〈仕事紹介〉誰かが「要らない」と言ったものに、いのちを吹き込む仕事。きめ細やかな提案を大切にする次世代のリサイクルショップで、人と関わり合いながら働くという選択
目次
みなさんは、『リサイクルショップ』と聞いてどんなイメージを持ちますか?
「中古品を安く大量に販売しているところ」
「冷蔵庫・洗濯機・テレビなどの大型家電製品が多く売られているところ」
そういったイメージを持っている方も少なくないのではないでしょうか。
ライターの森谷もそんなイメージを持っていた一人です。
でも、栃木県にある一つのお店と出逢い、その考えは大きく覆されました。
まず店内に入ってみてびっくり。
「ここ、本当にリサイクルショップ!?」
と、思わず心の声が漏れてしまいました。
見たことのない形をした椅子や質感の良いテーブルなど、個性あふれる家具や雑貨がすらり。もちろん、生活に欠かせない大型家電製品も取り扱っています。引っ越したばかりでも、お部屋を自分好みにアレンジしながら生活をイチから整えられる商品が並ぶこのお店は、『オトワ リバース&リバイバルワークショップ(略してオトワリバース)』。
すごい!お洒落!可愛い!を連呼し語彙力が皆無になってしまった森谷に、「ここ、いいでしょ」と話しかけてくれたのは、代表の永祚 純(えいそ じゅん)さん。
単なるものの販売ではなく、一人ひとりに寄り添ったたしかな提案力が実店舗の強み
うちはね、半分リサイクルショップだけど半分リサイクルショップじゃないって感じの店なの。
…?どういうことでしょうか?
他のリサイクルショップとの最大の違いは、生活イメージを想起させてあげるということ。家具が積み重なってると、自分の部屋に置いたときのイメージがすごくしづらいんだよね。
なるほど!だから生活イメージが湧くような家具配置になっているんですね。ひと目で「こういう風に使うんだ」と分かるとすごく安心しますね。「これって本当に私の部屋に合うのかな?」といつも悩んでしまうからありがたい…
そうだよね。それに、昔よりもインテリアが多様化してるから「どう使えばいいのか分からない」っていう人がすごく増えてるんだよね。だから、使い方を提案してあげる。
ただ商品を販売するだけでなく、使い方まで提案してくれるんですね!?
ロール・プレイング3を実践するオトワリバースのスタッフは、購入を検討しているお客様に対してインテリアに関する知識の共有やアドバイスはもちろん、本当にお客様の理想に合っているかどうか、丁寧なヒアリングを行っているそう。
そして、お客様のイメージに合わないようなら購入を勧めない場合もあるのです。お店としての売上よりも、お客様にとって真に心地いい理想の空間づくりができるかどうかを重要視しているのだと、熱いものを感じました。
コロナ禍でリモートワークが増えてきた頃、「カウンターチェアがほしい」っていうお客さんが来たことがあってね。「何に使うの?」って聞いたら、「パソコン作業がしたい」と。それで、「背の高いカウンターチェアは長時間座っていると疲れてしまうのでパソコン作業は難しいですよ」って言ったの。
今はインターネットで大半のものが買えてしまうけど、お客さんの本当の目的をヒアリングして最適なものを提案してあげることが、実店舗の存在意義だと思ってるんだよね。
「どんな用途で使うのか」。その目的まで丁寧にヒアリングを行ってくれるからこそ、自分にとって“本当にいいもの”を購入することができますね。実際に目で見て触れられるというところも、まさに実店舗ならではの強みですね。
長い付き合いになるであろう家具は、実際に目で見て使ってみないと自分にとって本当にいいものなのか、判別が難しい場合があります。故に、インターネットでどんなものでも手に入る現代だからこそ、実物の使用感を試すことができる実店舗の存在はとても大きなものだと感じました。
さらにオトワリバースには、関東圏はもちろん、愛知県や静岡県、宮城県など、遠方から訪れるお客様も多いそう。単にものを販売するだけでなく、一人ひとりのニーズに沿ったきめ細やかな提案という付加価値が、次世代のリサイクルショップにとって欠かせない要素になっているのかもしれません。
リサイクルショップの域を超えた“お洒落さ”と“多様なイベント”が魅力
ここに訪れるお客様はどんな人が多いのでしょうか?
「お部屋をお洒落にしたい」という人は多いね。あとは、「新築を建てたから自分好みの家具を導入したい」とか。
新築の自宅をリサイクルショップの家具でコーディネートするんですね…!
モデルルームの買取もしてるから、結構良い家具が入ってくるんだよね。新品で買うと300万のソファを50万で売ったりとかしてるよ。
すっごく安く売りましたね!!
