つらい経験が大きな転機に!作品づくりを通して日々のモヤモヤが解消!?新聞ちぎり絵サークル『夢ゆめ』
目次
「車いす生活で家にこもりがちだったとき、たまたま目に入った新聞紙で『何かできないか』と思ったのが最初でした」。
そう話すのは、今回取材をさせていただいた、新聞ちぎり絵サークル『夢ゆめ』の代表、舘野智子(たてのともこ)さん。彼女の新聞ちぎり絵との出会いは、自身が体調を崩したことがきっかけでした。
2013年のある日、舘野さんの体は突然、自由に動かすことができなくなってしまいます。
明確な原因が分からないまま、精神的なストレスのせいだろうと医師から診断されました。外出が億劫になり、家にこもる生活を送っていたとき、新聞紙を見て『新聞ちぎり絵』を思いついたのだそうです。
それから舘野さんは、どのようにして症状を克服し、これまで活動を続けてきたのでしょうか。
現在にいたるまでの経緯や今後について、詳しくお話を伺いました。前半はちぎり絵体験の様子を、後半はインタビューの内容をまとめています。ぜひご覧ください!🙌
エネルギッシュに活動する、舘野さんの魅力に引き込まれること間違いなしです✨
新聞ちぎり絵体験レポート
今回、ライターの私も実際に、新聞ちぎり絵づくりを体験させていただきました!
制作に必要な道具はこちら。
新聞紙、台紙、鉛筆、液体のり、のりを入れるカップ、ピンセット、竹串
たったこれだけ!
特殊な道具は必要なく、身近なもので作ることができます。ハサミやカッターなど、刃物を一切使わないのが大きな特徴。
「まだハサミをうまく扱えない、小さなお子さんでもできるのが魅力なんですよ」と舘野さん。たしかにこれなら、お子さんの制作の様子を親御さんも安心して見守ることが出来ます。
まずは、台紙に鉛筆で下絵を描いていきます。
植物、動物、食べ物など、題材は自由。お子さんはキャラクターを描くことも多いのだとか。
舘野さんのSNSには過去に体験された方の作品がたくさん掲載されているので、そちらも参考になります。
過去の作品の中にフライドポテトがあったので、それを参考に今回はハンバーガーに決定!
下絵を描いたら、使いたい色が印刷されている新聞の紙面を探します。絵の具や色鉛筆のように決まった色が用意されているわけではないので、選別が案外難しい…
「これかな?いや、こっちかも?」と、完成後をイメージしながら選びます。
こんな感じで、必要な部分をちぎっていきます。
肌色や茶色が必要だったので、必然的に俳優さんの顔の部分をメインで使うことに。これだけ見るとすごい光景…。
お子さんはこういうの大喜びなんだろうなぁ。そんなことを考えながら、紙面をビリビリ破ります。
下絵のサイズに合わせてさらに細かくちぎったら、いよいよ貼りつけです!
竹串の先にのりを付け、ちぎった新聞紙をひとつひとつ貼っていきます。
いざ貼ってみると、「思っていた色と違うな…」と思うことも。
私が首をかしげて悩んでいると、「上から重ねて貼れるので納得いくまで調整できますよ!」と舘野さん。なるほど、たしかに…!
