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とちぎのシゴト

〈仕事紹介〉「理系で好きなことをやってるおじさん(自称)」の思いが詰まった株式会社akfとは?

~今回のシゴトの現場「株式会社akf」~

車、建物、パソコンなど、私たちの暮らしには「物」があります。

読者のみなさんは、それぞれの物がどのように作られるか知っていますか?

 車を例にとり、大きく言うと、企画(コンセプト)、デザイン・設計(車両、部品)、試作・評価し、生産工程を計画、設備の検討、設備調達、設備トライ、品質確認、量産化(プレス、溶接、塗装、組立、検査)、を経て、車屋さんに運ばれ、我々は道路沿いの素敵なお店でみることができます。

これらの作業工程一つ一つに、高い技術を持った仕事人がいます。

今回紹介する増沢さんは、大学院卒業後、車を製造する研究所にて「設計・評価」の工程に従事し、より正確に、より早く、より安くできるように研究と実証を進めてきました。

これまで車の安全性を測るためには、実際に車両や部品を試作しテストし、計測していく方法でした。しかし、増沢さんは実際に車両や部品を創ることなく、コンピューターの画面の中で、車両や部品を試作し、テストし、計測する「コンピューターシミュレーション:(CAE)と計測データの解析」の専門性を磨いていきました。

これらはものづくりにおいて開発コストを削減することができ、よりよい製品の開発に貢献できる技術です。そして、「自分の技術や力が社会でどこまで通用するのか試したい」と自身で創業したのが、現在の株式会社akfになります。

今回お話をしてくれたのは

増沢航介さん

東京大学工学部物理工学科卒業後に大学院へ進む。大手自動車会社に就職し、15年間勤め抜いた後、学んだ知識を生かして、現在の株式会社akfを起業。趣味・特技は剣道で、五段を取得。今回の取材では、本音で様々なことをぶっちゃけトークしてくださいました。

人と人との繋がりが、よりよいモノづくりに結びつく

増沢さんがモノづくりの現場で、コンピューター上にて、モノを動かし、データを取り、解析し、実際により安全で安心なモノづくりができる仕事をしていたことはわかったのですが、創業した株式会社akfではどんなお仕事をしているのでしょうか。

自分が長く勤めていた車両の製造に限らず、モノづくりの会社(メーカー)がモノをつくっていく中で、本当に求めていることは何かを聞き出し、最適なコンピューター技術を活用し、よりよいモノづくりを進めるようにすることです。

その過程で、メーカーのニーズ(ありたいこと、必要としていること、困っていること)と、コンピューターソフトを提供する会社(以下ソフト屋)が適切につながるようにします。
ソフトの機能や効果をメーカーが使えるイメージを持てるように分かりやすくし、メーカーとソフト屋さんが双方に納得のいくようにヒアリングを重視し仕事を行っています。

製造現場にいると、メーカーさん自身が本当に解決したいことが分からずに、ソフト屋さんに相談してしまうこともあります。逆にソフト屋さんは、技術のことを語ってしまい、メーカーが困っていることへの解決策を提示できず、相互理解が出来ていないケースが多々あります。お互いがお互いを必要としているにも関わらず、上手い結びつきができていないことで、最大限の成果を生み出すことができていないんです。

そこで私の会社では、
「コンピューターソフトを開発・提供する会社に製造現場が求めていることを提供し、よりよいソフトの提供・提案をしてもらうこと」

「メーカーとのコミュニケーションを通して、メーカーが困っていること、求めていることを把握し、どのような状態を目指すのか、そのための解決方法とプロセスを提案するソリューションの提示」

「メーカーとソフトの両方が分かり、よりよい製品づくりができるエンジニアの育成」


この3つを事業の柱にしています。

お互いのことを理解しないと最適な提案にならないですもんね。
ソフト面も理解し、メーカーで働いていた経験がある増沢さんだからこそできるお仕事ですね。

最適な提案をするためには、信頼関係を築いて本音で話をすることが何よりも大切だと思っています。本当のニーズというものは意外とかしこまっている時には掴みにくいものだったりするので。

