1. HOME
  2. 気になるニュース
  3. “インクルーシブな社会”を目指して。障がい児支援サークル『NOBA』
気になるニュース

“インクルーシブな社会”を目指して。障がい児支援サークル『NOBA』

みなさんは“インクルーシブな社会”と聞いて、どんな社会をイメージしますか?

恐らく多くの方はイメージが湧きにくいのではないのでしょうか。

インクルーシブとは、“全てを包括する”という意味。

つまり、障がいの有無や性別、性的志向、国籍などの違いを認め合い、全ての人がお互いの人権と尊厳を大切にして生きていける社会のことを“インクルーシブな社会”と言います。

今回は、そのようなインクルーシブな社会を目指して障がい児支援を行っているサークル『NOBA』のみなさんに、活動内容や想いについてお話を伺いました。

今回お話を伺ったのは…

NOBA代表 宇都宮大学地域デザイン科学部コミュニティデザイン学科3年 高橋 剛志(たかはし つよし)さん(左)
NOBA1年マネージャー 宇都宮大学共同教育学部国語分野1年 小山 凛志朗(こやま りんしろう)さん(中央)
NOBA2年マネージャー 宇都宮大学共同教育学部特別支援教育分野2年 大嶋 愛加(おおしま あいか)さん(右)

きっかけは、障がい児の親御さんの何気ない一言

このサークルを立ち上げようと思ったきっかけは何ですか?

自分は大学に入ってから様々なボランティア活動を行っていました。ある日、スペシャルオリンピックスさんでボランティアをさせていただいた時、障がい児の親御さんとお話する機会がありました。

スペシャルオリンピックスさんは知的障がいの方にスポーツをする機会を提供している団体ですよね!親御さんとは何を話したんでしょうか?

「障がいがあるとプールや遊園地に行くことが難しいんだよね」と言っていたんです。考えてみると「障がい児の居場所やイベントって少ないな」と感じ、「何かやりたい」という想いを友人に相談しました。

親御さんはそんな悩みがあったのですね…。相談した友人はどんな反応でしたか?

友人2人ともフリースクールやボランティア活動で子どもたちとの関わりが多かったので、「障がいの有無に関わらない共生社会を目指したいね」と想いが合致しました。

その3人でサークルを立ち上げたんですね!サークルを立ち上げるまでに大変だったことや苦労したことはありますか?

一番は活動内容を定めることですね。自分たちは障がい児に対して、学習支援もやりたいし、運動支援もやりたいし、家族や兄弟に対しても支援したくて。やりたいことが沢山ありすぎて、最初何から手を付けていいのか分からなかったんです。

その苦悩はどうやって乗り越えたんですか?

障がい支援学校や小中学校などの先生方に相談したところ、「イベントをやったらいいんじゃないか」というアドバイスをいただきました。

イベントですか…!一番最初に行ったイベントは何ですか?

昨年(2022)8月に行われたオリオンスクールフェスティバルへの出展です。まずはサークルについて多くの方に知っていただくために、子どもたちが楽しめるヨーヨーすくいとスーパーボール釣りを行いました。

障がい児の親御さんの何気ない一言から立ち上がったこのサークルですが、現在は30名ものメンバーで活動しています。実は、取材をしている際も教室の前方で活動を行っていました。

一体どのような活動を行っているのでしょうか。

実際に体験で得た知識を生かして

サークル活動はどのくらいの頻度で行っているんですか?

全体で集まるのは2週間に1回、木曜日です。その他に代表会議も2週間に1回あります。代表会議には、1学年2〜3名ずついるマネージャーが集まります。マネージャーは特に何名という決まりはなく、立候補制で決まるんです。

自主性を大切にしているんですね!ところで、今日は何をやっているんですか?

7月2日に真岡青年会議所さんが行うイベントに出展させていただくことになったので、そこで発表するダンスの練習を行っています。

楽しそうですね!それも最初のイベントみたいに周知が目的ですか?

そうですね。あとは、障がいがある子もない子も一緒に楽しめる空間をつくりたいので、広く参加者を募っています。

すごく素敵な考え…!このようなイベントは誰が企画を考えているんですか?