個人的に「アナログ=やり直しができない」というイメージがありましたが、これは嬉しい!ちなみにこの画像も、何度か重ね貼りした後のものです。むしろ、はじめに貼ったところと重ねた部分で陰影ができて、味が出ました。
貼っては調整…を繰り返していきます。
なんとか完成しました!✨
調子に乗って重ね貼りをしすぎたせいで、レタス特盛のヘルシーバーガーができあがりました(笑)。 ちぎり絵特有のやわらかい雰囲気が出ています。
完成品を見て「すごーい!おいしそう!」と、何度も褒めてくださる舘野さん。
「おいしそう」の言葉が嬉しくて、私はニヤニヤ(笑)
そして、時計を見てびっくり。1時間以上、制作に没頭していました。時間を気にしなくなるほど集中したのは久しぶりです。細かい作業をしていたのに、疲れよりもやりきった充実感の方が強く、不思議とスッキリした気分。
舘野さんは、「同じ人が同じものを作っても、そのときの新聞の色や貼り方の違いで雰囲気が大きく変わります。違う人の作品みたいに見えることもあって、面白いですよ」と話していました。
手順がシンプルで覚えやすく、自宅でやろうと思ったときにすぐ取りかかれるのも魅力だと思いました。
「新聞ちぎり絵を体験してみたい!」と思った方は、ページ最下部のメールよりご連絡ください👇
代表:舘野智子(たての ともこ)さんインタビュー
新聞ちぎり絵(以下:ちぎり絵)を始めたのは、冒頭でお話いただいた車いすでの生活がきっかけだったのですね。
当時の私は、通常なら徒歩5分のバス停まで歩くのに1時間以上かかるような状態でした。働くこともできず、習い事をしたくても歩くことすらままならない。そんなとき、「新聞紙ならたくさんある。これで何かできないかな」と思いました。
誰かがやっているのを見たわけでもなく、舘野さんがご自身で思いついたと。大変な状況の中でも、何かをしようと思えたのは何故でしょうか?
私の場合は、「手のリハビリになりそう」という考えもありました。症状の原因がはっきりしないために、治療が思うように進まず、自宅療養するしかなかったんです。家族や友人に助けてもらうことが多く、そのたびに申し訳なくて…。なおさら、自分でできることを何かしたいと思いました。
そこからどのように行動したのでしょうか?
まずは作品をFacebookに投稿しました。すると、投稿を見た方から「本当に新聞でできるんですか!?」「作り方を教えてほしい」とコメントを頂いたんです。和紙ではなく古新聞でのちぎり絵、というのが当時は珍しかったのでしょうね。
SNSの拡散力は侮れませんね。作品を作るだけでなく、サークルを立ち上げようと思ったのには何か理由があるのでしょうか?
「一緒に作品を作る仲間がほしい」と思いました。作品を投稿し始めてからわりとすぐに、立ち上げに向けて動きました。知的障害のあるお子さんを持つ親御さんから「うちの子でもできますか?」とお問い合わせいただいたことが、サークル活動の始まりです。
行動したからこそ、想いが形になったのですね。それにしても思い立ってからの行動が早い…!
思っていたより反響があったのが嬉しくて、次へ次へと行動できました。調子に乗っただけかもしれませんが(笑)。2年半もの車いす生活は厳しいものでしたが、大きな転機になりました。あの経験がなければ、ちぎり絵を始めていなかったかもしれません。今となっては良い思い出です。
ちぎり絵を通して、自分も周りも変わることができた
SNSに「自身がちぎり絵を通して変わることができた」とありましたが、具体的にどんな変化がありましたか?
私は、約2年半ものあいだ車いす生活でした。ちぎり絵を始めた当初もまだ、体の自由はほとんどきかない状態。それが、作品の制作を続けるうちにいつの間にか回復して、歩けるようになったんです!何か特別な治療をしたわけではないので、私も家族も驚きました。
また、普及活動を通じて様々な人と出会い、つながりができたことで、社会復帰にも繋がりました。それまでは周囲に迷惑をかけたくなくて、外出を控えていましたから。
やりがいや目標ができたことで前向きになり、体の内側から回復していったということなのでしょうか。そんな不思議なことがあるのですね…!体験に参加された方の中にも、同様に自身の変化を感じた方がいらっしゃるのでしょうか?
不登校だったお子さんが、再び学校に通えるようになったことがあります。ある日突然、ちぎり絵の制作中に「自分はこのままでいいのだろうか」と思ったのだそうです。他にも、うつ病に悩まされていた方の症状が回復して、社会復帰されたこともあります。
なんとなく分かる気がします。手先を動かして集中するので、私も制作中は余計なことを一切考えませんでした。目の前のものだけに集中するというか…マインドフルネスのような要素があるのかもしれませんね。
いまお話した2人は、かつてサークルのメンバーでした。2人のように、自身が次のステージに進んだことをきっかけに、サークルを卒業されることもあります。
メンバーの卒業は寂しいけれど、誰かが一歩を踏み出すきっかけになれるのは嬉しいですね。まさか、ちぎり絵にそんな効果があるとは思いませんでした。生きづらさを感じる人も多い今の時代にこそ、より多くの人に知ってほしいですね。
作品に正解はない。完成させなくてもいい
ちぎり絵体験、私は楽しく制作させていただきましたが、絵を描くことや細かい作業が苦手な人もいると思います。「こんなのムリ!できない!」と、途中で投げ出してしまう方はいませんでしたか?
