〈仕事紹介〉ここから、“世界初の〇〇”を生みだす!「楽しい」をキーワードにものづくりをトータルコーディネートする『協栄精工株式会社』とは
目次
みなさん、『ものづくり』は好きですか?
悠々と飛ぶ飛行機や点滅する信号機、あるいは空間を彩る照明にうつくしい建築物。
日々を振り返ると、私たちの生活にはあらゆる“もの”で溢れていることに気づかされます。それも、人の思考で考え抜かれ、手で形づくられたものが非常に多いことに。
ただ、乗り物や建築物、照明などの目に見えるものには、実は裏側の細かな設計や構造が欠かせません。飛行機や車が、小さな部品同士が組み合わさりようやく動き出すことができるのと同じように。
例えば、電球の光をぽっと灯すだけでさえいくつもの回路構造が組まれている…なんて考え出すと、なんだか神秘的な気持ちになりませんか?
表層からは簡単に見えないし決して目立つわけではない。けれど、たしかに私たちの生活を支えている。
そんなものを開発・製造する会社が、栃木県にありました。
今回お邪魔したのは、真岡市に本社を構える協栄精工株式会社。
協栄精工株式会社は、LEDや電子機器を使った製品の開発・製造を行うOEMの会社です。OEMとは、「Original Equipment Manufacturing(Manufacturer)」を略した言葉で、他社ブランドの製品を製造することを指します。
現在は工場長と組立作業を得意とするスタッフ併せて約15名の方が働いており、高勢町に第二事業所も持っています。
ほぼすべての製品が委託されたもののため、権利の問題上、固有名詞や写真などで「つくったものがこんな風に使われています」と紹介できない特質がありますが、その業務内容はとても奥深いものでした。
取材前、「調べても会社についての情報が出てこない…!」「すごく謙虚な会社なのか、情報を公開する間もなく忙しない会社なのだろうか…?」と勘案していた私ですが、内情を聞いてすとんと腑に落ちたものです。
では早速、この貴重な機会に協栄精工株式会社の仕事内容についてお話を伺っていきましょう!
今回お話を伺ったのは…
協栄精工株式会社 代表取締役 篠原 淳(しのはらあつし)さん
栃木県真岡市出身。LEDや電子機器を使った製品の開発・製造を行う協栄精工株式会社代表。現在、新規事業の立ち上げとしてゴルフの撮影を検討し、ピッチコンテストで多数の賞を取り、新聞にも取り上げられている。
会社の中は、“大きな工作室”?ものづくりならお任せあれ
今日はよろしくお願いします。実は私、生まれも育ちも真岡市でこの辺も歩き慣れているんです。でも今日初めて協栄精工株式会社さんの所在地を知りました!事前情報がなかったので、わくわくしながらこの場に来ています。
真岡市出身なんですね!OEMの会社なので「これをつくっています」とお見せできる商品が少ないのですが、今日は特別に開発している様子をメインにお見せできればと!
嬉しい~!
早速ですが森谷さん、これってなんだか分かりますか?
これは…LED、ですか?
そうです!街中で光っているディスプレイ広告を目にしたこと、ありませんか?その内部で使われている光の素、LEDを使った製品を製造しています。例えばこんなところで使われています(写真をスッと)。
!?この場所はまさか、私の大好きな某〇〇…!こんなところに使われてるなんて…!
この〇〇の電灯装飾とか、〇〇なんかも手掛けています(写真を指しながら)。
※使われている場所が特定されたらNGなので、〇〇で失礼します(〇〇が多い!(笑))。しいて言えば、某〇〇内でキラキラ輝く光の多く、という印象を受けました
全く知らなかった…
とくに小さな電子部品を使った製品の製造が多いですね。お見せできるものとなると、内蔵されてるものですかね…(ガサゴソ)。これとか。
…なんだろうこれ。なんだかフクザツな構造ですね。
これは、〇〇という装置に組み込まれる電気の基板になります。
わ、こんなに細かいんだ…!設計もすべて篠原さんが?
そうですね。僕が設計を行って、スタッフのみなさんが加工・製造しています。回路をイメージして、基板をつくって、プログラムして、ケースを設計して…と1からつくりました。あとは、このパーテーションとか。
このパーテーションも?
はい!こういうものも全部つくっちゃいます。作業場にはアクリル板が切れるカッターも印刷機もあって、会社の中が“大きな工作室”っていう感じなんです。
本当になんでもつくれちゃうんだあ…
こういうものづくりの機械って、なんだかわくわくしませんか?
