地域で活躍する大人と出会う。『UJOKOZA』取材体験レポート
12月10日(土)、宇都宮女子高の土曜授業『UJOKOZA』の一環として、4名の宇都宮女子高生(以下、宇女高生)がaretに取材をしに来てくれました🙌
当日は、編集部兼ライターの森谷 真依(もりや まい)さんからあしかもメディアの紹介を行った後、宇女高生たちがNPO法人とちぎユースサポーターズネットワーク(以下、ユース)の代表である岩井 俊宗(いわい としむね)さんにインタビューを行いました。岩井さんのこれまでの経歴をお聞きしつつ、現在はどのようなお仕事をされているのか、詳しく伺いました。
今回お話を伺ったのは…
NPO法人とちぎユースサポーターズネットワーク 代表理事 岩井 俊宗(いわい としむね)さん
1982年生まれ。栃木県宇都宮市出身。2005年に宇都宮大学国際学部を卒業後、ボランティアコーディネーターとして、宇都宮市民活動サポートセンターに入職。NPO・ボランティア支援、個別SOSに従事。2008年より、若者の成長の機会創出と、持続的に取り組む人材を輩出し、若者による社会づくりの促進を目的に、とちぎユースサポーターズネットワークを設立。2010年NPO法人化。代表理事を務める。NPO法人宇都宮まちづくり市民工房理事、栃木県協働アドバイザー等も務める。
岩井さんがユースを設立するまで
-「地域課題と若者を近づける」「地域課題の解決を職業として成立させる」ことを目指して-
岩井さんは現在、ユースの代表として、地域で活動する人たちを支える活動を行っています。「社会課題を解決したい」という思いを抱いたのは、高校生の頃、日本赤十字社の派遣でネパールへ行ったことがきっかけだそうです。
実際のネパールはどうでしたか?
『日本赤十字社の方々が支援を行う様子を日本で発信する』という活動を行っていました。当時のネパールは貧しい国の一つで生活衛生環境が整っておらず、乳幼児がぜんそくや肺炎で亡くなるリスクが高く、平均寿命は約60歳(1999年当時)というような状況でした。滞在した農村では電気やガス、水道もなかったんですよ。
日本では当たり前のライフラインがないなんて、かなりカルチャーショックを受けそうですね…。ネパールに行ったことで心理的に変化したことはありますか?
ネパールの現状を見たことで、「もっと発展途上国の問題解決にかかわりたい」と思うようになりました。そんな思いのもと宇都宮大学 国際学部に進学し、発展途上国について勉強していました。
ネパールに滞在したことが進路選択のきっかけになったんですね。どのような大学生活だったのでしょうか?
当時、発展途上国の課題を解決するためには国際連合の職員になる以外に職業としての選択肢がなかったので、「自分で道をつくろう」と思いました。仲間や大人の方に支えていただき、大学生の頃から様々なプロジェクトを立ち上げるなど、自分からアクションを起こしていましたね。
大学時代から活発に動かれていたのですね。充実した大学生生活だったことが伝わってきます!卒業後はどのような道に?
卒業後は、NPOやボランティアを支援する宇都宮市民活動サポートセンター(現在、宇都宮市まちづくりセンター『まちぴあ』)で働いていました。でも、やりがいと充実感を感じる一方で、ボランティアには課題を解決するための継続性や予算の問題があり限界を感じ始めたんですよね。そこで、現・NPO法人トチギ環境未来基地 代表理事の塚本 竜也(つかもと たつや)さんとユースを立ち上げることにしたんです。
「継続的に課題解決をしていきたい」という思いが設立にあたっての要因のひとつになったのですね。ユースを設立した理由を教えてください!
ユースを設立した理由は二つあります。一つ目は、「地域課題と若者を近づけたい」と思ったからです。若者が地域課題に日常的に触れることができればもっと積極的に活動する人が増えると考え、地域課題や願いを分かりやすくしようと思ったんです。二つ目は、「地域課題の解決を職業として成り立たせたい」と思ったからです。
ご自身が活動する中で感じてきた課題がユースを設立した理由になったのですね!
ユースでのお仕事
– チャレンジする人たちが仲間と出会いやすく活動を続けやすい『まちの装置』をつくる –
今はどのようなお仕事をしているんですか?
何かにチャレンジする人たちが仲間と出会いやすく活動を続けやすい『まちの装置』をつくる仕事をしています。直接若者とかかわる仕事は、20代のスタッフに任せています。
『まちの装置』ですか?詳しくお聞きしたいです!