マネージャー以外のメンバーが企画しているんですよ!月毎に6〜7人のイベントチームをつくって、そのチームが主導で企画の立案を行っています。マネージャーはその他のサークル運営の役割を担っています。

毎回チームをつくってイベントを考えているんですね!イベント以外にはどんな活動をしているのですか?

過去2回勉強会を開催しました。1回目の勉強会では、専門の方に障がいを持った方がどんな悩みを抱えているのかなど、基礎的なことについて学びました。2回目は、座学で障がい者の特性や配慮する点などについて学んだ後、体験学習を行いました。

体験学習ではどんなことを行ったんですか?

車椅子体験や、発達障がいの子たちがどんな風に世の中が見えてるのか体験しました。ペットボトルを上下半分に切って、切った方からキャップの内側を覗くと視野が狭くなりますよね?そのように、発達障がいの子の中には1点を集中して見るという特徴を持った子もいるんです。

そうなんですね…知らなかった!

そういったことは実際に体験してみないと分からないから、体験はとても大事だと感じました。3回目の勉強会は実際に事業所へ訪問し、作業しながら当事者の方やその家族の方とお話する機会を考えています。

専門の方から学ぶ機会が多いんですね!

そうですね。最初のうちは専門の方から学んで、4回目、5回目になったら自分たちで本を読んで情報共有することも考えています。

そのような勉強会で得た知識はどのように実践に活かされているんですか?

例えば、“きちんと”とか“しっかり”とか曖昧な表現ってあるじゃないですか?発達障がいの子たちはそのような表現が理解しにくいので、「何分に」「小さじ何杯で」など、具体的に明記するように心掛けています。あとは、使用する文字のフォントにも気を付けています。

フォントによって見やすい、見にくいというのがあるんですね。

そうなんです。例えば、明朝体の文字は止め・跳ね・はらいがありますよね?発達障がいの子たちは先ほどの話にもあったように1点を集中して見る特徴があるので、その止め・跳ね・はらいの部分に集中してしまって文字がぼやけて見えてしまうんです。なので、誰でも見やすいUDフォント(ユニバーサルデザインフォント)を使用しています。

体験で得た学びが活かされていますね!

座学で学ぶだけでなく、実際に体験することで新たな発見があるのだということに気付かされました。
このように障がい者への理解を深めながら活動を行っているみなさんですが、どのような想いで活動しているのでしょうか。

「非日常」を体験してもらいたい

活動をしている中で、大切にしていることはありますか?

学生だけが満足するような活動だったら駄目だなと思います。自分達は障がいを抱えた方を対象にイベントを開いているので、いかに子どもたちやその親御さんに喜んでもらえるかっていうのが一番大切ですね

自分は非日常を体験できるような場にしたいと思っています。この場所に来れば楽しい経験や初めての経験ができ、それがきっかけで子どもたちの興味が広がる。そのような経験を沢山して欲しいなと思っています。

参加者の方にいかに楽しんでもらえるかっていうことを重視しているのですね!このようなイベントを開催している中で、子どもたちや親御さんから言われて嬉しかった言葉などはありますか?

「このような場があって良かった」「とても楽しかった」という言葉をいただいた時は、この活動をやってきてよかったなあと感じます。

参加者からの声はやりがいに繋がりますよね!このような活動を通して、サークルを始める前と比べて意識の変化はありましたか?

この前のイベントの待ち時間に絵を描いている子がいて、「何描いてるの?」と聞くと自分を指差してくれました。これまで障がい児と関わったことがなかったのですが、障がいの有無に関わらず1人の人間として接することが大切なんだと気付かされました。だから今まで以上に周りに気を配るようになりましたし、世間の差別的な見方に対して違和感を覚えやすくなりました。

自分の似顔絵を描いてくれたのは嬉しいですね!実際に関わる機会がないと、勝手なイメージや偏見でその人のことを決めつけてしまいがちですよね…私も気を付けないと。
大嶋さんはいかがですか?