1週間で売れちゃったよね。ちょっと安くしすぎちゃったかな。アハハハ(笑)
Instagramでのキャンペーンもすごく多いですよね。8,000円の冷蔵庫を見つけたときは、めちゃくちゃびっくりしました…。
毎週金曜日に値段を下げて売る『LUCKY FRIDAY(ラッキーフライデー)』ね。やっぱりさ、たまにはラッキーって思いたいじゃん。
(サービス精神がすごい…!)何か他にもキャンペーンやイベントをやっているのでしょうか?
設計士やコーディネーター、一般人など、多種多様な人がごちゃまぜになって空間をコーディネートする『インテリア同好会』っていうイベントをやってるよ。色んなアイデアの共有ができてすごく面白いんだ。あとは、『ジャンクマーケット』。
『ジャンクマーケット』?
宇都宮にはマルシェイベントがすごく沢山あるんだけど、飲食店が花形なの。もの売りをしている人のところにはお客さんが来なくて、飲食のところだけすごく並んでる。「だったらもの売りだけのイベントやろう!」と駐車場を開放して、来場者が商品を介してお店の人とお話できる時間をつくったんだよね。
買う買わないは別にして、「これってこういうものなんだ」「こんな風につくられてるんだ」って、ものに対する想いを共有できるイベントになってるね。
ものに対するこだわりやその背景にあるストーリーを知れるって、中々ない機会なのでとても嬉しいですね。
嬉しいよね。こんなに狭い駐車場でも、300人くらい来るよ。
人と人とがつながり合う瞬間。そこにあるものが、インテリア
オトワリバースでは、他にも映画鑑賞会やカラオケにみんなで行くオケ部(※コロナの影響によりお休み中)など、インテリアショップとは一見無関係に思える内容のイベントも多数行っているそう。永祚さんは、どうしてこんなに多くのイベントを開催しているのでしょうか。
多分、俺は人が好きなんだよね。人と人をつないで、その人たちがシナジーを生む瞬間を見るのが好き。根源を辿ると、もともと「リサイクルショップを運営しよう」なんて思ってもなかったんだよね。
そうなんですか!?かねてよりリサイクルショップの運営に興味があったのかと…!
そうそう。でも、18歳のときにニュージーランドに留学に行って、そこで過ごしたホストファミリーとの団欒の時間がすごく印象に残ってて。ご飯は合わないのに、その時間はすごく心が通ってた。その時その場所にあったものが、テーブルとか椅子だったんだよね。
それで、「人と人とをつなげて豊かな時間を過ごしてもらうための一助になりたい」と思った時に、自分の中での答えがリサイクルショップの運営だったの。だから社是も『つながり』で、イベントもたくさんやってる。
そんなところに起源があったのですね。人と人とがつながり、心地よい時間を過ごしてもらうためには、空間づくりはとても大切になってくるんですね。
空間って大切だよ。あ、そうそう。この空間(店舗2階のミーティングルーム)は、ミーティングとか打ち合わせ以外は基本的に誰でも自由に使っていいの。勉強していく人もいるし、仕事をしていく人もいる。見て、このホワイトボードの落書き。
ここ、誰でも自由に使っていい空間だったんですか!?すごい…
オトワリバースは、街の中の一部になりたいんだよね。休憩したり、雨宿りしたり、友達とお話したり。みんなにとって心地いいスペースをつくりたいんだ。
居場所やたまり場って年々減ってきてるので、自由に過ごせる空間が地域にあるっていいですね。店内もお洒落だし、椅子も座り心地がよくって最高です(ここで仕事したい…!)。
オトワリバースのアットホームな雰囲気は、引っ越しや転勤で見ず知らずの土地に来ることになってしまった不安な人のこころをすごく温めてくれるだろうな、と確信に近いものを感じました。
というのも、栃木県は関東最大の内陸工業団地とも言われており、転勤や単身赴任がとても多い県なのです。
つながりがなく心細い人は予想以上に多くいるので、自分好みの家具を購入でき、空間コーディネートのアドバイスが貰え、さらに沢山の素敵な人とつながれるオトワリバースは、単なるリサイクルショップではなく、そこで暮らす人びとにとって欠かせない存在になっているのです。
『株式会社AXIA』 を立ち上げた本当の理由は…
そんなオトワリバースですが、なんと今年の8月に株式会社を立ち上げたそう。
その名も、『株式会社AXIA(アクシア)』。AXIAとは、リサイクルショップの運営を行う『オトワ事業部』、不用品処分・回収・遺品整理を担う『住関連事業部』という2つの事業部から成り立つ株式会社で、その事業範囲も展望も、想像の範疇を大きく超えるものでした。
AXIAの特徴的なところは、高齢者が住みやすい空間づくりというサービスを行っているということ。これね、実はやってるところほぼないの。遺品整理にどんなイメージを持ってる?
故人が残したものを整理するイメージですかね…?
