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夢に翻弄され、夢に挑む物語。映画『翼の生えた虎』

いきなりですがみなさん、“夢”を持ったことはありますか?

「夢」を辞書で引いてみると、「将来実現させたいと思っていること」と定義されています。夢と聞いてあまりピンと来なくても、「〇〇になりたい」「〇〇をやりたい」と思ったことは一度はあるのではないでしょうか。

でも、いざ実現しようと一歩踏み出してみると、一気に現実が押し寄せて「現実的じゃない」「無理だ」なんてネガティブな気持ちになることも…。

夢を諦めずに追い続けることは大変です。でも、どうしても諦めきれないことってありませんか?


夢を現在抱いている人、夢を叶えた人、夢を諦めた人。
今回の記事では、夢を持ったことのある全ての方にオススメの映画『翼の生えた虎』をご紹介します

映画『翼の生えた虎』

◎あらすじ
主人公の向井虎(むかい たける)は、江戸時代から続く栃木県の伝統工芸、小砂焼(こいさごやき)の窯元の一人息子。冒険小説家になる夢を持つ虎は、田舎町で一生を終えたくないと、親の反対を押しきり高校卒業と同時に上京した。しかし現実は甘くなかった。落選と肉体労働の日々に疲れきり、夢を諦め故郷に戻 る決意をする。15 年ぶりの故郷。疎遠となっていた旧友、勘当された父親との再会。全てが上手くいかないなかで、ある親子に出会う。誰にも本音をさらけ出せない虎は、ある嘘をついた—。

キャスト:谷 英明, 池田香織, 小島義人, 奥居元雅, 佐藤結耶, 太三, 神後 修治, 真柳 美苗, 細渕 敬史, 大村 達郎, 棚橋 由佳, オキク, フランキー岡村, 相澤 美砂子, 棚橋 誠一郎
監督・脚本:冨田 航
製作:『翼の生えた虎』製作委員会

映画『翼の生えた虎』予告

『翼の生えた虎』は那須烏山市と那珂川町を中心に撮影された映画です。

8月から池袋シネマ・ロマ、宇都宮ヒカリ座、名古屋シネマスコーレにて順次上映されました。今後はフォーラム那須塩原にて、9月30日(金)から10月6日(木)まで上映予定となっています。

※追記
フォーラム那須塩原にて、ご好評につき上映期間が10月7日(金)から13日(木)に延長となりました

また、2023年1月から福岡KBCシネマにて、上映予定です!(詳細は記事終わりの上映情報にて)

ライター森田も宇都宮ヒカリ座にて『翼の生えた虎』を鑑賞してきました!

映画を鑑賞する前に見つけて驚いたのが、ポスターが貼られた掲示板の傍にあった『翼の生えた虎』のコーナー。中でも目を引くのは夢ノートと書かれたボードです。「諦めたくない夢がある、全ての人へ。夢、描いてみませんか。」というメッセージが添えられていました。

青ペンで書かれた一人一人の夢が素敵…!

その後、映画を鑑賞させていただきました!

映画の序盤で主人公が主人公なりのこだわりを貫くシーンでグッと惹きこまれ、自然豊かな那須烏山市と那珂川町の風景に癒され、主人公たちの変化から夢を持つことの大切さが伝わってきました。鑑賞前にどういう意味なんだろうと疑問に思っていた『翼の生えた虎』というタイトルも、映画を観ると納得。この作品にぴったりすぎるタイトルでした。

夢に挫折した主人公を中心に展開される人間ドラマでじんわりと胸が温まる『翼の生えた虎』

その魅力をさらに探るため、映画監督である冨田航さんにお話を伺いました。

プロフィール

冨田 航(とみた わたる) 映画監督
1990年生まれ。慶應義塾大学卒業後、映画学校にて、監督・脚本を学ぶ。その後ブラジル、コロンビア、コスタリカ、フォークランド諸島などで『ダーウィンが来た!』をはじめとするドキュメンタリー製作に携わる。その後、2017年に初の長編映画『翼の生えた虎』を製作し、国内外の映画祭で受賞。国々の多様な生活多様性や生死のライフバランスを見て視野が広がる。活動拠点を南米に移し、誰かの心に響く作品をモットーに日々励む。

『翼の生えた虎』撮影場所である那須烏山市・那珂川町との出会い

『翼の生えた虎』を撮ろうと思ったきっかけはなんでしょうか?

