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暮らしの中に本を添えたい 本屋『NAYA BOOKS』

みなさんは、日常生活のなかで“本”を読む機会はありますか?📕

スマートフォンの普及などでデジタル化が進み、”若者の活字離れ”と言われている昨今、目的も無く本を読む機会は減っているのではないでしょうか

今回ご紹介するのは、栃木県那須烏山市田野倉にある小さな本屋『NAYA BOOKS』。道路沿いのコンビニとドラックストアの間にポツンと建っている納屋がお店です。

今回は、そんな一風変わった本屋の店主、高田 直樹(たかだ なおき)さんにお話を伺いました!

今回お話を伺った方は…

NAYA BOOKS 店主 高田 直樹(たかだ なおき)さん
1974年栃木県那須烏山市生まれ。高校を卒業後、都内の大学に進学。卒業後から現在までうさぎや株式会社に勤務。2021年10月に地元に本屋『NAYA BOOKS』を開き、本業の傍らで営業を行っている。

なぜ本業の傍らで本屋さんを?

NAYA BOOKS』を始めたきっかけについて教えてください!

「生まれ育った地域に本屋が無くなっていたから」というのが一番の理由です。地元で本が買える場所がなくなってしまった。そこで、「散歩の途中に気軽に本が買える場所をこのエリアにつくりたい」と思い、『NAYA BOOKS』を始めました。

なぜ書店チェーンで働く傍ら、個人で本屋を始めようとしたのでしょうか。

日々本屋の閉店のニュースが流れるほど、本を取り巻く環境は厳しくなっています。勤め先のように規模の大きい本屋では、『試したくても試せない』ことも少なくない。でも、「自分でつくった場所ならば何があっても自分で背負えばいい」と考えたんです。そしてなにより、自分の価値観みたいなものを世間に晒してみたかったので始めました。

NAYABOOKS』の外観

自分でつくった場所ならば何があっても自分で背負えばいい」とのことでしたが、具体的にどんなものをしたいと考えたのでしょうか。

今ある多くの新刊書の本屋の売り場でやっていることが、自分の理想とはズレていると感じていました。例えば、人件費を落とすことや経費を削減することで、どんどん効率を良くしようとしているんです。

なるほど。

本屋の品揃えを考える時にも、今売れているものを並べればお客さんが買ってくれる確率が上がるので、流行りの本を多く並べているんです。例えば、映画やドラマ、テレビで紹介されているものとかですかね。

でも、それって自分の理想ではなくて。正直、映画とかドラマの情報は普通に生活していても入ってくるから、売り場でそれらの本を揃えるというのはそれほど経験を積まなくてもできるんですよ。

型にはまっている、というような感じでしょうか?

そうなんですよ。今の本屋には、5年・10年・20年働いているというキャリアを活かす機会がほとんど無くて。とにかく「“今”の売り場をつくることが一番良いこと!」のような傾向があります。それがつまらなく感じているんですよね

“今”の売り場だけになってしまったら、個性が見えないっていうのもありますよね。

そうですね。個性も見えないですし、その人が関心を持っていることや興味を持っていること、表現したいことなどを抜きにして売り場をつくることが主流になってしまいますよね

だから年々、自分の理想とかけ離れてしまっているなと強く感じたので、それから距離を置いたものをつくりたいと思い、このお店を始めました。

店内に並べられている本の様子

店主 高田さんの本との出会いとは?

先ほどからお話されている“本”についてですが、高田さん自身、本との出会いはどういったものだったのでしょうか?

最初の出会いは小学生の頃でした。学校の先生から読め読めと言われていたので…(笑)でも、高校生の頃も勉強もせず本ばかり読んでいたし、就職するときも本屋かなと思い探していましたね。大学生って本を読みますか?

自分はそこそこ読みますね。でも、本を読んでいる時間は少ない気がしています…(笑)

本当ですか!自分は当時全く本を読んでいなくて、酒ばかり飲んでいたので…(笑)でも、本屋に就職して毎日本を触るので、そこで改めて本を読み始めました。

『すぐに役に立たない本』をお店に置く理由とは?

NAYABOOKS』には高田さん自身が選んだ本を置いていると思いますが、どういった本を中心に扱っているのでしょうか?