社内がまさに『大きな工作室』で、さっきからわくわくが止まりません!生活に欠かせない身近なものがここから生まれてると思うとやっぱりすごい…
数多くの製品を生み出している篠原さんですが、すべての製品の設計が細かい。細かすぎる…!ボタン付けでさえ手が震えてしまう不器用な私にとっては、ほんの1mmずれることの許されない構造設計に触れることさえ恐れ多い。そこで、ちょっと気になっていた疑問をぶつけてみることに。
ハードも、ソフトも。設計・製造・加工までトータルプロデュース
もともとこういった作業がお好きなんですか?
そうですね。高校生の頃から彫刻刀をつかってこんなものをつくったりするのが好きで(写真をスッと)。他にも、家具とかミニ四駆とかつくったり。自分で1からものをつくることにすごく惹かれるというか…好奇心が掻き立てられるんだよね。
わ!めちゃめちゃ可愛い~!!ということは、高校卒業後から本格的にものづくりの道に?
そうですね。機械工学科に進学したとき初めてパソコンでものをつくる機械に触れたんです。そこで、これまで一つひとつ手でつくっていたものがプログラムに書いた通りに自動でつくれることを知って。ものづくりの世界が広がり、「もっと色々なものをつくりたい」とハマっていきました。
手作業では難しいものもつくれるので可能性の広がりを感じますね。その後は就職を?
大学院に進学して幅広い業務に携われる都内のベンチャー企業に就職しました。その後、昭和60年に父が創業した当社を平成30年に引き継いで今に至ります。結局は、昔から好きだったことをずっと続けてるだけなんです(笑)
好きなことを極め続けていった先にこうした素敵な製品が生まれてるって、なんかいいなあ…
そうそう、製造の現場ではパソコン本体および周辺機器を総称したハードウェアと、そのハードウェア上で動くプログラムを総称したソフトウェアのふたつがあります。普通ものづくりを行う際にはハードウェアの会社とソフトウェアの会社が協業するところ、当社ではハードウェアとソフトウェア、どちらも行っているんです!
すべての工程を?
設計・製造・加工まで一括して行っています。ここが結構ユニークなところで。
どちらも自社で行うって中々珍しいですね。例えば、スマートフォンを開発・設計した上にアプリケーションやデザインまでつくる…というイメージですよね?
その通りです!両方行っているので、面白さも難しさもあります。そのため大量に製造しているわけじゃなくて、少量多品種、つまり小ロットで受注・製造しています。
色々な種類の製品を少しずつ、というイメージですか?
そうですね。でも、代替わりする前は“検査”をメインに行う会社だったんですよ。例えば、送られてきた製品の部品同士がしっかり組み合わさっているか、傷がないかなどを丁寧にチェックする。それを1日に数万個など大量に行ってたんです。
1日に数万個も!?
だから当時の会社は「どれだけ安い価格でできるか」という勝負になってたんですよね。そこで、代替わりのタイミングを見計らって「少量多品種でユニークなものをつくる」という方向に路線を変更しました。
なるほど。そこから『小ロットで設計・製造・加工まで一括して行うものづくり会社』という独自路線へと進んでいったのかあ。
ところで話は打って変わって、先日、篠原さんに関する興味深い情報を発見しました。内容は『Good Shot~ICTでゴルフをもっと楽しむ~』というもの。360度カメラ・AI・5Gを結びつけた自動撮影システムを開発し、とちぎんビジネスプランコンテストにて『とちぎんたまご賞』を受賞したそうで…
いつでも「楽しいこと」「新しいこと」に前のめり。ものづくりの現場で面白いアイデアを実践する意味
そういえば、以前篠原さんに関する興味深い情報を発見しました!新聞にも載っていましたね。
『Good Shot』かな。2019年11月から、「AIを使ったサービスをつくろう」と思って企画しました。当社の新規プロジェクトとして進めていきたいと思っていて、今は半分ほど完成しています。日本で特許を取得していて、現在は海外の特許を申請中なんですよ!
おお!特許証だ、すごい…!どうしてこういったサービスをつくろうと?
