〈求人〉「ひとりじゃない」と思える社会を。必要なくなるその日まで見守り続ける“親と子どもの居場所”の役割
目次
『貧困』と聞くと、みなさんはどのような状態を想像しますか?
「ご飯が食べられない」「住居がない」「適切な医療が受けられない」など、生きていくこともままならない金銭的余裕のない状態が先ず頭に浮かぶ方も多いのではないでしょうか。
こうした衣食住にかかわる貧困のことを『絶対的貧困』と呼びます。一方で、衣食住にかかわるわけではないものの、国や地域の水準と比較して大多数よりも貧しいことを『相対的貧困』と呼びます。
日本に裕福なイメージを抱いている方も多いと思いますが、実に子どもの7人に1人が学習・経験の機会に乏しく経済的に困窮している『相対的貧困』の状態にあります。
「両親の離別でひとり親家庭になった」「失業した」「病気や高齢化により働けなくなった」など、貧困に陥る要因はさまざまです。ただ、子どもはその環境を自ら変えることが難しく、「貧困である」という状態を当たり前のように受け入れ、我慢を覚えて生きていくほかなくなってしまうのです。
今回は、そんな声を上げづらく実態が見えにくい『相対的貧困』と、近年注目されている経済的困窮に限らず人とのつながりが希薄である『関係性の貧困』をなくすために活動を行っている『キッズハウス はなび』に伺いました。
キッズハウス はなびの運営を行うのは、就労支援や学習支援など、子どもや若者を対象に幅広く事業を展開する一般社団法人栃木県若年者支援機構。その中のひとつである『子どもの貧困対策事業部』では、こども食堂・寺子屋・自然体験・親と子どもの居場所づくりを行う『キッズハウス いろどり』、親と子どもの居場所づくりを行う『キッズハウス はなび』といった2つの拠点を運営しています(令和5年現在)。
現在、キッズハウス いろどりとキッズハウス はなびの運営を担うスタッフを募集中とのこと。求人情報についてのほか、活動についてや子どもの貧困についてなど、気になる事柄についてお話を伺いました。
今回お話を伺ったのは…
キッズハウス いろどり・キッズハウス はなびとは
キッズハウス いろどり
2018年8月に宇都宮市戸祭にてオープンした『キッズハウス いろどり』とは、食べる・学ぶ・遊ぶ・安心をワンストップで支える子ども支援拠点です。
さまざまな事情で家庭学習が難しい子どもたちのための寺子屋・だれでも来ることができるこども食堂・親と子どもの居場所運営など、子どもたちの多様なニーズに合わせたプログラムを行っています。
※プログラムごとに対象年齢が異なります(こども食堂は予約・登録不要でだれでも利用可能)
〇活動内容
・昭和こども食堂
・いろどり寺子屋
・親と子どもの居場所(相談・見学も)
・あったか夕飯お届け便
・わくわくサマーキャンプ
〇開放日
毎週月曜日・水曜日・金曜日(祝日・年末年始を除く)
※『親と子どもの居場所』は毎週水曜日・金曜日 15:00~20:00(祝日・年末年始を除く)、長期休暇中は木曜日も開放
〇住所
〒320-0056 栃木県宇都宮市戸祭4-7-11
詳しくはこちら
キッズハウス はなび
2022年9月に宇都宮市南区域にてオープンした『キッズハウス はなび』とは、親と子どもの居場所事業(宇都宮市委託事業)を行う拠点です。
季節行事やイベントを通して体験機会を提供するほか、片付けやお手伝いを通して子どもたちの基本的な生活習慣を磨き、一人ひとりに合わせた形で個別に学習支援を行っています。開放日は毎回夕飯を無償で提供しているため、多忙な親御さんにとってもくつろげる空間になっています。