そういう方もいらっしゃいました。でも「ここの色合いが素敵ですね!」と作品の良いところを教えてあげると、最後まで作ってくれるケースが多いです。
体験に参加してくださる方は3歳から90代まで、年齢層の幅が広いんです。例えば、夏休みの宿題のために参加するお子さん、認知症の予防や手のリハビリで始める人など、参加理由もさまざま。なので例えば、「細かく新聞をちぎって!」「ここにこれを使って!」など、私が指示することはありません。
なるほど。仮に私が歳をとって認知症予防のために体験したとして、「もっと細かく」なんて言われたら、作るのが嫌になってしまいそうです。
過去に学童保育で実施したときは、新聞をビリビリちぎって終わり、なんてこともありました(笑)。お子さんは、紙を好きなようにちぎる行為そのものが楽しいみたいです。
その感覚、分かります!『ビリビリ』『ピリピリ』という音が心地よく感じました。私が子どもだったら、「紙をどれだけ破っても怒られない!」とテンションが上がりそうです!
作品にならなくても、それで良いんだなって。正解はないし、完成させることだけが目的ではありません。各々が楽しいと思える範囲で制作してもらえるのが一番だと思います。
完璧を求めない、ということですね。そう言ってもらえると、制作へのハードルがぐっと下がりますね。素敵な考え方だなあ。
目指すは、『ちぎり絵の似顔絵師』!?
これまではちぎり絵の普及活動を中心にされてきたと思いますが、今後新しく始めたいことはありますか?
実は、『ちぎり絵の似顔絵師』の座を狙っています(笑)。
ちぎり絵で似顔絵!?
今までは新聞ちぎり絵の講師としての活動がメインでした。でも、仲間の作品を見たりコンクールで賞をもらったという話を聞くうちに、「私も自分の作品づくりに力を入れたい」と思うようになりました。
これはサークルの仲間が作ってくれた作品です。この方は、新聞紙をとても細かくちぎるのが特徴なんですよ。
手でちぎったとは思えないほど小さい…!細かすぎてカメラのピントがうまく合わない…。良い意味で、もはやちぎり絵に見えません。
このように表現方法にこだわる方は多いですが、ちぎり絵の似顔絵師を名乗っている人はまだいないんです。「どうせなら誰もやっていないことに挑戦してみよう」と思いました。今は似顔絵職人さんに師事して、似顔絵の描き方を基礎から教えていただいているんですよ。
舘野さん、改めて発想力と行動力がすごい!似顔絵を描くだけでも難しいのに、それをちぎり絵で表現するなんて…。
というわけで、似顔絵のモデルさんを募集しています。似顔絵は、モデルがいないと制作できないのが難点ですね(笑)。
舘野さんの、エネルギーに満ち溢れている感じが伝わってきます!『ちぎり絵似顔絵作家』になった舘野さんの作品にお目にかかれる日が楽しみです!
講師の依頼があればどこへでも…!
新聞ちぎり絵の体験を依頼したい場合、条件はありますか?
まずは、体験を行うための場所を確保していただくこと。あとは、最寄り駅まで送迎してくだされば個人の依頼でも承ります。お金の面でご用意いただくのは交通費くらいです。
それは嬉しい!対応エリアは決まっていますか?
今は県内での依頼が多いですが、基本的に駅までの送迎があればどこにでも行きます(笑)。まずはメールにてご連絡ください!一緒にちぎり絵の制作を行うサークルのメンバーも募集中なので、実際に体験してみて興味があれば、そちらもぜひお問い合わせ下さい。
貴重な体験とお話、ありがとうございました!
新聞ちぎり絵サークル『夢ゆめ』
メール:yst378@gmail.com