私が元々このサークルに入ったきっかけは、特別支援学校の先生を目指しているにも関わらず障がい児との関わりがなかったのがコンプレックスだったからでした。それまでは障がい児との接し方も自分の中で漠然としていたのですが、実際に関わってみて明確になってきた感じがします。毎回参加してくださるお子さんでも日によって違った一面を見せてくれるので、「今日はどんな接し方をしたら一緒に楽しめるかな」と考えながら活動しています。

日によって違うことがあるんですね。その子が一番楽しめる対応をその時々で模索する姿勢は素晴らしいですね!

自分は、「障がい児だから」という偏見が全く無くなりました。「障がい児だから出来ない」「障がい児だから支援しなきゃ」ということは絶対にありません。それぞれ個性があるので、障がいの有無に関わらずできる事はできるし出来ない事は出来ないんです。

どうしても障がい児との関わりがないと、「一緒に遊ぶのは難しいのかな?」といった偏見が入ってしまいますよね。

そうですね。子どもの頃から特別支援学級と普通学級に分かれて教育を受けるので、そのイメージを持ってしまうのは仕方がないことだと思います。ですが、障がいの有無に関わらず個性として認められ、お互いに協力できるようになって欲しいという想いがあります

インクルーシブな社会を目指して

今後の目標について教えてください!

障がいがある子もない子も一緒に楽しめるイベントをつくっていきたいです。今はイベントを開く際、対象者は「栃木県内の特別支援学級に通う小学生」といったように限られてしまっているんですけど、インクルーシブな社会を目指していくためにも様々な人が集まって楽しむことができるイベントを目指していきたいです

みんなが一緒になって楽しめるイベント、いいですね!対象者を絞らないイベントの開催は、今までのイベントの開催と比べて難しい点はあるんでしょうか?

障がいがある子とない子が関わると、お互いにどのような反応が起こるか分からないという点が難しいと感じます。

このようなイベントの開催に一番必要なことは“組織としての信用”だと思います。スタッフの障がいに関する知識が十分に備わり、安心して子どもを預けられるような場所になれば、このようなイベントの開催は絶対にできると思っています。

そのためにも地域のイベントへの出展や勉強会を行っているんですね!小山さんは今後頑張りたいことはありますか?

学生面では、1年生全体の障がいに関する知識や経験値を上げていくことです。まだ入ったばかりでこのサークルの方向性や活動内容についての理解も足りていない部分があると思うので、勉強会やボランティア活動への参加など、このサークルと関わる機会を増やしていきたいと思っています。

1年生代表としての想いですね。

あとは、イベント参加者と単発的な関わりではなく、中長期的な付き合いをしていきたいという目標があります。今はイベントごとに参加者を募っているのですが、このような単発的な関わりだと相手のことをよく知ることが出来ないまま終わってしまうことがあるんです。それだと勿体無いなと思うので、今後は一定期間長い付き合いをしていく活動もしていきたいと思っています。

中長期的な付き合いだとより相手への理解が深まっていいですよね。

自分も障がいの有無に関わらずみんなが楽しめるイベントをつくりたいと思っています。あとは、イベントの企画を子どもたちとやってみたいです。障がいがある子もない子も一緒になってイベントを主催し、親御さんや兄弟、地域の方々などが参加者となって皆で楽しめる空間をつくっていきたいと思っています。

目の前の課題だけではなく社会の課題と向き合い、その課題解決に向けて前進し続ける『NOBA』。現在もサークルとしての更なる成長に向けて、“アイデアネクスト”にも取り組んでいます。

また、取材中にはメンバー同士が学年関係なく互いにあだ名で呼び合っている様子が見られました。これは、子どもたちと接する際、サークル内で上下関係が見えないようにするためだそうです。

このようなフラットな関係性により、全員が意見を言いやすくなり、より活発なサークルになっているのだと感じました。

インクルーシブな社会を目指して成長し続ける『NOBA』の今後に期待が高まります。みなさんも何かに偏見を持つ前に、まずは知ることから始めてみませんか?

また、8月11日(金)にはミナテラスとちぎにてイベントが行われます。対象者等をよくご確認の上、ぜひご参加ください!

お問い合わせ

ホームページ:https://www.nobauu.com/
メール:noba.udai@gmail.com 
Instagram:@noba_udai
Twitter:@noba_udai
公式LINE:https://line.me/R/ti/p/@212ssgqi?from=page&accountId=212ssgqi