誤解があるとまずいんですけど、『すぐに役に立たない本』を選んでいます。

すぐに役に立たない本…?

新刊の本屋の売場には、例えばお金が儲かるとか、1秒で考えるとか、短くまとめてやるとか、そういった本ばかりで…。でも、自分はそういった本はあまり好きじゃないんですよね。「何で1秒でやらないといけないの?別に2時間かけたっていいじゃん!」って思うんですよ(笑)

確かに駅にある本屋に行くと、そういった本がたくさん並んでいるのをよく見かけますね。

自分は「必ずしも全てのアクションがお金に繋がらなくてもいいじゃん」と思うことがよくあります。何でも合理性や効率性に落とし込んでいこうとするところが好きじゃなくて…ここのお店にはそういう本は全然ないです。

ずらっと本棚の本を見た感じ、そういったものは見えないですね。

本を読んで「すぐに使えるかも!」と思ったり、明日からの生活に手っ取り早く応用できるような本にあまり興味がなくて。本を読んで何年か経った後に興味を持つ方がいいなと思っているので、そういう本を選んでいます。だからざっくり言うと『すぐに役に立たない本』なんですよね(笑)

なるほど、そういった意味で『すぐに役に立たない本』を並べているんですね!

あまり効果を求める読書が好きじゃないので。例えば「リーダーシップを学びたい」と思ったときに『リーダーシップを学ぶ』といった本を読むより、過去の戦争で活躍した将軍の自伝を読む方が好きなんですよね。自伝を読んで、『その人がどう統率したかを知ることでリーダー像を学ぶ』という学び方の方が豊かじゃないの?って思うんです。

リーダーシップにはこれという明確なものがないからこそ、ひとつのロールモデルとして昔の人の生き方から学ぶという感じでしょうか。

そうですね。そこには「リーダーシップはこうあるべき」とは書かれていないけど、こんな場面でこんな行動をしてこんな判断をしたということを咀嚼(そしゃく)して学びに変えていくような形の方が豊かな気がするんですよね。

手に入れた情報をただ鵜呑みにするのではなく、自分の中で整理しながら学んでいく形は面白いですね!なぜそういったものを好んでいるのでしょうか。

単純にその方が楽しいからです。恋愛小説だろうと、歴史小説であろうと、沢山本を読んでいく中で印象に残ったフレーズがあって、それが積み重なっていくことが面白いなと。積み重ねるにつれて、「自分は人とこういった関係性を築いた方がいいのかな」という理屈みたいなものが溜まっていくんです。

なるほど。積み重ねる中で見えてくるものがあるんですね。

遠回りこそいいと思うんです。例えば友達と「ディズニーランドに行くぞ!」となった時に、じゃあディズニーランドだけでいいかって言われたら、途中の高速道路のSAで食べたラーメン美味しかったなとか、そういうものを全部含めて『ディズニーランド旅行』じゃないですか。

確かに、なんでもない道中こそ思い出として色濃く残ったりしますね…!

そういう本筋じゃないことが、記憶を彩っていたりするんですよね。もちろんディズニーランド単体も楽しいですけど、帰り道めっちゃ眠い中運転したな…とか。そっちも大事にしたいとは思いますね。

「どうでもいい」と思っている記憶の方が鮮明に残っていることもありますね。

そうなんです。そういった方が豊かというか彩りがあるというか…。本を読むということは、その代表格だと思うんですよね

高田さんの『本屋』に対するイメージとは?

高田さんが執筆した『本屋、ひらく

自分が持っている本屋さんのイメージは『落ち着く場所』なんですけど、高田さん自身はどのようなところだと思っていますか?

『色々なものに網羅的に出会える場所』が本屋かなと思っていますね。もちろんそこに来た人がホッとするっていうのも有り難い話ですし、ワクワクしに来てくれてもいいし、何にも考えずボーっとしに来てくれてもいい。そういう場所があったらいいなとは思いますね。

自由に来ることができて、自由に過ごせる場所ということでしょうか?

そうですね。よく「本屋って何も買わずに帰るのがあまり苦じゃない」って言われますよね?

確かに、そうかも!

