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自然の中で子どもの感性を育む。信じて見守る保育『山のようちえん』

「自然保育」という言葉をご存知でしょうか?

自然保育とは、森や川などの自然環境を活かし、野外での活動を積極的に取り入れる保育のこと

遊具やおもちゃがない自然の中で活動することで、子どもたちの「想像力」や「感受性」などの感性を育むことを目的としています。

今回は、そんな自然保育を取り入れている鹿沼市の『山のようちえん』さんの活動に一日密着させていただきました!

前半では活動の様子を、後半では代表の山崎 恵さんにインタビューさせていただいた内容をお伝えします。代表の山崎さんが活動にかける想いや印象的なエピソードなど詳しく聞いてきましたので、よろしければぜひ最後までご覧ください🙌

山のようちえんは、鹿沼市粟野の山のふもとにあります。民家と田畑の広がる道を進んだ山奥にある古民家が拠点です。

そして、こちらが山のようちえんのみなさんです!

この日は、2才から5才のお子さん5名、大人2名での活動。

山のようちえんには…なんと!保育士の先生がいません

山崎さんとその日の当番のお母さん2名で、子どもたちの活動をサポートします。

まずは、山のようちえんに通う子どもたちのとある1日をご紹介していきます👀

山のようちえんの1日

子どもたちは午前10時頃から集まり始め、11時には活動開始。みんなで作ったお味噌汁と各自で準備したおにぎりを持って、お昼ごはんを食べる場所を探しに行きます。

ご飯を食べる場所は子どもたちが周辺を歩いて決めます。今日は、ご近所さんのお家の『ブロック塀』に決定!

普段からよくお世話になっている方だそうで、家主の方が「こんにちは~」と子どもたちと挨拶を交わす場面も。こういった関係性も、近年では中々貴重です。

お気に入りの場所に座ったら、いよいよお楽しみのお昼ごはん!

この子はまだ2歳。大きなスプーンを使って、自分でお味噌汁をモリモリ食べます。こぼれた汁で服が汚れても気にしません。夢中で食べます。2歳ってこんなにしっかりしてたかな…。

なんとお味噌汁に使われている味噌も、園のみんなでつくったのだとか!

ゆえに「大きなカボチャだ!」「キノコがたくさん!」と、子どもたちはゴロゴロ入った野菜も残すことなく喜んで食べていました。お子さんがお味噌汁をこんなに美味しそうに食べているのは初めて見た気がします。

ちなみに赤い服の子は、「味噌がどうやってできるか」を私に説明してくれています。子どもから『麹』というワードが出てくるってすごいなあ…

(私もお味噌汁をご馳走になりました。とっても美味しかったです~!)

昼食を食べ終えると、山へ案内してくれるというのでついていくことに。

「なるほど、山登りか~」と気楽に構えていると、子どもたちが道のない山の斜面の前で立ち止まり、「どこからが登りやすいかなあ?」と相談し始めます。

そして…「本当にここでいいの?!」という道なき険しい斜面を、小さな体でぐんぐん登って行くではありませんか!

山登りなんて単純なものではなく、もはやこれは探検…!

大きなリュックを背負っているのに弱音を吐くこともなく、先頭を進む山崎さんについていく子どもたち。山崎さんもまたアグレッシブ!私があちこち写真を撮っている間に、姿が見えなくなっていました(笑)

先ほどモリモリごはんを食べていた2歳の子も、時間はかかったけど自力でみんなのもとへ到着!なんともたくましい背中です。

不必要に手を貸さず、優しく見守る山崎さんの表情が微笑ましい。

平らなところに着いたら、それぞれが自由に遊び始めます。女の子たちは、落ち葉を頭に乗せて『葉っぱの妖精ごっこ』。

不思議な形の枝を見つけて「この木、武器みたい!」とポーズを決める男の子。

山中には特別なものはありませんが、子どもたちの手にかかればなんでも遊び道具に早変わり。花も咲いていないのに、落ち葉と木の枝だけでこんなに遊べるものなんだなあ。

おもちゃやゲームは遊び方が決まっていますが、自然が遊び場の山のようちえんでは、季節の違いや状況次第でさまざまな遊びが生まれます。他の季節や別の場所では、この子たちは一体どんな風に遊ぶんだろう?取材で来たことを忘れそうになるほど、子どもたちの動向に夢中になってしまいました。

みんなで山を下りた後は古民家に戻り、代表の山崎さんにお話を伺いました。

代表 山崎 恵(やまざき めぐみ)さんインタビュー

山のようちえんを始めようと思ったきっかけは何ですか?

