々な世代の方とつながり活動することで気づきが芽生えるかもしれませんよね。地域に若者が活躍できるフィールドが広がっていくのってすごく素敵…!

青二才な若者だからこそ活躍できる場所は、地域に沢山あります。自分が持つ青二才の面に可能性を見出しながら、わくわくすることを一緒にしましょう〜!

NPO法人青二才は“若者の支援を完結させる組織”ではなく、“頼り頼られる関係性を育みながら、地域全体で若者の活動を支えるための環境をデザイン”しています。

若い時はどうしても「なんでできないんだろう」と落ち込んでしまったり他人と比較してしまうこともありますが、それは若いからこそ、未熟だからこそ、可能性があるということの裏返し。一人ひとりに秘められた可能性は絶対にあって、まだ見つけられていないだけだと確信するいい機会になりました。

NPO法人青二才は、そんな若者の可能性を広げる多様なフィールドを地域に展開すべく奔走中です。

地域でつながりをつくりたい方やちょっと元気がない方、自信がなくて背中を押してほしい方や気軽に相談できる大人とつながりたい方、新しいことを始めてみたい方や挑戦したいことがある方は、ぜひNPO法人青二才へ。ひとりでも初めてでも安心して参加できるイベントも沢山ありますよ〜!◎

NPO法人青二才(WEBサイト(公式HP)内よりお問い合わせ可能です)
住所:〒329-0511 栃木県下野市石橋779番地1
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