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〈仕事紹介〉地域をつなげ、日常を耕すことを目指して。『一般社団法人 カゼトツチ』

読者のみなさんは、誰かと話したい時、勉強や仕事をしたい時、作業をしたい時など、どこに足を運ぶでしょうか?

落ち着いた喫茶店や自然が感じられる開放的な空間、はたまた秘密基地のような薄暗い場所など、シーンによって様々な場所に足を運ばれるかと思います。

そんな中、「集中して作業もしたいし色んな人との交流も楽しみたい」という方もいるはず。

実は、そんな方にぴったりな場所が小山市にあるんです!

その名も、『コワーキングスペースSEKEN』。

JR小山駅西口から北側に徒歩3分、落ち着いた雰囲気の『みつわ通り』を歩いていると、突如お洒落な建物が現れます。

1階はコワーキングスペース、2階はシェアオフィスとして、学生や社会人、フリーランスなど様々な人たちが利用できる場所となっており、1時間300円から気軽に利用できます(学生は学生証の提示でなんと半額に!)。

今回は、そんなコワーキングスペースSEKENを管理運営する『一般社団法人カゼトツチ』についてご紹介します。

ではさっそく、

お邪魔します〜!

シンプルでお洒落な空間…!こんな空間が小山市にあったとは!

空き店舗だったいうこの場所は、元々地域の人達が集う洋服屋さん。照明やショーウインドー、カウンターなどは当時のものを再利用しているそう。なるほど、だからマネキンが置いてあるんですね。

お洒落な空間を眺めていると、一般社団法人カゼトツチ代表の古河 大輔(ふるかわ だいすけ)さんと地域情報ライターの藤本 尚彦(ふじもと たかひこ)さんが出迎えてくださいました。

元洋服屋をフルリノベーション!まちづくりに必要な3つの要素を併せ持った『コワーキングスペースSEKEN』とは?

木の質感が感じられるお洒落な空間ですね〜!

元々洋服屋さんだった空き店舗を借り受け、地域の人たちを巻き込みながらフルリノベーションしたんです!今後の変化にも対応できるように、白・黒・茶色などの色を基調に、できるだけシンプルな内装にしました。

フルリノベーション!このロゴも素敵ですよね。

SEKENのロゴの四角にはそれぞれ意味があるんですよ。まちづくりに必要な3要素である『仲間』『空間』『時間』、そして『世間』です

「この場所を地域との接点にしたい」と思ったんです。一般的に、自分と繋がっている身近な社会やコミュニティのことを『世間』と言いますが、その一人ひとりが持っている『世間』を掛け合わせたらそれぞれの『世間』が広がって面白いんじゃないかと思い、この場所を『SEKEN』と名付けました。

名前にそんな意味が込められていたのですね!普段はどのような人が利用しているんですか?

1階のコワーキングスペースは学生と社会人の利用が多いですね。2階のシェアオフィスは、地域おこし協力隊や個人のブロガーさんがデスクとして使っています。あとは、バーチャルオフィスとか

バーチャルオフィス?

簡単に言うと、事務所を構えることなく事業を始めるにあたって必要な住所などの情報を借りることができる『仮想の事務所』のことで、今は4社ほど利用しています。事務所を構えるための初期費用って結構高いので、バーチャルオフィスとして使っていただくことで「小山市を拠点に新しいことに挑戦したい」と思っている方のハードルを低くしているんです

なるほど!そういった使い方もできるのですね。個人事業主の方など、「挑戦したいことがあるけれどコストは抑えたい」という方にもぴったりですね!

小山市の方だけでなく、首都圏から出張で来たという方も利用してくれているんですよ。

勉強や仕事だけでなく、バーチャルオフィスという機能も備えている『コワーキングスペースSEKEN』。その名の通り、学生から社会人、地域のお年寄りの方まで、多くの方が足を運んでくれているそう。

実はそれだけでなく、各々が持っている『世間』を共有し合うという点で、カゼトツチのインターン生主催の高校生・大学生向けイベントやシェアオフィス利用者の“人となり”を掘り下げていくトークイベントなども多数開催しているんです!

そのような様々な人が集う『コワーキングスペースSEKEN』を管理運営している『一般社団法人カゼトツチ』とは、一体どのような団体なのでしょうか?