この古民家を借りて生活の準備を進めていた時に、子どもを持つ友人が「普通の幼稚園に違和感を感じる」と言っていたんです。それでその友人から自然保育の話を聞いて、「それ、うちでやっちゃう?できるんじゃない?」ってなって。

山のようちえんを開くために古民家を借りていたわけではなかったんですね!

そう!もともと私は自然保育について知らなかったし…本当に色んなタイミングが重なって進んだ感じです。でも、「ここを保育の場として活かせたらきっと楽しいことになるぞ!」って思えたんです。

子どもを『信頼して見守る』

一日ご一緒させていただいて、良い意味ですごく放任主義だなと思いました(笑)子どもたちの一挙一動に対して大人が注意する場面がほぼなかったですよね。

そうなんです。子どもって結局、自分で経験してみないと何が危ないとかこれをやったらどうなるとか分からないじゃないですか。すぐに大人が注意して止めさせてしまうと、何も学べない。だから相当危ないこと以外は見守るし、好きなようにやってもらっています

そういえばお昼ごはんを食べたブロック塀も、子どもからしたら結構な高さでしたよね!

たぶん、普通の大人は止めさせちゃう(笑)でも見ていて分かったと思うけど、子どもたちは器用に塀から降りるし、ごはんを食べる時は行儀よく座っています。大人が思っている以上に、子どもはちゃんと考えるんです

たしかに!塀の上から靴を脱ぎ捨てた子がいましたけど、マキちゃんが「あとで拾うんだよ~」って言って何もしないでいたら、ちゃんと自分で回収してましたね。

すぐに手を貸してしまいがちだけど、待ってあげる余裕が大切なんです

一人ひとりのペースを大切に

どの子も人懐っこくて元気な印象でした。みんなもともと活発なタイプだったんですか?

今日、山で先頭を歩いてた子がいたでしょ?あの子は、うちに来た当初は山に行く度に「山ヤダ~!キライ~!」って大泣きしてた(笑)

え!?私、あの子に山で「早くおいで~!」って言われたのに。信じられない…!

「年が明けたら平気になってた」とか、大人には分からないちょっとしたことがきっかけで、できなかったことができるようになるみたいです。いつの間にか何も言わず山に行くようになってましたね。とくに山登りは「ここまで登れた」という達成感を感じやすいので、体力とか精神面とか、そういった部分の成長がきっかけになるのかもしれません

達成感といえば、2歳の子も急斜面を登り切りましたね!めちゃくちゃびっくりしました。

あれは宮城さんが近くで応援してくれてたからだと思う!今日行った山にあの子が行くのは2回目だけど、1回目は途中でギブアップでした。だから登れたのは私もびっくり!

でも逆に、それまでなんともなかった子が突然「今日は川に行きたくない」となることもあります。子どもは子どもで「うまく言えないけど、今はイヤ」というのがあるんですね。そういう時は無理をさせず、本人がまた行きたくなったら行くというように、その子のペースに合わせます。そうすると、何かのきっかけでまた平気になるんです。

無理強いするのではなく、子どもを信じて「待つ」「見守る」姿勢が大切なんですね

大人も子どもも大切なのは『コミュニケーション』がとれること

自然保育の知名度がまだそこまで高くない中、どんな親御さんが山のようちえんに子どもを預けているのでしょうか?

うちでは親御さんたちが当番制で子どもたちを見るので、親同士のコミュニケーションが密に行われているのが特徴です。お母さんたちとのグループLINEもあるんですよ。

グループLINE!そこではどういったやり取りを?

その日当番だったお母さんが「〇〇ちゃん、今日はこんなことできたよ!」「こんなことがあったんだけど、どう思う?」とか、その日の出来事や気になったことを気軽に報告・相談し合っています。

小さなお子さんを持つ親御さんにとって、その関係性はきっとありがたいですね!