ゴルフが趣味で年間50日ほど行ってるんですけど、見返すとほとんど写真が残っていないことに気がついて。少人数で回ることが多いので、みんな準備で忙しく撮影している暇がない。あったとしても集合写真くらいなので、ショットを打つ瞬間や思い出をなんとか残せないかと思って。
とはいえカメラマンに頼むと緊張して上手く打てないし、複数人いるのでピンポイントで打つ瞬間を捉えることが難しい。それに、ゴルフは長丁場なので撮りっぱなしになってしまうですよ。そうなると後々の編集が大変で。ショート動画が流行っている今、さすがに5~6時間の動画なんて見れませんよね(笑)
う~ん…ちょっと長いですね(笑)
そこで「AIが自動で撮影・編集してくれたらいいな」と思ったんです。自然な姿を撮影してくれますし、ショットを打つ前・打つ瞬間・打った後を自動で編集して切り取ってくれます。360度カメラで『広く撮影できる』というところも魅力のひとつですね。
画期的すぎる…!長時間にわたる編集という気の遠くなるような作業を迅速に処理してくれるなんてすごい技術ですね。それに「撮られてる感がない」から、心がざわつかずにゴルフに集中できそう。
いま実際に撮影してみると…
わ、リアルタイムで篠原さんが映ってる~!しかも何が映ってるのかちゃんと識別されるんですね!(椅子や人などを識別して色で区分されています)すごすぎる…
「こんなのあったら面白いかな」っていう発想です!いつもアイデアや工夫を施してものづくりをしてるんですよ。
『Good Shot』以外にも?
そうですね。例えば、会社の運営方法にも面白いアイデアがあって実践してるんですけど。これ、見てください。
175…?なんの数字だろう、これ。
ものづくりって、「1個10分でつくってね」など、『決められた時間内で何個つくる』という目安が決まってるんですよ。だから製品をつくるのにかかった時間を記録する必要があるんですが、ここで「1個10分で25個つくってね」と言われたら250分かかる計算になりますよね。そしたら、今の時間から何時までに出来上がっていればいいですか?
…(計算中&思考停止中)ええと、う~んと…
(一緒に計算中)16時10分ですかね?
すみません(笑)
いえいえ(笑)この時間までに完成していれば時間通りにできたことになりますね。でも、これって計算に時間がかかるし難しいじゃないですか。そこでこの時計を導入したんです。もちろん、当社でつくったものになります。
まさかの手づくり!
始業時間の9時になると『0』、9時30分になると『30』、10時になると『60』と、始業時間を起点に分刻みで表示させることにしたんです。
それはシンプルで分かりやすい(計算が楽…ありがたい…)。
そうなんです。それで30にはじめて210で終わったとき、その作業には180分の時間を要したという計算になりますよね。引き算すればいいだけなので計算が格段に楽で効率的にできるんですよ。大企業のように『ラインで製品を流してコントロールする』ことが難しいので、『社内の時間軸を変える』という方法を取りました。
すごいアイデア。そして効率的だ!
あとは、ものを組み立てるときにもっとシンプルにできないかなと考えたり、補助してくれるような道具を自分でつくったり…そういう工夫は日頃からしてますね。
問題が生じたときや物事を改善しようとするとき、通常は改良するなどお金をつぎ込んで解決しようと努めがちなんですが、まず「そもそも、それって要るの?」「なくしてしまってもいいんじゃないか?」と考えるんです。
なるほど。何か問題が生じたら「意地でも解決しなければ!」という方向に向かってしまうので、根本の疑問にぶつかることってこれまでなかったかも…
例えば「工場には清潔感が大切なので整理整頓に取り組みましょう」ということであれば、「そもそも、ものを沢山置かなければいいんじゃないの?」っていう発想になります。そういった改善策を取ってるので、当社は製造業の中でも比較的ものが少ない方だと思うんです。
入った瞬間、それは感じてました!製造業の現場を見るのは小学校の社会科見学以来ですが、正直、倉庫のような空間にものが沢山置いてあるイメージだったので…
実は、紙の書類も廃止したんですよ。かつてはここに沢山積んであったんですけど、「全く使わないのに残しておく意味が果たしてあるのか?」ということで、明確な意味がないものは極力省くようにしています。
私、使わないけれどいつか来るであろうときのために割と取っておいちゃいます。特に紙の書類とか。でもそのいつかって全然来ないんですよね(笑)
ため込んじゃうタイプ?僕、私生活も必要なもの以外はなにも持ってないです(笑)
ため込んでしまうタイプです、完全に(内省しよう)。
「やりたいことを、ひたすら楽しく!」チャレンジを許容するこころが、優しい会社の風土を育てる
他にも、組み立ての構造を簡単なものに変えたりとか。小さなことって意外とストレスになるし失敗するリスクも高くなるので、それらを極力除いて“楽しく”仕事ができたらいいなと思っています。
楽しく?
この仕事は、自分が好きだからやってるんですよね。もともと営業があまり得意ではないので、お客様に求められたものを没頭してつくる。それこそが楽しいしやりがいにつながっています。昨日はAIのプログラム、今日は試作品の基板の設計など、基本的に毎日違う作業をすることが多いんですよ。
自分の得意なことや好きなことを活かしながら働くってすごくいいですね。それにルーティンワークが少ないからこそ、毎日新鮮な気持ちで取り組めそう!