もともと2014年頃に自然風景の良いところで長編映画を撮ろうと企画していました。それで、ロケ地を探していた際に、栃木県の那須烏山市と那珂川町を見つけたことがきっかけです。加えて、自分の身の振り方を悩んでいた時期だったことにリンクさせて映画を撮影したいとも思っていました。2017年には一度完成していましたが、編集さんと慌てて一緒に編集していました。どうしよう。でもこのまま一般公開はしたくないと悔いが残ってしまいました。コロナ禍で気持ちが整理でき、よしやろうと0から編集と追加撮影をしました。そして完成したのが、2022年の4月ですね。

一度完成していたのですね。撮影時の思い出はありますか?

夏と秋に撮影したので、夏のセミの鳴き声や秋の静かな雰囲気など自然をどのようにすれば撮影できるだろうかとカメラマンの方と話しあったことです。あと、スタッフ皆で共同生活をしながら撮影をしていたので、部活の合宿みたいな雰囲気で楽しかったですね。

素敵ですね。私も『翼の生えた虎』を観て、すごく景色が綺麗で、那須烏山や那珂川町に行ってみたくなりました…!

森田さんは那須烏山市や那珂川町に行ったことはありますか?

那須烏山市の中心市街地には一度だけ行ったことがあります。

そうですよね。撮影した場所は観光地ではなかったので、観光客は行かないような場所でした。しかし地元の方に、「自分達の住んでいるところに、こんなにいいところがあるんだ!」と言っていただいて、魅力の再発見も出来たかと思います。

撮影は、地元の方と連携して行っていたのですか?

そうですね。協力していただきました。地元の方数名には映画にも出演していただきました。音楽も那珂川町に住んでいる岡倉ゆかりさんに担当していただいたのでぜひ注目して聴いてほしいですね。

音楽、とても素敵でした!それに加えて、自然音もその場にいるような感覚があってすごく良かったです。自然っていいなあと思いました。

ありがとうございます。自然ってエネルギーがあるなあと思います。疲れた時に自然を感じるとエネルギーをもらえますね。

自然を感じられるっていいですよね。

栃木県って海がないじゃないですか。でもその代わりに川や山があって、食べ物が美味しい…。水もその恩恵を受けてるんじゃないかなと。良いところですよね。

『翼の生えた虎』の裏側

冨田さんはこれまでドキュメンタリーを多く撮られている印象を受けたのですが、どうして今回は、ドキュメンタリーではなく、ヒューマンドラマの『翼の生えた虎』を撮影したのですか?

動物も自然も好きなのですが、人間が一番好きだからです。ドキュメンタリーでも人間描写を描きます。ヒューマンドラマもドキュメンタリーも人に焦点を充てているという意味では似てますね。カメラも三脚に立ててではなくハンディで撮るので、撮影方法も似てますね。

映画を製作する際に大変なことはありましたか?

もう、全部難しいですね(笑)撮影ができればいいやと思っていたのですが、そういうわけにもいかず。制作チームなどなかったので、撮影に入るまでの準備が大変でした。一旦撮影に入ると軌道修正をすることが難しいので、準備や打ち合わせをしっかりしていました。

事前準備の方が大変なんですね!撮影に入った後だと現場にいる方と意見がぶつかることはありましたか?

ありましたね。でもいきなり否定はせずにお互いにアイデアを出し合って、一緒に作り上げました。自分ばかりが指示をすると制限をすることになって、そうすると演者の演技も制限されると感じているんです。そのため、ある程度は自由に演じていただいて、自然な演技を引き出せるように意識していました。

伸び伸びと演技ができる現場だった、ということでしょうか?