※市内在住の18歳未満の子どもとその親は無料でだれでも利用可能
〇活動内容
・親と子どもの居場所(相談・見学も)
・体験プログラム
〇開放日
毎週火曜日・木曜日 15:00~20:00(祝日・年末年始を除く)、長期休暇中は月曜日も開放
〇住所
〒321-0138 宇都宮市兵庫塚3丁目22-25
※建物西側に門があります。ナビで検索する際は「兵庫塚2号児童公園」とご入力ください
詳しくはこちら
“実は困っている子ども”とつながるために、あえて門戸を広げる
住居がひしめき合う小さな路地の一角に、本日の取材先、親と子どもの居場所『キッズハウス はなび』があります。
門をくぐり広々とした庭を抜けると、大きな窓が特徴的な昔ながらの住居が姿を現します。「こんにちは~」と玄関の戸を開けると、元気いっぱいの子どもたちと朗らかなスタッフのみなさんが出迎えてくれました!居場所というだけあり、家中は安心してくつろげる温かな雰囲気。
久しぶりに実家に帰った時のような、なんだか懐かしい匂いも。玄関を開けたすぐ左隣にみんなが集まる居間があり、大人も子どもも交じってカードゲームを楽しんでいました。
遊びに熱中する子どもたちの楽しそうな笑い声をBGMに、早速お話を聞いてみることに。
今回お話を伺ったのは、キッズハウス いろどり・キッズハウス はなび、双方の立ち上げからかかわっている一般社団法人栃木県若年者支援機構 子どもの貧困対策事業部長の荻野 友香里(おぎの ゆかり)さんと、キッズハウス はなびの立ち上げ当初からかかわっている一般社団法人栃木県若年者支援機構 運営スタッフの大山 可織(おおやま かおり)さん。
現在、2つの拠点の運営を担うスタッフは荻野さんと大山さんの2名のみで、他15名ほどのボランティアスタッフの力を借りながら活動を行っています。
運営スタッフの大山さんは、子どもの学習支援や遊びなどの対応を行うほか、月に2回ほど行う体験プログラムの企画運営、日用品の買い出し、夕飯づくり、掃除や洗濯といった家事全般などの多岐にわたる業務を行っています。
生活習慣の体得として、料理を運んだり洗濯を畳んだりと、細々とした作業は子どもたちにお手伝いしてもらうこともあるのだとか。
荻野さんは上記の仕事に加え、食事提供・体験機会創出のための寄付集めや事業報告といった業務を行っています。
「元々は、『十分にご飯が食べられない』『学習・経験の機会がない』など、経済的に困窮しているがゆえに困難を抱えている子どもたちのために立ち上がった場所です。ただ、対象を絞ってしまうと『お金に困っているからここに来ている』というレッテルを貼られてしまうことになりかねないので、子どもであればだれでも来られる場所にしています」
そう語る荻野さんは、“だれでも来ていい居場所”の重要性に触れつつ、“実は困っている子ども”をキャッチし向き合うポイントについて語ります。
門戸を広げることで、“実は困っている子ども”と出会うことができるんです。とはいえ“普通じゃない”ことに自ら気づける子どもは少ないので、「もしかしたら経験の機会が乏しいのかも」「家庭状況が良くないのかも」と常にアンテナを張って気づいてあげれるようにしています。
どのように“実は困っている子ども”をキャッチするのでしょうか?
「時計やテレビが自宅にない」と言っているのを聞いて家庭内の状況を思い浮かべたり、スイカ割りやお菓子づくりの体験プログラムで「これなに?」というリアクションをしていると体験の機会が少ないのかなと思ったり。服装や持ち物、匂いでもわかることが多いですね。
でもやっぱり、一瞬でわかるのはコミュニケーションです。
コミュニケーション?