カゼトツチ誕生のきっかけと事業の背景にある想い

地域に根付いた取り組みをする団体として誕生した『一般社団法人カゼトツチ』。地域の人たちの多彩な暮らしと持続可能な地域を支えるため、「日常を耕す」をミッションに、コワーキングスペースの管理運営や移住者支援など、地域の人や資源・風土・文化に関わる幅広い事業を行っています。

そんなカゼトツチは一体どのような経緯で設立されたのでしょうか。

カゼトツチを設立したきっかけについて教えてください。

元々NPO法人とちぎユースサポーターズネットワーク(以下ユース)で、栃木県全域を対象に『地域と若者』にフォーカスを当てた事業を行っていました。地域でのコーディネートには長距離・中距離・近距離というレンジがあるんですが、どちらかというとユースは中距離型なんですよね。ユースで活動する中で、ふと「もっと地域に根付いて長い時間をかけて成果を出すような取り組みも必要だな」と感じ、カゼトツチを立ち上げました。

古河さんは小山市のご出身とのことですが、それが小山市を拠点にした理由なのですか?

それもありますね。あとは、カゼトツチの任意団体が設立された2015年で法人化したのが2018年なのですが、小山市は栃木県で2番目に大きいまちにも関わらず、当時は現在カゼトツチがやっているような活動をしている団体が他になかったんです

活気のある小山市にそのような団体がなかったというのは意外です。幅広く事業に取り組まれているかと思いますが、特に力を入れている事業はどんなものでしょうか?

どれも全力でやっているのですが、やっぱり『コワーキングスペースSEKEN』の運営と『ニシグチオヤマ(Webマガジン)』かな。

JR小山駅の西口から約1kmのところに思川と城山公園があるんですけど、そのあたりの範囲で地域で活動している方やお店を経営している方にお話を聞いたり、イベントの情報発信を行ったりする活動をブロガーさんたちと一緒にしています。

どうして西口エリアに限定したんですか?

ちょうど今、小山市が西口エリアの再開発に力を入れているところなんです。「地域経済が循環して活性化していくようなエリアにしよう!」ということで、小山市が運営する事業者を公募していたので、そこに手を挙げました。

そこで、情報発信をするメディアや街歩きツアーなどのコンテンツ、小山市にある歴史や文化を発信するといった企画を行うことになりました。その中の1つとして、西口エリアに特化したWebメディアを作ることになったんです。

あとは、『Oyama Beginner(おやま移住者交流会)』など、移住者支援の事業も行っています。今は年に3回ぐらい、小山市で活動している人たちと一緒に何かやったりしていて。この間は、小山市でクラフトビールを醸造する『808ブルワリー』さんや『西堀酒造』さんを訪ねるツアーを開催しました。

楽しそうですね!その事業の目的は、小山市で何か活躍したいと思ってる人を支援することなんですか?

そういう側面も一方ではあるけれど、1番の目的としては『移住者同士』や『移住者と地域』のつながりを作ることです

『Oyama Beginner』は小山市に住み始めて約3年未満の人を対象にしているんですが、住む場所を変えてその地域に馴染めるか馴染めないかという時に、「知り合いがいるか」「自分に合ったコミュニティに出会えるか」ってすごく重要になってくるんですよね

たしかに、自分が身寄りのない場所に移住すると考えるとすごく不安です…。移住先に自分を受け入れてくれるようなコミュニティや人がいれば安心できますね。

そうですよね。なので、『Oyama Beginner』を通じて移住者と小山市で様々な取り組みをする方々とを繋げています。「引越して来た先の最初の知り合いを作る」みたいなコンセプトなんです。

ただ、交流目的だとちょっと行きづらい部分もあるかと思うので、「小山市で面白いことをやっている人たちを訪ねる」「特産品やイベントを通じて小山市のことを知る」といったテーマを設け、参加した人同士が横に繋がれるような仕掛けにしています。

交流目的だと参加を躊躇してしまうこともありますが、ツアーのような形だと気軽に参加できますね!

高校生が主役となって、小山市を舞台にこのまちと自分たちの未来を描く『おやま高校生まちづくりProject』もやっていらっしゃいますよね。地域に関心がある若者の意欲を伸ばしたり、小山市で活躍してくれる人を増やしたりしたいという目的なんですか?

まさにそれが目的です。市の担当者とは、「高校生の頃から地域との接点や居場所を作りたいよね」という話をしていたのですが、中々実現まで至らなかったんです。うちのような1民間団体では、公的な高校には入り込めないという課題もありました。

そこをどうやって突破しようかと悩んでいた時に、2020年から栃木県で高校生の地域定着支援事業が始まったんです。そこに小山市が応募した際に、私たちに声をかけてくださって、一緒に事業を行うことになりました。

自治体と連携して行っている事業ということですか?