大企業だと部署が分かれているので日々同じ作業を行うことがどうしても多くなりますが、当社では電気の基板をつくったら次はケースをつくって…と様々な作業に携われるので、そこは利点のひとつですね。
やっぱり、最初から最後までひとつのものに自分が関わっていると感じると嬉しいし楽しいです。そういうの好きな人って結構いるんじゃないかな?
1から設計してものをつくることが好き、という人はかなり多いと思います。「好きなことに没頭できる」という点も魅力的ですね。
ただ、真岡市にはふたつの壁があると思ってて。
ふたつの壁?
宇都宮市と都内の壁です。やっぱりみんな、仕事をしようと思ったら外に出て行ってしまうんですよね。相対的に見ても大企業や工業団地が多いじゃないですか。「安定しているから」という理由もよく分かりますが。
なるほど、たしかに(真岡市から宇都宮市に出て行ってしまった手前、何も言えない…!)。協栄精工株式会社さんの場合、「内情により情報を出せない」というところが要因のひとつなのかもしれませんよね。こんなに面白そうな会社が地元にあったなんて初めて知りましたもん。
それもありますね。もし「働いてみたい」という方がいれば大歓迎です!例えば、陶芸や彫刻が好きな人とかね。電子部品に触れたことがなくたっていいんですよ。どちらかというと形を書いてそれを動かすためにはどうしたらいいのか考えて試作して…と、1からものごとを創造することが好きな人が向いてるのかなと思います。
それで言うと美大生なんかも向いてそうですね。
そうですね!未経験でも全然大丈夫です。どちらかというと、僕はデザイン面でつまづくんですよ。こういうのもっぱら描けなくて(あしかもくんのイラストを指しながら)。
いや、細かい設計とかの方がもうすごすぎて…
「このイラストをこのくらいのサイズの看板にしたい」「あしかもくんを動かしたい」ということであれば割とすぐにできちゃいますよ。
強い!最早チームを組みたい(笑)
森谷さんの後ろにある機械で試作品がつくれるんですよ。これでプラスチックなどを好きな形にぎゅんぎゅん削って…。この銅の試作品も、この機械でつくりました。
実物を見るとやっぱり面白いですね。意図して設計したものが動く喜びというか…なんだか感動します。篠原さん自身、働く上で大切にしていることはありますか?
好奇心、ですね。本当にそれだけです。「なにこれ?楽しそう!」っていう感じかな。
「楽しいかどうか」ってものづくりにも影響しそうですね。嫌々つくってると、いいものをつくるのが難しそう…
そうなんですよね。社内にはチャレンジを尊重する風潮があります。失敗しても、いい方向に変えちゃう。例えば誰かが失敗したとき、「そこがやりにくいと気づけてよかったね」「違う人が失敗してたかもしれないから先に気づけてよかったね」という風に。
ものづくりに失敗はつきものなので、「落ち込まずにどんどん楽しいことにチャレンジしてほしい」という想いがありますね。
素敵な風潮ですね。だからなんとなく空気が軽やかで、働いている方の表情や物腰が柔らかいのか…
あとは「既にあるものはやらない」ということですね。小さい会社だけど『世界初のなにか』にチャレンジしていきたいな、と!
これから力を入れていきたいことはありますか?
どうだろう…あんまりないです(笑)もちろん会社を存続させることは大切ですが、「儲けるためにちょっと辛いけどみんな頑張ってね」とは言いたくなくて。「好奇心をくすぐられながら楽しく働いている延長線上に会社が続いていけばいいな」という気持ちです。
わくわくする生き方だ…!好奇心が形になって誰かの役に立つ。私も篠原さんを見習って、好きなこと・楽しいこと・わくわくすることにもっと前のめりになろうと思います!
社会の基盤を支える『縁の下の力持ち』。私たちの生活を彩る様々なものたちは、目立たないところでものづくりに没頭する格好いい人たちによってつくられています。
パソコンやスマートフォン、お気に入りの照明など、自分が大切にしているものが実はものづくりが好きな人の手によって丹精込めて“楽しく”つくられている…と思いを馳せると、より愛着がわいてきませんか?
今回お話を伺って、「自分の好きなこと、楽しいと思う気持ちを大切にすべし!」という気づきを得ることができました。とくに『様々な思考を巡らせた末に光がひとつ灯る』というものづくりの奥深さに触れ、自分で1からつくることの価値や意味を実感しました。
現在、ものづくりに興味があり一緒に働いてみたいという方も募集中とのこと。
「楽しいこと」であふれた、明るくアットホームな協栄精工株式会社。
少しでも興味のある方は、ぜひ一度お問い合わせしてみてくださいね!◎
協栄精工株式会社
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