人と上手にかかわることや適切なコミュニケーションが難しい子の中には、学校で孤立していたり兄弟がいないがゆえに経験が不足している子も多くて。集団の中で孤立してしまうことが生きづらさにつながってしまうケースも少なくないんです。なので、子どもたちのコミュニケーション力はしっかり見るし、私たちもしっかりかかわりを持つようにしています。
「髪の毛切ったね」「靴変えたね」とか、そういった日々の些細な変化に気づいてあげるようにしています。子どもたちと雑談できるようにYoutubeで今の流行を把握したりも(笑)
学校に行っている子も行っていない子もさまざまなので、「天気がいいね」「庭にお花が咲いたよ」という世間話からコミュニケーションを取っています。世間話は、だれにでも通じる共通したコミュニケーションになるので。
日々のコミュニケーションから「自分のことを見てくれている」という信頼を積み重ねていくことが大切なんですね。
そうですね。私たちも子どもと同じ目線に立つというか…遊ぶときは全力で遊ぶ!(笑)逆に話を聞いてほしい子がいたら、ゆっくり時間を取って落ち着いて話せる場所を用意したり。
常に子どもたちの表情・目つき・言葉遣いを見て、「いつもと変わったところはないかな」と意識するように心がけています。
取材中、学校帰りの子どもたちと親御さんが続々とやってきました。「こんにちは~!」「はい、こんにちは~!」とアットホームなやり取りが交わされます。
表情豊かで楽しそうな子どもたちの姿を見て、自宅と学校以外の自分らしく過ごせる居場所(サード・プレイス3)があることの素晴らしさを実感します。
子どもだけでなく、親にとっても心の余裕が生まれる“居場所”に
キッズハウス いろどり・キッズハウス はなびには、両親が共働きで自宅でひとりの時間を過ごすことが多い子どもやひとり親家庭の子どもなど、だれかに話を聞いてもらう・だれかと遊ぶ機会が少ない子どもも訪れるそう。
一方で子どもだけでなく、仕事が忙しい親御さんの家事の負担軽減や親御さんが気軽に悩みを打ち明けられる・話し相手がいるという場づくりにも重きを置いています。
この場所に来るきっかけはさまざまですが、親御さんが子どものためを思って自ら足を運ぶケースばかりではないので、より気軽に足を運んでもらうためにも夕飯を無償で提供しています。「ここに来たら安心するよ」と声をかけるよりも「ご飯食べに来ませんか?」って聞くと来てくれるご家庭も多いので。
ご飯が食べられるとなると必要性を感じてもらいやすいし、足を運ぶひとつのきっかけにもなりそう。子どもの居場所は沢山見かけますが、“親と子どもの居場所”って結構珍しいなと思いました。仕事が忙しい親御さんや話し相手がいない親御さんにとっては貴重な場所になりそうですね。
そうですね。ご飯をここで食べるだけでも家事の負担軽減になるし、親が日々の悩みを打ち明けられる場所って中々ないじゃないですか。ただ話し相手がいるだけでも心の余裕は変わってくるので、親御さんの居場所は絶対に必要だなと思います。
近年ひとり親家庭も増えているので、そういった方の居場所があることはとても心強いですね。…ところで、ご飯のいい匂いが…!おいしそう~!
ありがたいことに、家庭菜園でつくった野菜をくださったり食材を寄付してくださる方も多いんです。
インスタント食品や孤食も増えているところ、みんなで健康的な手づくりご飯が食べられるってすごくいいですね。
実は料理にもこだわってて、即席の調味料は極力使わずしっかり手づくりしてるんですよ!(笑)
〇〇の素は使わないんですか!?すごいこだわりっぷり…!おいしそう…!
「それ、やったことある!」と言えるように
キッズハウス いろどり・キッズハウス はなびでは、開放時間の間、子どもたち一人ひとりに自由に過ごし方を決めてもらっているそう。学校の宿題をしたり、トランプやゲームをしたり、外で追いかけっこをしたり、静かに本を読んだり、工作をしたり。個々人の「やりたい」に寄り添い、尊重し合える空間になっています。
「やりたいことがあっても兄弟に合わせて我慢しなければいけない」「経済的に困窮していて十分に学び遊ぶことが難しい」という子どもも沢山います。なので、ここでは子どもたちの「やりたい」を叶えるために、ボランティアさん含め常に大人が数名いるようにしています。
ボランティアさんは毎回のように?
毎回3名ほど常駐できるようにシフトを組んでいます。1日に10~15名ほどの子どもたちが来る上にスタッフは2名しかいないので、本当にボランティアさんがいて成り立っている場所ですね。
ボランティアさんに支えられている場所なんですね。基本的には子どもがやりたいことの手助けを?