そうですね。市と連携することで、1民間団体だけで行うよりも広く情報を届けることができる他、小山市がやっているから安心して参加できるというメリットがあるんです。

Facebookで『おやま高校生まちづくりProject』の説明会の様子を見たのですが、参加している高校生が多いなあと感じました。地域のことをやりたいと思っている高校生も沢山いるんですね!

本当に幅広く事業をされていますが、事業に取り組む上で大切にしている想いはありますか?

大切だなと思うのは、人との関わりですね。どの事業においても必ず人と関わる機会がありますからね。

関わる人みんなが楽しめる関係性を作るということは大切にしていますね。団体には「日常を耕す」という目的があります。

日常には様々な可能性や選択肢があって、1人ひとりが自由に描いていいと思っているんです。そのために自分がやりたいと思ったアイデアの種を実らせようと思ったら、砂漠に種をまくよりも、豊かな土壌にまきたいですよね。豊かな土壌があるところで生活できれば、何かやりたいことを実現しようという時や人と一緒に何か面白いことしようという時にも上手くいきやすい。なので、色々な人たちがチャレンジしやすい環境や人と人が手を繋ぎやすい環境を作りたいと思っています。

誰かにはメリットがあるけど誰かにはデメリットがあるような関係性は長続きはしないと思うので、1つ1つの良い関係性をちゃんと作っていきたいです。

地域の中でつながりをつくる

お二人は人との関わりや関係性づくりを大切にしていらっしゃいますが、小山市にある課題はどのようなものだと思いますか?

「新しいことを始めようと思った人たちがスタートダッシュを切れる環境が少ない」ということですね。「事業を立ち上げたい」「起業したい」と思っても、相談に行く場所もその拠点となる場所の選択肢も少ないという現状なんです。「新しいことを始めたい」と思いながらも始めにくかったという、自分自身の経験もベースにあります。そんな経験も『SEKEN』を作った理由のひとつです。

たしかに、「何か新しいことを始めてみたいな」と思っても、相談できる相手やフィールドがなかったら中々一歩踏み出せないような気がします…。それってもったいないですね。

そうですよね。それに、人口減少や若者の流出など、他の地方にある課題は小山市にもあります。小山市の場合は、毎年1万人程が新しく越してきて、その分1万人程出ていってしまうんですよ。16万7千人の街で毎年1万人が入れ替わるって、なんか面白くないですか?(笑)

毎年1万人も!!(驚)

そうなんです。転勤がある方や都内に仕事に出ている方が多い小山市では、地域とのつながりや関係性が弱くなってしまうんです。それを何とかするために、移住者交流会をやっています。

地域に面白い仲間ができたり行きつけのお店ができたりすれば、たとえ引っ越したとしてもその街との関係性は続くので、そういったことは大切にしていきたいなと思いますね。

私も栃木県の実家から東京都の大学まで通学していたので、それはすごく分かります。

小山市の課題と向き合いながら活動する古河さんと藤本さん。ここでひとつ気になることが。そもそも、どうしてお二人は地域に関心を持ったのでしょうか。

なぜ地域に関心を?きっかけはサッカー部設立!?

どうして地域活性の取り組みを始めようと思ったのですか?

高校2年生の時、部活動を辞めた人たちと一緒にサッカークラブを作ったんです。自分たちで練習試合のセッティングや大会の申し込みなどをしているうちに、色々な人が集まってくるようになりました。小山市に住んでいるブラジル人やペルー人と試合をしたこともあり、それがすごく面白くて楽しかったことを覚えています。サッカーチームを通じて『外に出て地域で人と出会う』ということを高校生の頃からやっていて、それが今に繋がっている気がしますね

僕は、『トチギ遊学』という農業などを体験するプログラムに参加した影響が大きいです。色々な場所に顔を出すのが好きで、他の企業で働いている知らないお兄さんなど、「普段の仕事では出会えない人たちと話ができるのっていいな」と思ったのがきっかけですね。

お二人とも初めから地域に関心があったのではなく、人との出会いを通じて、地域に関心を持つようになっていったのですね。

お二人が描くこれから。もっとつながりを増やしたい

これからどんなことに取り組んでみたいですか?