子どもたちにもそうやってコミュニケーションを大切にしてほしいと思っていて…あ!ほら、あんな感じ。

山崎さんが指す方を見ると、本日のサポート担当マキちゃんに一人のお子さんが何かを説明していました。

「〇〇ちゃんがね、こういうこと言ったの。でもそれってちょっと違うと思うんだけど…でも…」

出来事と気になったこと、自分の考えを懸命に伝え、意見を求めます。

「そっか。じゃあ、もう一回きちんと〇〇ちゃんに話しておいで」と、マキちゃん。大人がすぐ仲介に入るのではなく、子ども同士でしっかり話し合うよう促していました

単に「こうでこうで…、〇〇ちゃんが悪い!」じゃなくて「こんなことがあって私はこう思うけど、ねえどう思う?」って、子どもたちも大人に相談してくれるんです。

そういえばお昼ごはんの時、はしゃいでいた子に隣の子が「大声を出すと近所の人が『山のようちえんの子はうるさいから嫌だ』って思っちゃうよ!静かにしよう」って注意していました。まだ小さいのにそんな考えができて、注意もできるってすごい!って思ったんです。

そんなことがあったんだ!お母さんたちの密なコミュニケーションがあるから、子どもたちも自然とそうなっているのかもしれませんね。

みんなで一緒につくり上げる

先ほどお話にもありましたが、お母さんたちが当番でサポートするという体制は珍しいですね。

ありがたいことに、山のようちえんではお母さんたちがすごく協力的なので、今はその体制がいいよねって。車で1時間かけて通っている子もいるので大変な部分もあると思いますが、実はこの当番制っていいことも多くて。

あるお母さんが「うちの子は何をするにも遅くて『こんなんじゃダメだ』って思ってたんです。でも、ここで子どもたちの様子を見てたら『うちの子はマイペースなんだ。あれはあの子の個性なんだ』って気づいたんです。ああ、気づけてよかった!」って。

自分の子どもだけ見ていると視野が狭くなってしまいますよね。親御さん自身の発見につながるって、なんだか素敵ですね。

お母さんは忙しいから子どものペースに全て合わせることは難しい。でも、山のようちえんではその子のペースを大切にするから、活動を通して客観的に子どもの様子を見ると意外な発見があるんです

ただ、絶対にこの体制でなければいけないとは思っていません。働きに出るお母さんが多くなればきっと難しいし、そのときはそのときで一番いい方法を考えるつもりです。

『保育士の先生がいない』というのも驚きましたが、それはお母さんたちの協力体制ができているからということなんですね。

資格の有無は大切ですが、それが全てではないと思うんです。うちは普通の幼稚園とはだいぶ違いますし(笑)「もっとこうしたい」「こういう方法がある」とか、みんなでつくりあげていくことが大切だと思っています。

山のようちえん、次のステージへ

お母さんたちの協力といえば、実は今、山のようちえんの引越しを計画しているんです。そこでもお母さんたちが積極的に動いてくれています。

クラウドファンディングのページで拝見しました!大家さんの都合で都賀町にお引越しされるんですよね。

そうです!でも建物の老朽化が激しくて…クラウドファンディングで資金を募ると言ったら、お母さんたちが「私たちも資金調達するよ」って。子どもたちが収穫した梅やカリンで、シロップやアメをつくって販売してくれました。

素晴らしいチームワーク!みなさん、自分ごととして考えてくれているんですね。

本当にありがたいです。引っ越し先では、山のようちえんを卒業した子たちからなる『小学部』の活動も始めています。お母さんたちが「卒園しても子どもたちを山のようちえんに関わらせたい!」って言ってくれたのがきっかけです。

『ようちえん』としてだけではなく、もっと子どもたちと広く関わっていくということですね。お母さんたちにそう思わせるだけの魅力が山のようちえんにはあるんですね。子どもたちも嬉しいだろうなあ。本当に素敵だ…

気軽に遊びに来てほしい

山のようちえんは今も園児を募集中ですか?興味を持った方もいるかもしれないので。

随時募集中です!1日体験も可能なので、ぜひ気軽に遊びに来ていただきたいです。

最後に、お子さんを持つお母さんにメッセージをお願いします!

なんでもやってみないとわからないことだらけです。少しでも山のようちえんに興味を持っていただけたら、ぜひ体験にいらしてください。ときどき参加したい方も入園をお考えの方も大歓迎です!

▶活動の様子は、山のようちえんのSNSをチェック! facebook Instagram
BASEのページも素敵です✨ 
▶山のようちえん(会員制)
・年間会員登録料 5,000円
・一日預け保育料 2,000円
・一日親子参加料 1,000円
※年少さん以上のお子さんは親子参加でも2,000円
※活動日:火曜日~金曜日10:00~15:00

おまけ

取材を終えて帰ろうとすると、子どもたちが「お見送りする~!」と言って敷地のギリギリまで走って見送ってくれました。かわいい、嬉しい~~!!

みんな、本当にありがとう~!またね!