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若者は、選挙をどう捉えているのか?-下野新聞社×宇都宮大学生ディスカッション-

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夏の参院選に向けて、下野新聞社が10~30代の若年層をターゲットにウェブアンケート『選挙 どうする?』を実施(2022/5/25-6/5まで)。

アンケートの結果をもとに、宇都宮大学 地域デザイン科学部の研究室と連携し、大学生とのディスカッションを通じて政治や選挙に関する考えを深掘りするという企画が行われました。

今回、ディスカッションの場にライター森谷が参加してきたので、その様子をリポートしていきたいと思います🙌

12日間で1298人からの回答があったというウェブアンケート。投票権のある10~30代のおよそ7割は、参院選の投票に行く予定とのこと。一方、「誰に投票すればいいのか分からない」「投票しても現状は変わらない」「興味・関心が湧かない」という声も多く目立ちました。

そこで、第1回目のディスカッションは、『どうしてあなたは選挙に行くの?行かないの?』というテーマのもと意見交換を行います。4テーブルに分かれて大学生同士が自由に話し合い、リアルな声を共有します。

ディスカッションの場は和気あいあいと盛り上がり、若者がゆるく本音を語り合える空間となっていました。

30分程度ディスカッションを行った後は、各グループで出た意見を共有!具体的には、以下のような素直な意見が出ました。

〈行く理由〉
・国民の義務だから
・選挙カーやビラ配りなど、非日常の面白さがあるから
・将来を見据えたときに行った方がいいと思うから
・権利を捨てたくないから
・家族みんなで行くから(母の影響が大きい)
・知り合いが出馬しているから

〈行かない理由〉
・投票したいと思う人がいないから
・現状生活に不満がないから選挙によって何かが変わる必要性を感じないから
・自分の一票で社会が変わると思えないから
・他の活動が忙しく、選挙について考えている時間がないから(優先順位が低い)
・選挙期間中だけ頑張っているように見えるから(候補者の普段の活動について知る機会がない)
・住民票を移していないから
・貴重な休日がつぶれてしまうことが嫌だから
・興味がないし面倒だから
・そもそも選挙があることを知らないから

これらの声を聞いていると、「現状を変えよう」と積極的に投票所に出向いている学生は少ない印象を受けます。今や若者の日常生活の一部となっているSNSで「偶発的に情報に触れられる」という機会提供が、“投票への一歩を後押しする”という意味ではとても重要になってくると改めて実感しました。

一方、「『選挙に行こう』という情報は流れてくるが、実際にどんな候補者がどんな政策を行っているのかに関する情報には触れる機会がないので、誰に投票したらいいのか分からない」という意見も。

投票を促す趣旨の情報を流すだけでなく、まずは「どんな人がどんな政策を行っているのか」という候補者に関する二次情報を分かりやすく伝える必要性を感じました。実際、テレビやネットで情報に触れることが可能でも、「専門用語ばかりで難しい」「分かりにくい」と感じている若者も少なくないようです。

また、多くの共感の声を集めていたのが、「今の生活に不満がないから選挙によって何かが変わる必要性を感じない」という意見。選挙結果によって自身の生活にどう影響するのかが見えないので、投票に行こうと思わないというのはごくまっとうな意見。ただ、若者が投票しないと社会全体が変わらないということは事実としてあります。ある学生は、「日々生きることに必死な人は、投票に行く余裕がない。だからこそ、社会で本当に困っている人たちの代わりとなって投票に行く」と言っていました。

これらの意見を聞き、若者は「投票に行きたくない」のではなく「投票に行くまでのモチベーションが上がらない」のだと感じました。もちろん、貴重な時間を使ってまで投票に行くことに躊躇いがあるということもありますが、根深い問題としてあるのが「自分の生活にどう影響するのかが分からない」ということ。今回のディスカッションに参加して、

・一票が自分の生活にどう影響するのかが可視化されている
・SNS上で候補者の政策に関する分かりやすい情報に触れられる
・選挙期間中だけでなく、候補者の普段の活動に関する情報に触れられる
・スマートフォンでの投票など、時間や場所の制約を受けずに投票できる

ということが若者の投票率を上げるために重要になってくるのではないかと感じました。

第2回目のディスカッションでは、『あなたが重視している政策は?』をテーマに議論を深めていきます。

4チームに分かれ、新型コロナ対策、雇用創出・働き方改革、外交・安全保障、税制改革、格差・貧困是正、経済政策、ジェンダー平等・LGBTQ+差別解消、気候・環境問題、少子化対策・子育て支援、憲法の議論など、10個の政策について話し合いを行います。

20分間のディスカッションの後、各チームで重要だと感じたベスト3の政策を発表。

「自分の将来と深く結びつくので、子育て支援対策に興味がある」
「これから就活が始まるので、企業の働き方改革に関心がある」
「世界各国に比べてかなり遅れているジェンダー平等に関する問題が気になる」
「生活に大きな支障をきたしている新型コロナウイルス対策に注目している」

など関心が高い政策についての意見が挙がる中、関心が薄い政策は、なんと4チームとも共通して『憲法の議論』について。

その理由は、

「憲法9条以外の法律については難しくてよく分からない」
「そもそも知らないので、関心が湧かない」

という意見が多数。「そもそも知らない」「知りたくてもとっつきにくい」という状態が、若者の無関心につながるのだと感じました。この意識の差を埋めるためには、まずは「私たちの生活に関連する例えを用いて分かりやすく伝えていくこと」がなによりも大切になってくるのです。

また、「ジェンダーの政策に関して『海外と比べて日本は遅れている』という意見があったのだけれど、自分の身近な出来事ではないはずなのにどうして関心が高かったの?」という下野新聞社からの問いかけに対し、「周りに同性愛者がいるので私にとっては身近な事象だと思うから」「家事が好きなので将来は専業主夫になりたいが、周りに言うと『なにそれ?』と言われてしまうから」という学生からの回答が。一見遠いことのように感じる事象でも、やはり自身の性別役割分担への違和や身近な人が抑圧された状況下で生きていることへの事実など、“身近に起きていると実感できることが、若者の関心の高さにつながっているようです

さらに、

「遠国で起きている戦争についてもSNSで状況が把握できるので、よりリアルに身近に感じるようになった」
「個々の政策については関心があるものの、だからと言ってその政策を打ち出している人に投票しようとは思わない(関心が高い=投票行動につながるということは必ずしもイコールではない)」
「政策ごとに色分けされているが、外交問題やコロナ対策など、共通するものが沢山あった。どの政策を重視するか、ひとえに捉えるのは難しい」

という興味深い声も。

ただ、2回のディスカッションを通して多かった声は、「自分の生活には影響しない(しているか分からない)ので、関心が向かない」ということ。なぜ投票しなければならないのか、その一票が私たちの生活や身近にいる大切な人の生活にどう影響するのかー。それらを声を大にして伝えていく必要性を強く実感する企画となりました。