子どもがやりたいと言ったことを一緒にすることもあれば、こちらで企画した遊びを提案することもあります。例えば、森でツリークライミングをしたり、野外炊飯やキャンプをしたり。竹を切って流しそうめんをしたり、桜もちをつくったり、クリスマス会を開いたりと、季節行事も沢山行っています。
子どもたちが「それ、やったことある!」と言えるように、数多くの体験機会を用意してるんです。
子どものころの体験って成長に大きく影響しますよね。家庭状況にとらわれず、子どものころから色々な体験ができるのは嬉しいですね。こういった支援を職業として行いたい方は多いような気がするなあ…
何でも屋なので業務量が多く、大変だと思うことも沢山ありますよ。子どもと遊ぶだけじゃなくて、日々の様子を記録したり、体験プログラムを企画したり、広報活動をしたり、事業報告書を作成したり。そういった事務作業も結構多いです。
でもね…やりがいしかないかな!(笑)子どもたちの反応や成長した姿がダイレクトに見れるので、毎日が「やっててよかった」と思うことの連続ですね。
“えこひいき”できるという強みを活かして
本当に子どもたちのことを考えて活動されているんですね。荻野さんは、元々子どもが好きだったんですか?
こんなこと言っていいのかわかりませんが…実は、元々子どもは苦手だったんです(笑)どう接したらいいかわからない存在だったんですけど、海外でボランティア活動をしてたとき、子どもの擦れてない目の輝きや可能性を目の当たりにして、すごく感動したんですよね。もちろん可愛いとも思いますが、「子どもってすごい」っていう気持ちが大きくて。
可能性を伸ばしてあげることで大きな力を発揮するし、信じて認めてあげることで自分の行きたい方向にどんどん進んでいくので、その成長を見守り続けたいという思いで活動しています。遊んでても「その発想はなかった!」っていう連続で面白いですよ。
すごくわかる!子どもって本当に面白くて。さっき女の子に「お祈りしてあげるから目を瞑って頭を下げて」って紙の人形をいきなり渡されて。体験プログラムでつくったでんでん太鼓を頭上で鳴らしながら、「これであなたは幸せになれます」って言ってきたの(笑)
子どものやることは大人の想像の斜め上を行くので、本当に笑わせてくれるんですよね。予想と全く違う反応が返ってくることもあるのでびっくりしますけど、楽しいですよ。毎日ジェットコースターに乗ってるみたいで(笑)
日々刺激的だ(笑)子どもの変化や成長に寄り添うって、大変そうだけどすごくいい仕事だなあ…。どうしてこういった居場所をつくろうと思ったのでしょうか?
元々企業に勤めてたんですけど、お金稼ぎを目的として働くことにやりがいを感じられなかったので、「人の役に立つやりがいのある仕事に就きたい」という思いのもと海外でボランティア活動をすることにしたんです。そこで子どもの貧困について目の当たりにしたんですが、帰国してはじめて日本にも子どもの貧困があることを知ったんです。
この時、自分が恵まれて育った国でご飯を食べられない子どもがいるという事実がとても衝撃的で。「何か力になれないかな」と模索していたときに、「『ご飯をつくってみんなで食べよう』ということであれば何の資格もない私でもできる」と思ったことがはじまりですね。
私は元々、こども食堂の利用者だったんです。それで「いつか子どもとかかわる仕事がしたい」と思っていた矢先に求人情報を見つけたので、応募して無事採用をいただきました。今は働きはじめて半年くらいですが、子どもたちも慣れてすごく楽しいです。
大山さんにいたっては、利用者から支える側にシフトしたんですね!豊かだと言われる日本にも貧困状態の子どもがいることはたしかに衝撃的かも…そこから居場所の運営を?