ふわっとお店に来て、ふわっと帰る。気が向けば手に取って本を買うこともできる。そういう場所がいいなと思ってますね。

ただ、こんなに小さなお店だから、きっとお客さんは「買わないと帰りにくい」って思うんだろうけど、全然そんなことはなくて。会話があってもなくても「じゃあまたね」みたいになればそれでいいかなって思ってます。時々、近所のおじいちゃんが散歩中に座るためだけに来てくれるんです(笑)

そうなんですね!ほのぼのとした感じがいいな~…!

ちょっとお店でひと休み。そういった使われ方でも嫌じゃないというか、「町の中にお店がある」ということを認知して貰っていることが有り難いですね。

あとは…本を堅苦しくする人がいるじゃないですか。頭が良くなるためとか、勉強のためになるとか。その風潮が凄く嫌いで(笑)

「本を読むと立派な人になるから」って。自分は「なれないから!」って思いますけどね。そういった風潮を本を売る側から壊さない限り、読者人口は増えないとも思っていますね

自分も、何か目的を持って本を読むっていうことを無意識にやってますね(笑)

だから「本をもっと砕けたものにしたい」という意味もあって、お店ではTシャツと短パンを着て営業しているんです。その人の楽しみ方で、もっと自由に楽しめばいいと。

“本”への熱い想い。今後の展望についてお聞きしました!

今後の展望について教えてください!

現在の『NAYA BOOKS』をベースに、本のある場所をあちこちにつくりたいです。閉店してしまった本屋を復活させるプロジェクトみたいなものに関われたらいいなとも思っています。「みなさんの暮らしの中にちょっとだけでもいいから本を添えたい」。これを生涯かけてやりたいです。

高田さんが生涯をかけてまで“本”に熱意を込める理由はなんでしょうか?

それは、本が好きだからです。本屋が潰れたりと、本と接する場って少なくなっているじゃないですか。もちろん、古本屋でも図書館でも何でもいいんですけど。本と接する機会、そして本を買える場所が減ってしまったら、もっと本離れが起きると思うんですよね。

でも、やっぱり色々な中から選びたいっていう人もいる。だからそういう場所をつくり続けたいなと。そうしないともっと本を読む人が減ると思うんですよね。

自分は、単に「本を読むことは面白いよ!」っていうことを伝えたいんです。別に賢くなるとかはどうでもよくて。趣味のひとつとして面白いよっていうことを伝えたいですね

人生を豊かにするみたいなイメージでしょうか?

そうですね。その手段のひとつですね。別にそれが自転車に乗ることでもいいし、映画見ることでもいいし、テレビドラマを見ることでもいいし、ハイキングに行くことでもいい。何でもいいんですけど、その多様な選択肢の中に本を読むこともちょっと仲間に入れて貰えたら嬉しいなっていう感じです

それこそ本という選択肢が増えることで、より豊かな暮らしになるのではないかと思いますね。

そうですね。だから本に触れ、買える場所を色々な場所につくりたいと思っています。こういうお店ではなくても、「本を読むことは面白いよ」って伝えるためにやりたいなと

最後にお聞きしたいんですけど、高田さんにとって“本”とはどういったものでしょうか?

すごい難しい質問ですね(笑)

そうですね、究極な質問をしてしまったかもしれないですけど…(笑)

この本のタイトル通りです(笑)盛岡にある本屋さんが書いた本なんですけど、「ぼくにはこれしかなかった」。興味があることも、やりたいことも、情熱があることも。だからやるって感じですかね。だからこそ本とは、一生付き合うものかなと思っています!

普通の本屋とは一風変わった本屋『NAYABOOKS』。店主の高田さんのお話を聞きながら、興味があること、やりたいこと、できることの三つが重なり合っているのはとても素敵なことだと感じました。

また、最後にお話されていた「ぼくにはこれしかなかった」という言葉が深く印象に残り、「豊かな暮らしとは何だろう」と、ライター小野は無意識に考えさせられる時間にもなりました。

みなさんも、自分の人生を豊かにする手段のひとつとして、まずは興味の持った本を手に取って読んでみてはいかがでしょうか?

『NAYABOOKS』の詳細情報

住所:〒321-0526 栃木県那須烏山市田野倉39−10
SNS:TwitterInstagram
定休日:不定休(詳細はSNSをご確認ください)
アクセス:JR烏山線 大金駅から徒歩約15分・駐車場有