例として、『とちぎデジタルハブ』という取り組みがあります。これは、「地域で解決したいことがありアイデアがほしいけど誰に相談すれば良いか分からない」ときに活用する『掲示板』のようなものです。自分の地域の課題や暮らしの困りごとが書き込まれると第三者からコメントが来る仕組みになっていて、栃木県のデジタル戦略課と一緒に取り組んでいます。
他にも、ユースと違う団体で行っているのですが、金融機関の口座から10年間出し入れのない『休眠預金』を県内で活動を行う団体さんに渡し、課題解決に使ってもらうように支援するといった取り組みも行っています。
休眠預金、始めて聞きました…!
それ以外にも、デジタルの分野を利用して新しい行動変容や価値観を育む取り組みも行っています。例えば、那須烏山市に『山あげ祭』という伝統的なお祭りがあります。でも、少子化・高齢化の影響で担い手が減少していました。そこで、動画配信等を行い魅力を発信したんです。
伝統的な地域のお祭りを守ることも仕事の一つになっているんですね!どのようなことを感じましたか?
『まちの大人を育てるために必要な催し』だと実感しましたね。若者たちが参加することで、そのまちに深くかかわる大人になっていく。お祭りはその儀式のようなものだと思っています。
お祭りと若者の成長を結び付けて考えたことなんてなかったです…!『地域と若者』に関連するお仕事は、他にどのようなものがあるのでしょうか?
那須烏山市の民話のアニメーションの監督をした経験もあります。地元の小中学校ではふるさとを学ぶ授業があるのですが、そのための教材として全16話のアニメーションをつくりました。
お仕事のジャンルは多岐にわたっているんですね!ユースの仕事にはどのような特徴があるのでしょうか?
組織の中だけで仕事をしているのでなく、組織を中心に様々な人が集まってくるようなイメージで、受け皿や接着剤的な役割を担っていることが特徴です。「変わりたいけど変われない」という組織は多いので、そういった組織の支援を行っています。
まさに、日々新しい挑戦を支援しているユースだからこそできる取り組みですね!
若者に対する視点
– 時代に沿った価値観にアップデートし続けていく –
岩井さんは若者と関わる機会が多いと思いますが、若者ならではの価値観に驚いたことはありますか?
やはり時代とともに価値観は変わっていると思います。驚きもありますが、面白いという感覚の方が強いですね!
どのように変わっているのでしょうか?
ネガティブな言い方をしてしまうと、社会や世の中のことよりも自分のことで精一杯になってしまっている印象があります。その背景には、LINE文化の影響があると思っています。LINEがなかった時代は他者評価をあまり気にせずにいたのですが、今はスマホを開くと友達が何を感じているかが見えてしまうので、気疲れしてしまうのではないでしょうか?ポジティブな言い方をすると、優しい子が増えたなと思います。
SNSによる影響力の大きさは日々私も感じています。時代によって若者に対する接し方は変えているのでしょうか?
自分が若い頃とは時代的背景も違うので、そこと比較して仕事をしているつもりはありません。その分、今の社会にフィットする価値観で話さなければ若者に伝わらないと思うので、アップデートし続けたいです!
自分の価値観も時代に合わせて意図的に変化させていく必要があるんですね!
今後の目標
– 若者の可能性を信じてあげられる大人でありたい –
最後に、今後の目標について教えてください!
何かにチャレンジしようとするとき、どんな大人に出会うかによってその可能性は変わると思っています。私はやりたいことを本気で支えてくれる大人に出会えたので、自分で組織を立ち上げるという選択ができました。だからこそ、若者が一歩踏み出そうとしているとき、本気で信じてあげられる大人でありたいと思っています。
今回の宇女高生の取材体験を通して、岩井さんのユース設立に込められた思いや、多岐にわたる事業の内容について改めて知ることができ、筆者としても有意義な時間になりました!
若者の立場として地域課題にかかわることで、過ごしやすい「まち」を自分の手でつくっていくことは貴重な経験になると思います。
また、高校生の頃から地域で活動を行う大人の話を聞くことは、将来の選択肢を広げるきっかけになるのではないでしょうか。今回参加してくれた宇女高生たちにも、地域課題の分野で活動するのことの魅力が伝わっていれば嬉しいです。そして今後の学生生活でも、継続してあしかもメディアと関わってもらえれば良いなと思います!