そうですね。寄付を財源に運営しているからこそ“えこひいき”できることは、強みのひとつになっています。例えば、親が仕事でいなくてここに来ることができない子がいたら送迎をしたり、十分にご飯が食べられない子がいたら持ち帰り用のご飯を渡したり。
子どもによっておかれている状況は異なるので、同じ対応をしないこともあります。不公平かもしれないけど、目の前でSOSが出されてて自分たちにできることがあるなら、手を差し伸べたいなと思います。
立っている場所がみんな同じであれば平等主義が通用しますが、そうじゃない。何か特別いいものをプラスするというよりも、マイナスの状態を補完するイメージですね。えこひいきと聞くとネガティブなイメージでとらえられがちですが、状況によっては必要なものなんですね。
実態が見えにくい“関係性の貧困”をなくすために
これまで約7年もの間、子どもたちとその親と丁寧にかかわり続けてきた荻野さん。居場所に訪れた子どもたちが明るく、いい方向へと進んでいく変化を見守りつつ、歯止めの利かない時代の変化も痛感していると言います。
とくに新型コロナウイルスの流行が、人とのつながりが薄れてしまう『関係性の貧困』を加速させているのです。
経済的に困窮しているご家庭は自宅に籠ってしまうことが多いんですが、新型コロナウイルスが流行して、経済的困窮の有無を問わずみんな自宅に籠るようになりましたよね。そこで、これまでコミュニケーションが少し苦手だったけどなんとかやっていた子どもが、外に出れなくなってしまうケースがとても増えたんです。
そういえば「コロナ禍で不登校の子どもが激増した」という話を聞いたことがあるような…
そうなんです。友達と遊ぶことが容易にできなくなってるし、親御さんもサークルや集会に顔を出す機会が減り、人と人とのつながりの減少に拍車をかけていると痛感しています。つながりが薄れてしまうと孤立につながり、子どものコミュニケーション力の衰えや経験不足、成長の妨げになりかねません。
それに、関係性の貧困ってすごく見えにくいんです。とくにひとり親家庭の貧困率はふたりにひとりと言われてて、父子家庭の場合、人とのつながりが殆どなくて悩みを吐き出すことができずに孤立するケースもありますし、病気のお母さんを心配した子どもが学校に行かず一緒に家に籠るというケースもあります。家庭の状況って、本当に第三者には見えないんです。
とくに子どもの場合だと、困っていることや今の状況を周囲に中々打ち明けられませんよね。それが“当たり前”だと思っていたら、なおさら。
今は洋服も安く購入できるから、身なりがしっかりしてることも多いんです。でもその分ご飯を削ってるかもしれないし、筆記用具が揃ってないかもしれない。そこは本当によく見ないとわからない部分ですね。
「だれかに頼ればいいのに」と言われるかもしれないけど、そんな余裕もなく日々一生懸命に働いているご家庭も多いんです。それこそ、適切な支援情報をキャッチする時間的余裕もない。
聞けば聞くほど、子どもの貧困って親の貧困と同義なんですね…
その通りです。経済的余裕がないことによって子どもたちが学びや経験、進学を諦めて就職するけど、中卒・高卒では十分な給与がもらえる仕事がない。そのなかで結婚して子どもを育てていく。そこで子どもに十分な教育を受けさせてあげることができないということで、貧困はずっと連鎖していくんですね。
なので、子どものころに色々な助けがあることを知ること、色々な経験を重ねることはとても大切だと思っています。
「助けて」と言える第三の居場所の存在はとても大きいですね。それに『将来の選択肢を広げる』という意味でも、考えや価値観が凝り固まっていない子どものころに色々な経験を重ねることが大切になってくるのかあ…
経済的な貧困はもちろん、関係性の貧困についても重く捉えています。子どものころにちゃんと支えてもらえなかったら、「こんな社会なんて」と絶望した考えに偏ってしまうじゃないですか。居場所の立ち上げ当初に出会った中学生が、「自分は見放されてるから。だれも助けてくれない」と言ってて。
でも、話を聞いてくれる大人や子ども支援を行う大人の存在を知って「温かい大人もいるんだ」と気づくことができるし、「自分もそういう存在になりたい」と思えるかもしれない。「生まれてこなければよかった」と思う子どもが増えないことを願っています。
この仕事を始めてみてわかったんですけど、たぶん私、すごく恵まれてたんだなって。当たり前のように安心して帰れる家があって、ご飯が食べられて、親から愛される。それらが一切ないことを考えると、とても怖いなと思います。
どれも身近にあったら、そのこと自体が当たり前だと思ってしまいますね。
そうですよね。でもそれは当たり前なんかじゃなくて、親の愛情を十分に受け取れない子どもも、我慢し続けている子どもも、社会に失望している子どももいる。だから大人のことを警戒する。そういう子も沢山見てきました。
そういう子どもは、居場所で過ごす中で徐々に変わっていくんですか?