現場はキャストに小島 義人(こじま よしと)君がいたので和やかでしたね。彼は小学5年生で、予測が出来ない行動で振り回されたこともありましたが、今となってはすごくいい思い出ですね。大人だけの現場だと、たまに張り詰めた空気になることがあります。そういった面ですごく彼に助けられました。あとは撮影監督とアシスタントさんがシンガポールの方で、サブ録音を担当した方もアメリカの方だったので、日本とは違う価値観や文化を持った人がいたことも映画を製作する上でプラスに働いたと思います。

ーー『翼の生えた虎』の裏側から、冨田さんの映画への想いやこだわりが見えてきました。さらに深掘りしていくと、『海外』という言葉が飛び込んできました。

『翼の生えた虎』は9月30日からフォーラム那須塩原で公開をするのですが、その後はインドを皮切りに、海外へ営業をかけるつもりです。

海外に営業!?どのような経緯でそうなったのですか?

今回、沢山のお客様に観ていただけるように、日本の地方映画館にも営業を引き続きかけています。でも、私自身の知名度のなさと、すごく有名なキャストさんがご出演しているわけではないので、「上映したいけどお客さんが来るか分からないのでお断りします」と言われることが多かったんです。映画館さんの売上に繋がらず、一定のファンが見込めないということですね。じゃあ、いっそのこと海外に行って、物語で勝負をしかけようと思いました。

なるほど。ではなぜインドから営業をかけようと…?

実は一度完成した時に、いくつかの海外の映画祭で受賞していて、本作を招待されました。その際に、インド、そして中東からの評価がすごく良かったんですよ。日本伝統工芸の小砂焼の窯元や、日本の家族の姿など、響く部分があったのかもしれないです。

確かに、「知っている俳優」という先入観がないほうがより多くの人に届きそうですよね。

世間に知られている俳優さんや監督でないから上映を断られたことが悔しかったです。主演の谷 英明(たに ひであき)さん、ヒロイン役の池田 香織(いけだ かおり)さん、キャストの方々には素晴らしい演技をしていただきました。映画に関わっていただいた方への恩返しの意味も込めて、海外でも観ていただけるように動いています。どうなるか分からないですが挑戦してみます。

夢を諦めないこと

映画撮影というと、Cinemarcheさんの取材記事で東日本大震災の後に興味を持つようになったとおっしゃられていましたが、映画はそれ以前から好きだったのですか?

うーん、好きか嫌いか選べと言われたら好きな程度でした。震災の後の10年前からの方が映画監督をやりたい気持ちがすごく強まりましたね。

なるほど。冨田さんは大学卒業してから映画撮影について学ぶ専門学校に入り直していましたよね。その選択って簡単にできることではないと思うのですが、どうしてその道を選んだのですか?

冨:そうですね。周りはみんな就職していて、自分は就職はしなかったのでその頃から道を踏み外していたのかもしれないです(笑)最初は、「これでいいのかな」と劣等感がありました。でも人生一度きりですし、やってみたいことをやろうと思ったんです。

素敵ですね!確かに、人生を後悔したくはないですよね。

そうですね。誰かに言われたわけではないので、やってみてダメだったら諦めて、うまくいったら良かった、くらいに思うようにしていました。

森:『翼の生えた虎』では『夢を諦めないこと』がテーマとされていましたが、冨田さんも映画監督になるという夢を追う中で大変だったことはありましたか?