SEKENがあるみつわ通りは駅チカの面白いエリアなので、あと1,2店舗くらいお店が出たらもっと面白くなると思っています。古い建物が残っているんだけど、そのままにしているとどんどん無くなっちゃうんです。

みつわ通りに、2年前くらいまでおばあちゃんが1人で営んでいたお店があったんです。でも、SEKENのリノベーションをしていた時、そこのおばあちゃんが倒れてしまって。そこを偶然通りかかった近所の方が気づいてくれたんですよね。その方から声をかけてもらって、看病をしに行ったんです。その時に「近くに若い人たちがいて手助けしてもらえるのはありがたい」という言葉をかけてもらったことがありました。

周辺エリアに若い人たちがいて、何かあった時に助けてくれたり相談に乗ってくれたりするだけでも意味があるんだと気づいたんです。“いる”ことで周りの人たちの助けになれることもあるんじゃないかなと

高齢者の人たちにとっては、若者がいるだけで心強いはずですね。

あと、小山市には70ヶ国以上の国からやってきた約7千人の外国人がいるんです。技能実習生の日本語研修施設もあるので、その生徒たちも多いんですよね。そのような外国人と地域の橋渡しみたいなことができたら良いなと思っています。

70ヶ国以上!

驚きますよね。関根さんは、「知らないと怖い」と思うことってありませんか?JR小山駅の近くにネパール人が営んでいるカレー屋さんがあって、そこに沢山の外国人が出入りしているんです。多分、知らないと怖いと思ってしまうかもしれないんだけれど、実際に話してみるとすごく良い人なんですよね。

今は他所から来た人にとって住みよい街にするために『移住者交流会』を行っているんだけど、外国人にとっても小山市が住みよい街になればそれは必然的に良い街になると思うし、地域の人に親切にされたら地域への愛着も大きくなりますよね。そこの関係性をしっかりと作っていきたいです。

高校生から高齢者の方まで幅広い年代の方や外国人の方と関わっていらっしゃると思うのですが、これから新しく関わっていきたい人やその人とやりたいことはありますか。

今、小山市のコミュニティFM『おーラジ』で『SEKENで世間のお仕事発見!』(毎月第2火曜日11時〜11時30分)というラジオをやっているんです。そこで紹介できるような面白い仕事をしている人はまだまだいるだろうと感じています。そういった人たちと関わって、その人たちが楽しんで仕事をしている様子をラジオでも発信できたらと思います。

一緒に活動してくれる仲間、募集中

働いたり、事業を進めたりしていく中で楽しいな、嬉しいなと感じたことや、やりがいがあれば教えていただきたいです。

「色々なことができる」っていうのが楽しいなと感じるので、毎日楽しいです!それを受け入れてくれる環境が地域にあるんじゃないかなと思っているので、ありがたいですね。僕は今でこそライターとしてやっているけれど、前職がSEだったので文章は全然書いたことがなかったんです。それでも「取材行って文章書きなよ」と言ってくれる人がいるし、それを実現できる環境があったというのはすごく良かったですね。

楽しいことは沢山あるんだけど…、『おやま高校生まちづくりProject』では、インターンシップをしていた大学生にファシリテートなど色々なことをやってもらっていたんです。そうしたら、インターン生の活動最終日にプロジェクトに参加していた高校生が感謝を伝えに会いに来てくれて。それを見て、「世代を超えて互いを必要とし、ありがとうと言い合える場を作れて良かったな」と思いましたね。

良いですね。私が高校生の時は大学生との関わりがなかったので、そういうのがあると高校生も大学生も良いだろうなと思います!

今後は、街歩きなどの西口エリアのコンテンツづくりやイベントに特化したスペース・シェアキッチンの運営に向けたリノベーションをしたいので、それに関わってくれる仲間も募集中です!!

いかがでしたか?

普段からよく小山市に足を運んでいるライター関根は、古河さんと藤本さんのお話を聞いて、「小山って魅力的な街だな」とより小山市に関心を抱くようになりました。

最後に、どのような人にSEKENに来てほしいか聞いてみました。

つながりを求めている人ですかね。SEKENは自習室やカフェとも違って、ちょっとふらっと来て世間話できるような場所なんですよね(藤本さん)」

「1人で作業をするのも良いんですけど、『新しい出会いがほしい』『情報を知りたい』などの想いがある人であればより楽しんでもらえるんじゃないかなと思います(古河さん)」

コワーキングスペースSEKENやカゼトツチさんの活動に興味を持った方は、ぜひ以下の情報をチェックしてみてくださいね!

各種情報

『コワーキングスペースSEKEN』店舗・HP・SNS情報
住所:栃木県小山市城山町3丁目6-25
営業時間:11:00~21:00
定休日:月曜日・第1、3火曜日(祝日の際は翌日)
駐車場:無。近隣の有料駐車場をご利用ください。

公式HP:https://oyama-seken.com/
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『一般社団法人カゼトツチ』HP・SNS情報
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