変わりますね。大人だったら「この人、合わないな」と思ったら距離を取るじゃないですか?でも子どもは、喧嘩してもふとしたきっかけでまた一緒に遊び始める。それだけ柔軟性が高いので、大人が寄り添う言動をとることで心を開いてくれるケースが多いんです。
その柔軟性は子どもの特権なので、子どものころにいい影響がしっかり入れば希望をもって成長していくと思います。そこはやっぱり子ども支援のやりがいですね。
子どものころに入る影響は、成長や価値観の形成につながる。だから子どもの支援って大切になってくるんだなあ。
子どものころにどんな大人と出会ってきたかによって、社会への期待値も価値観も変わります。親としか接していなければ、それがすべての大人の姿だと思い込んでしまう。
仮にそれが生活保護を受けて仕事をしていない親だったとすると、大人になったときに一生懸命働く意味がわからなくなってしまうんですね。だからこそ、親以外の大人との出会いは必要だと思っています。
「この考えが当たり前」だと思って育ったら、自分が親になったときに子どもにも同じように接してしまいますよね。子どものころに出会う大人の影響ってやっぱり大きいんだ。
「子どもだから」と偏見を持たず、等身大のひとりの人間として向き合う。
「些細な変化に気づいてもらえる」「しっかり話を聞いてくれる」など、自分のことを見ていてくれている大人がいるという安心感が子どもたちの心地よい“居場所”となっていき、ありのままを認めてくれる大人との出会いもまた、子どもたちの成長に欠かせないものとなるのです。
大人になっても帰ってこれる場所。切れ目のない支援で、子どもたちを見守り続ける
経済的に困窮している子どもだけでなく、関係性の貧困に悩まされている子どもとその親も利用できる広く開かれた居場所は、これからどのような姿になっていくのでしょうか。
賑やかな場所が苦手な子どもも元気がない子どもも足を運ぶことができ、人とのつながりを持てる場所にしたいと思っています。いろどりに関しては、ボランティアさんや寄付してくださる地域の方が直に子どもたちとかかわることで、一人ひとりが抱く貧困や子どものイメージが変わっていくんですよね。
私たちだけでなくさまざまな人が子どもの貧困について知ることで、社会も徐々に変わっていく。そうしたひとつの拠点にしたいです。
居場所としての機能にとどまらず、社会の認識を変えていくための拠点でもあるんですね!
はなびに関しては週に2回しか開放してないので、学習支援や体験機会の増大など、もっと活動を広げたいなと思っています。結局は、子どもたちに“生きていく力”を養ってほしいんです。悲しいことも理不尽なことも沢山あるし、社会で生きていくって大変じゃないですか。
大人になると必然的に増える辛いことを乗り越える力をつけてほしいと思うと同時に、そのためには心が満たされることが絶対に必要なので、自宅にはない甘えられる場所・自分らしくいれる場所・いつでも帰ってこれる場所をつくりたいです。
いつでも帰ってこれる場所かあ…それは何歳になっても?
もちろんです!悩みって、いくつになっても尽きないじゃないですか。実際にこども食堂には、中学生から20歳になった今でもずっと来ている子もいます。高校を卒業した後、「今度はボランティアスタッフとしてかかわりたい」と言ってくれた子もいますね。
私たちの活動は切れ目のない支援なので、その子が必要なくなる日までずっと利用できる、見守り続けることができる。それはこの場所の特権ですね。
子どもとその親だけでなく、若い方の心の拠り所にもなってるんですね。悩みや不安もひっくるめて心をさらけ出せる場所って中々ないから素敵だなあ。最後に、おふたりはどんな方と一緒に働きたいですか?
