しもつけクエスト STAGE03
地域×若者 –面白いまちは自分たちでつくれる–
よくきたな、わかものよ。さあ、まちづくりをはじめよう。
「地域づくりに関わってみたい!」
そんな若者のはじめの1歩をサポートするプログラム、『しもつけクエスト』の第3回目が2022年3月10日にオンラインで開催されました。
今回は、NPO法人河原部社(かわらべしゃ)の理事長である西田 遙(にしだ はるか)さんをゲストにお迎えし、コーディネーターである下野市地域おこし協力隊の鈴木 祐磨(すずき ゆうま)さんと『若者×地域』をキーワードにそれぞれの活動や考え方について語り合いました。
NPO法人河原部社 理事長・一般社団法人シタクビト 共同代表
西田 遥(にしだ はるか)さん
1991年山梨県韮崎市生まれ。山梨大にて野外教育を学ぶ傍ら、国内外ヒッチハイクの旅や学生活動に注力していた。現在はプロジェクトデザインを生業とする『一般社団法人シタクビト』、韮崎市で中高生と社会との交差を生み出す『NPO法人河原部社』、全員複業型で仕事を通して暮らしを作っていく『合同会社Hudan(フダン)』という3つの会社を運営している。大学時代から山梨県で活動し、自分を取り巻く身近な社会の構造を分析して必要なところに事業提案し、仕事を生み出している。『NPO法人河原部社』にて、2021年度地域再生大賞を受賞。
下野市地域おこし協力隊
鈴木 祐磨(すずき ゆうま)さん
1994年生まれ。千葉県四街道市のベッドタウンにて小・中・高・大と育つ。2020年7月より地域おこし協力隊として下野市へ。まちとひとをつなげる場作りを行うため、『シモツケ大学』や高校生を対象にしたワークショップを担当。次の動きとして若者と地域をつなげる仕掛けをつくることを妄想している。趣味はスポーツ枕投げ。
20人を超える参加者の中には、栃木県外の方もいたほどの注目度の高さ!2時間を予定していたイベントはなんと30分の延長をするほどの盛り上がりをみせ、大成功に終わりました。
はじめにイベントの主催である下野市総合政策課の大橋さんから、下野市の紹介・しもつけクエストの趣旨の説明がありました。地域にかかわりたい意欲のある人たちと、地域で活躍している人たちとをつなぐ中間支援組織の立ち上げを目指しています。
ゲストの西田さん(1991年生まれ・山梨県韮崎市出身)は、河原部社以外にも一般社団法人や合同会社を立ち上げており、地域事業のプロジェクトマネージャーとして活躍中です。教師から大工への転身を遂げたお父さんの影響で、建築物や暮らしのコミュニティに関心があり、世界各国の人々の生活と暮らしを目で見て体感してきました。お父さんには「構造をみろ」とよく言われた、と話す西田さんの言葉の端々には、構造を意識した本質的な考え方がいくつもありました。
トークナビゲーターの鈴木さん(1994年生まれ・千葉県四街道市出身)は現在、下野市の地域おこし協力隊としてまちと人をつなげる活動をしています。いまのお仕事では『シモツケ大学』という市民大学でまちの魅力を再発見する活動や、高校生とまちをつなげる取り組みとしてワークショップなどを行っています。さらに鈴木さんは『よそ者・若者・未熟者』として、下野市で人々がつながることのできる中間支援組織団体の立ち上げを構想中です。
そんな2人の出会いは3年前。
鈴木さんは、西田さんが地域の中で若者とさまざまな活動をする様子を見て、大きな影響を受けたそうです。
実績がなくても必要とされる、唯一になれる場所で輝きたい
そう語る西田さんが現在の人生を歩んでいるのは、20歳の誕生日をドイツの山頂で迎えたことがきっかけでした。「想像すらできない自分を生きられたら楽しい人生になるはず」と考えた西田さんは帰国後、地域住民から不用品を回収してお店兼シェアハウスをつくり、国内外の若者との交流を重ねていったのです。
西田さんが『必要とされる唯一になれる場所』を目指して向かったのは、山梨県増冨ラジウム温泉郷でした。ここでたった1人の20代の住民となったのです。そして若者を呼び込むために仕事を生み出していった結果、20代の移住者を8人も増やすことに成功しました。
その後、韮崎市にもどった西田さんは2016年、「やって、みせる」をテーマとして河原部社を立ち上げました。年間1,800人もの中高生とかかわりながら、彼らに自分たちが挑戦する姿を見せています。河原部社では『ミアキス』という中高生向けのサードプレイスの運営も行っています。
学生とは1人の人間同士として接することを心掛がける、という方針のもと、「ミアキスは、親でも教師でもない”第3の大人”と学生をつなぐ継手(つぎて)を目指している」と西田さんは話してくれました。河原部社以外にも合同会社Hudanを運営しており、20~30代の若者の「あったらいいな」を当たり前にする取り組みを行っています。
西田さんが考える面白いまちづくりとは、「土着の知を手作りし続けること」だといいます。『土着の知』とはその土地で得られる知識や経験のこと。自分たちの手で事業や暮らしをつくっていく中で得られる知識や経験は、また次の暮らしを作る糧になっていきます。
最後に、西田さんたちの活動の原点には次の6つのステップがあることを話してくれました。
6つ目は、そのテーマに対するアクションだそうです。「自分なりの一手を考えるには、このステップの中で自分がどの段階にいるかを知ることも重要」という言葉で締めくくり、参加者の実践を後押ししました。
続いてのトークセッションでは、鈴木さんや参加者のみなさんが西田さんにさまざまな質問をしました。チャット上では参加者からのコメントや質問が数多く飛び交っており、高い関心と意欲がうかがえました。
ー 上手くいかなくて焦ったことは?
A 起業1年目は月収5万円だったが、空き家をタダで借りたりご飯をごちそうになったりと周りに恵まれていた。
ー 失敗の捉え方は?
A 何かにトライしてその結果に対して次の一手を出していくので、失敗も学びになっていると考えている。
ー 仲間づくりのコツは?
A 楽しいことや「あったらいいよね」を提案し、積極的に誘っていく。
ー 西田さんの役割は?
A 若者の声を行政にとどけること。
ー 鈴木さんができることはなんだと思う?
A 現代の日本では、地域と関わることなく家と会社・学校の往復だけでも生きていけるが、よそ者だからこそできることをしていくといいのでは。まちを盛り上げていきたいという意欲のある団体はいくつもあるので、その主体が若者であることはアドバンテージになるはず。
ー 今後やりたいことは?
A デンマークのようなまちづくりをしたい。アパート・戸建てなどにこだわらずに生活できるように暮らしに選択肢をつくりたい。そこには地方の可能性を感じている。
イベントを通して鈴木さんは、「あえて、よそ者・若者・未熟者の自分が表立つことで助けてくれる人や仲間が増えると思う。よそ者である自分にも存在する価値や役割はあるということが分かった」と手ごたえを感じていました。
地域づくりに若者が関わっていくことは、想像もつかない魅力的な可能性や面白さを秘めています。今後の下野市での中間支援組織の設立に、ますます期待が高まりますね。
永山 志穂
シモツケ大学 市民ライター
福島県出身の永山志穂です。就職を機に栃木県にきました。会社と自宅を往復する人生でしたが、シモツケ大学さんに出会ってあたたかい気持ちやワクワクを取り戻しています!