なるほど。モノづくりをしている方というと、失礼ながら「本気で人と向き合うというよりは物と向き合う」というイメージがあったのですが、物を使うのも人だから人とのコミュニケーションはとても大切なのですね。

スピード感を大切にする理由とは

そもそも、モノづくり工程に、製品ができる前にいろんな試作があることをまったく考えていませんでした。その試作が繰り返されて、安全で機能的な製品がお店に並ぶのですね。その試作段階でコンピューターを使って効率化する仕事があることも全く知らなかったのですが、コンピューター解析の仕事について教えていただけますか。

コンピューター解析は、専門用語で、CAE解析と言ったりします。CAE解析は、試作品を作らず、ソフト上でシミュレーションを行うため、スピードも早くでき、低コストでの実験を可能にします。

コンピューターの中でシミュレーションする…。文系の私からするととても難しそうで何をどうすればできるのか全く想像がつかないのですが。

私も前職のホンダの仕事を通して身に付けた物です。コンピューターシミュレーションというと難しく聞こえますし、実際に簡単な物ではないのですが、自分にとっては難しいコンピューターゲームに近いイメージです。昔からゲームやパソコンが好きだったというのもあったのかもしれませんが、諦めずにやればできると思ってやっていました。ソフトは全部英語だし、もう使いながらわからないことは調べたり教えてもらいながら粘り強くやる。それだけしかないですね。そういう点もゲームに近いのではないかなと感じてます。

好きという気持ちの力はとても大きいですね。増沢さんは仕事をしているとき、何を大切にして働かれているのですか?

スピード感ですね。様々な知識から瞬時にいろんな選択肢を全部持ってきた中で、最短でどこにどのようにすればよいかを考えています。ある程度の自信をもって、情報を瞬時に判断して行います。あとはお客さんがどう捉えるかなので、本気でぶつけに行くようにしています。早いということはつまりお金もそこまでかからずに出来ることであり、それだけで信用を得ることもできます。

確かに!迷っていることが多く、時間だけが過ぎてしまうことがよくあります。
遅くなればなるほど相手を待たせてしまうということですもんね。スピード感を大切にしているという奥に増沢さんが本当に「人」を大切にしていることを感じました。

いつになっても、チャレンジを続け起業へ

増沢さんは、起業すると昔から考えてホンダに勤めたのでしょうか。

いや、まったくないです。大学、大学院では物理を専攻してました。半導体の結晶構造の研究「物性物理」を専門でやってました。元々、自動車が好きで、物理ならどこでも仕事に活かせればと思って、ホンダに入社しました。ですが、学生の時の学びが活かせず、心が折れそうにもなることもありましたが、0からのスタートだと気持ちを切り替え、「学ぶ」姿勢で日々吸収していきました。そのかいあって、いろんなことができるようになり、会社全体を意識するような視野の広がりもできました。学ぶということは学生だけでなく、社会人になってからより大切なのだなと痛感しました。

学び続けて行く中で、それがなぜ起業に繋がったのでしょうか。

自分の仕事ばかりでなく、会社を見渡してるとIT分野の技術者が必要不可欠なのですが、その多くが派遣社員(期間限定で働く人たち)でした。後輩を育てる立場にもなり、彼らの持っている技術や知識、ホンダという会社への貢献しようとする姿勢に触れ、尊敬するものがありました。しかし、彼らは派遣という立場なので、彼らの賃金はホンダでの仕事の成果ではなく、派遣会社と契約した賃金設定になっています。熱意も技術もある人がもっと稼げるような仕組みを創りたいと思い始めたのは、今思えば創業の動機になっていますね。

大きな会社でも、いろんな人が働いているのですね。勝手なイメージですが、大きな会社って安定・安泰のイメージです。

確かに組織は大きいですね。お客さんが喜んでくれるように考え、実践してきた結果、ファンでいてくれる人、ホンダと聞いて信頼してくれる人がいる、そういう積み重ねてきた歴史もあって、今があると思います。確かに、賃金とか社内の仕組みとかおもしろい人材があってとてもよい環境でしたね。