好奇心旺盛な方ですね!男女や上下関係を問わず、気軽に話し合いや相談ができる方。
子どもの考えていることって数分おきに変わるので、「準備したのにそっちで遊ぶの!?」っていうことはよくあります(笑)なので、子どものやりたいことをくみ取って柔軟に対応できる方だとなおいいのかなと思います。
子どもの勉強を見ることも多いんですが、わからない箇所があったら最初から答えを与えるんじゃなくて、一緒に考える。靴やバナナなどの身近なもので例えながら教えたりと、その子のペースに合わせて根気強く見守り教えることも大切ですね。
できないことを恥ずかしがらずに言える、ぽろっと悩みを相談できる関係性をつくるために、子どもとのコミュニケーションや日々の変化に目を向ける洞察力も大切になってきます。子どもって、すっごく面白くて可愛いですよ。思春期の男の子も「大山さ~ん!」って来るんです(笑)
私は元気いっぱいな方です!(笑)子どもとひたすら遊び一緒に過ごすことがメイン業務のひとつになるので、体力のある元気な方だと嬉しいですね。
アイデアを具現化できる環境なので、やりがいはすごく大きいです。例えば、「今日はこんなご飯つくろうかな」「次のイベントはこんなのやろうかな」とか。もちろん子どもの才能が発揮できること、楽しいと思ってもらえそうなことを先ず考量しますが、自分の想いも乗せられるので自由度が高いですね。
子どもの反応もダイレクトに見れるので、達成感や喜びはすごいです(笑)少しでも興味のある方は、ぜひ一緒に居場所の運営をしましょう~!待ってます!
はじめて訪れた親と子どもの居場所。
フライパンを振るって夕飯をつくる大山さん、子どもたちと向き合う荻野さん、今を全力で楽しむ子どもたち、ほっと一息つく親御さんが過ごす空間は、明るい笑顔であふれていました。
貧困や格差なんて関係のない、ただひとりの人と人とが緩やかにつながり交流する姿を見て、居場所の本質が少しだけわかったような気がします。
居場所は、自分の心に正直になれる空間であり、自分のことも他者のことも認め合い、大切にし合い、好きでいられる空間。ときには恥ずかしい部分も弱い部分も見せながら、知らなかった自分の一面に出会っていく。外を駆け回り、本とにらめっこをし、少しの喧嘩をする。喜怒哀楽で表情を豊かにする子どもたちを見て、「この場所を絶やしてはいけない」と強く思いました。
「ただいま」「おかえり」「こんにちは」「気を付けてね」が響き合う、妙に特別扱いされることのないマイホームのような安心感。「だれでも来ていい」と門戸を広げることで救われる心があるということを、実際に足を運んでみて身に染みて実感しました。
現在、キッズハウス いろどり・キッズハウス はなびでは、居場所を運営するスタッフを募集中です。居場所の運営に興味がある方、困っている人の助けになりたい方、やりがいを感じながら働きたい方、子ども支援に興味のある方。ぜひ一緒に親と子どもが心を開き安心できる居場所をつくってみませんか?
あなたのご応募、お待ちしています!
募集要項
業務内容 | ・こども食堂等キッズハウス いろどりの運営 ・親と子どもの居場所等キッズハウス はなびの運営 ・体験プログラムの企画、広報など |
雇用形態 | 常勤職員 |
給与・月給 | 180,000~240,000円 |
勤務地 | 宇都宮市戸祭4-7-11 宇都宮市兵庫塚3-22-25 |
勤務時間 | 12:00~21:00(休憩1時間) |
休日・休暇 | 基本土日祝日・年末年始(イベント開催により変動有) |
福利厚生 | 社会保険完備、バースデー休暇 |
採用予定人数 | 2名 |
応募資格・条件 | ・自家用車で通勤可能な方 ・Word、Excel等の基本操作が出来る方 ・基本的な家事(料理・掃除・洗濯)が出来る方 *大卒、社会人経験2年以上、元気いっぱいな20~30代歓迎 |
応募方法 | ①履歴書及び志望動機書(A4用紙1枚)oishii@tochigi-yso.orgに提出 ②書類選考後、面接日程をご連絡いたします。 |
応募書類 | 履歴書・志望動機書 |
選考方法 | 書類選考・面接 |
お問合せ先 | 〒320-0056 宇都宮市戸祭4-7-11 028-622-2212/oishii@tochigi-yso.org |
メッセージ | とにかく子どもたちと一緒に過ごす!遊ぶ♬ 笑ったり、ご飯食べたり、勉強したり、木に登ったり。 そうやって一緒に過ごす中で子どもたちが困っていること、悩んでいることが見えてきます。どうやったらこの子がこれから先、希望を持って生きていけるか?そのために今何が必要か? 考え、形にし、子どもたちを笑顔にする★それが私たちの仕事です。様々な体験をポジティブに受け止められる方、一生懸命頑張ることのできる方、明るく体力のある方、是非ご応募お待ちしています! |
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