森田さんくらいの時はどうしたらいいのかわからなかったです。当時は『翼の生えた虎』などの作品が出来上がるとは知らなかったので、ずっと不安でした。映画監督になりたいという気持ちだけでなんとか突っ走ってきた感じです。でも、今思えば良かったなと思います。周りから、やりたいことをやっていて羨ましいと言われることもありますが、逆に結婚して子供が産まれたということを聞いて羨ましいと思うこともたまにありますね(笑)

どうしても、ないものねだりになってしまいますよね(笑)

本当にそうですよね(笑)今ではSNSで簡単に友人の近況がリアルタイムで分かって、自分と周囲の人との比較が簡単にできてしまいます。そうすると、自分のアイデンティティがなくなってしまう感覚があるので、自分を高めるためにもなるべく見ないようにしています。

冨田さんの中で心の変化が起きた時期はありましたか?

2017年に映画祭で『翼の生えた虎』を上映したんです。その時、緊張してずっとドキドキしていました。それは、作品への自信がなかったからなんです。でも、今は映画を何万回も見て「もうやれることはない」と思えるほど編集したので、「もう何言われてもいい」という気持ちになりました。自分の中でも後悔はないですね。

やりきったことが良かったのでしょうか?

今回は良かったですね。時間がかかってしまいましたが、やりきれて良かったです。映画を観ていただいた方から色んな声をいただきました。「響きました」と言う人もいれば、「つまらない」と言う人もいて。でもそれに一喜一憂しないで、そのまま素直に受け止められました。

ーー最後に、冨田さんの『夢』についての価値観について伺いました。

冨田さんは『夢を追うこと』をどう思いますか?

みんなが夢を追うことは、地球が崩壊してしまうので出来ないことだと思っているんです。ある人は諦めて、ある人は夢を追い続ける。でも、諦めたことは悪いことではなくて、だからこそまた違う夢を見つけて人生が豊かになればいいと思っています。僕は夢を追いかけた側ですが、会社に属してはいないので、人によって良い人生だと感じるかどうかは分かれるんじゃないかと思います。

確かに、そうですね!では今の冨田さんの『夢』はなんですか?

コロンビアに住んで、仕事をして暮らしたいです。あとは生涯で10本映画を作ることですね。4年に1本、作品ができたらいいなと思ってます。『翼の生えた虎』で1本目が出来上がったので後9本ですね。偉大なるタランティーノ監督のようなことを言っています(笑)

お話を聞いている中で、「私が一番やりたいことってなんだろう?」と自分に問いかける瞬間が何度もありました。大事なこと、優先すべきこと、楽しいと思えること、一つ一つを天秤にかけて自分を見つめ直していきたいです。

「夢を諦めないこと」は夢を実現できた姿に憧れ続けるということで、「どんな自分になりたいか」を意識し続けることが大事なのかもしれません。

人生には沢山の選択肢がありますが、色んな選択肢を選べるほど時間もないわけで。その中で選んだ道を後悔しないように、夢を見つけて、今を生きていきたいなとしみじみ感じました。

『翼の生えた虎』では主人公を中心に夢を持つ人が登場します。その人達の姿から何か感じ取れる部分があるはず。ぜひ劇場に足を運んでいただけると嬉しいです。

上映情報

◎劇場:フォーラム那須塩原
〒325-0023 栃木県那須塩原市豊浦12−1ビバモール那須塩原
上映日:9月30日(金)〜10月6日(木)①12:25 〜/ ②18:05 〜
10月7日(金)〜10月13日(木) 13:40〜 (※上映期間が10月13日(木)まで延長となりました!)
料金:一般: 1,800円 / 学生: 1,500円 / 高校生: 1,000円 / 中学生・小学生: 1,000円 / 幼児(3歳以上): 1,000円

・舞台挨拶が10/1(土) 14:20〜 14:50 に行われます! (※①12:25~の上映後)
登壇者:谷英明、小島義人、岡倉ゆかり(映画音楽/MC兼)、冨田航(監督)
購入方法:オンラインまたは劇場窓口(劇場OPEN〜)
※通常料金、招待券ご利用不可
詳しくはこちらから(フォーラム那須塩原さんのサイトへ飛びます)

◎劇場:福岡KBCシネマ
〒810-0071 福岡市中央区那の津1−3−21
上映日:2023年1月より公開予定!

各種情報

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