しかし15年働いた時、あと25年ここで働き続けるかを考えていました。大きい会社なので出世が難しく、たまたま自分はあまり異動が多くない部署に配属されていました。そのため、「自分はもっと、色々なことに挑戦したい」と純粋にその想いが強くなっていきました。ですが、転職だとホンダより待遇のいい条件が難しい。
そこで、自分で起業したいという気持ちが高くなっていきました。

実は辞める1年前には、起業を決意し勉強や情報収集活動を始めていました。半年前の時点で勝手に手応えを感じて会社に退職して起業することを宣言してしまいました。
言ってから「大丈夫かな」と思った時はありましたが、もう自分で言ってしまったことなのでやるしかなかったですね。

新しいことを始めるのに、怖さもあると思うのですが、苦労したことありますか。

結論から言うと、苦労はしていないですね。今は、自分自身は自分のために、自分のやりたいことをやっています。例えば、本を読むということに対して活字が嫌いな人は本を読むことは苦かもしれない。しかし、その本が面白くて早く読みたいと思っている人にとっては、苦ではなく楽しんでいる。周りからしたら「大変そう」とか思われるかもしれませんが、本人が楽しそうに話し ているのであればそれは、苦労でない。チャレンジしていることに、苦労とか困難という 印象をつけたくないと思っています。自分で選択・決断したことですし、楽しんでます。

増沢流シゴトで大切にしていること

働いている先輩として若者たちに、働いていく上で伝えたいメッセージはありますか。

「人を大切にしてください」技術がなくても人さえ大切にしていれば大丈夫。技術を持っていたとしても、そもそも人を大切にしなければ仕事を依頼しようとも思わなくなってしまうのです。会社員でもそうでなくても結局困った時に助けてくれるのは「人」ですから。

もう一つは、「噓偽りなく話し、自分の思いを伝えられること」。自分をさらけ出すことで良い悪い関係なくインパクトや印象に残るように心がけています。

人を大切にすること、自分を誠実にオープンにしていくことですね。日々お仕事をするにあたって増沢さんのモチベーションとなっているものは何でしょうか。

基本的には、言わないし、表現しないけど、「俺ってすごい」と思うことが結構重要かなと。仕事っていうのを受けたときに、自分だからこんなにできた。他の人にはできないというところを持っている自己認識が重要かと。もちろん井の中の蛙になってはだめなので、外の世界をみて、自分のオリジナリティを捉え、信じること。今は、お客さんとの関わり方では、『1週間かかるところ1時間でできるように』と思ってスピード感をもち、根本をついてソリューションとして出すところが強みだと思っています。先日、自分がやってきたことを新聞で取り上げてもらいましたが、その記事を見て新たなお客さんと出会えたことも嬉しかったです。

「人を大切に」する思いが詰まった未来

増沢さんは、これからどのような未来を描いているのですか。

人材育成に力を入れ、IT業界に強い人を輩出していきたいです。ホンダ時代に、IT分野の人材が派遣社員が多く、正社員並の仕事をしていてももらえる対価は全然違うという状況があることを知りました。そこに悲しさを感じ、「この人たち(派遣社員)が、しっかりと学んで給与もしっかりもらえるにしたい。」というのが人材育成をしていきたいという想いが芽生えた出来事かもしれませんね。

最後に、「こんな仲間と働きたい」という人物像を教えてください。

繰り返しお伝えしていますが、「人を大切にする」思いに共感をしてくれる人。つまり、「人の話をしっかりと聞こうとする人」ですね。難しい話をしてしまいましたが、スキルは問わないです(笑)なので、興味があり自分自身を高めたい人と思ってる人はぜひ一度お話しましょう。


「人を大切にすること」をポリシーに置いた、増沢さんの思いの詰まった株式会社akf。

1人で悩んで進まないことが多いライター須賀も、インタビュー中人生相談にものってくださる気さくな増沢さんに出会い、「まずは自分なりにやってみて、様々な人に意見を求めてみる」という教訓をいただきました。

増沢さんとお話がしたい方はこちらから

HPはhttps://ak-firm.com/ メールはinfo@ak-firm.com
もしくはFacebookまで。

メッセージと共にリクエストいただければ幸いです!