そうだよね。例えば、独立した子供を持った老夫婦が一軒家に住んでいたとして、旦那さんが亡くなったとする。その時に遺品整理に入るよね。どんなことをしたらゴールになると思う?
ものを捨てて空間を綺麗にすること?
そう。一般的には不用品を捨てることがゴールだよね。でも、これって誰のための何のための遺品整理なんだろうと考えた時に、「残された家族の生活はどうするんだろう」という話になってくる。
大体、3〜4LDKに住んでいた場合、夫婦の寝室って2階にあるの。お父さんが亡くなってもお母さんはまだ2階で寝ているとなると、高齢になってもなお、1日に何回1階と2階を往復しなければいけないんだという話になってくる。
たしかに、そうかもしれない…!
だからこの場合は、これから一人で生きていかなければならないお母さんのために、生きていくために必要な環境を全部1階に降ろしてしまう。
遺品整理のほとんどは『不用品を捨てる』っていう次元で終わらせてしまっているのね。どうしてかというと、お金儲けになるから。でも肝心なことは不用品を捨てることじゃなくて、「残された人にとって快適な環境づくりができるかどうか」。それをうちが担いたいから『株式会社AXIA』を立ち上げたの。
会社を立ち上げた理由がかっこよすぎる…!仕事として考えたときには見えない視点が大切になってくるんですね。
聞けば、ごみの処理にかかる費用には明確な基準がないため、不当な金額を提示している業者も少なくないのだとか。株式会社AXIAはオトワリバースというリサイクルショップ(実店舗)を持っているので、そういった意味でも適正価格でしっかりとしたサービスを提供してくれるという信頼につながるそう。
ビジネスとしてではなく、そこにいる一人として向き合ってくれる会社がそばにあるということは、地域に暮らす人にとっても心強いのではないでしょうか。
遺品整理だけじゃなくて、お家の片付けが難しいおじいちゃん・おばあちゃん向けに整理収納サービスもやってるよ。
主目的は、人が快適に暮らすための空間づくりのお手伝いなんですね!
そう。だから結局、住関連事業が必要になってくるの。不要品の処分とか遺品整理って、ものの販売とは違ってダイレクトに心と心がぶつかるんだよね。
一番の目的は、『ものと心の整理整頓を提供する』こと。整理整頓というと普通はものだけなんだけど、そうじゃない。どうしてそこを徹底しているのかというと、浮かび上がってくるのは2025年問題。
4人に1人が高齢者になる『超高齢化社会』のことですね。
そこで何が起きるのかというと、高齢者が溢れて老人ホームに入れなくなってしまう。まさに今の逼迫したコロナ患者と同じ状態だよね。かといって、老人ホームや介護施設は決まった数しかない。じゃあ、そこに入れない人たちってどこで生活すればいいと思う?
自宅ですかね…
そう。そしたら我々の出番だと思ってる。できるだけ導線を少なく、快適な生活を実現すること。これは急務だと思ってる。でも最終的な目標は、宇都宮市とAXIAで業務提携をすることなんだよね。
宇都宮市と業務提携?
なぜかというと、ごみ処理場にAXIA事業所をつくってもらうため。ごみ処理場に集まってくるごみって、実は使えるものがまだまだ沢山あるんだよね。それに、宇都宮市ではごみを処理するために年間50~60億ものお金がかかっているんだよ。1人あたり1万3千円位で、つまりはそれが税金だよね。
そこで、我々がごみ処理場に入って仕分けして、使えるものを買い取って海外輸出もしくは地域に再び還元する。
ごみの量が減ることで土壌・大気汚染を削減することができるし、処理にかかる費用も削減される上、我々が買い取ることで多少なりともごみ処理場が収益化される。これが、AXIAとして最終的にやりたいこと。栃木県が先駆けて実践して、それが全国に広がっていったら環境問題に対しての日本のインパクトがすごく大きいと思うの。だから、絶対にやりたい。
まさか、インテリアショップから社会的なごみ処理問題にまで事業が発展するなんて思ってもいませんでした…!
でもいきなりは難しいから、まずは自治体を動かそうと3年前に始めたのが『うつのみや還元プロジェクト』。これは、自治会の公民館でそのエリアに暮らす人に対して不用品回収の無料相談会を毎月実施してるプロジェクト。今まで捨てていたものを買い取ってもらえるなら捨てないで済むし、ごみの量も減るでしょ。
プロジェクトの名前の由来は、そこで出た売上の10%を自治会に還元してるから。高齢化が進む今、自治会の加入率は悪くなる一方で、予算がどんどん縮減されているの。そうなると街路灯が交換できなくなってしまったり、公民館の修繕ができなくなってしまったり、催し物が実施できなくなってしまう。
たしかに、自治会に入る人って今はすごく少ないですよね。でも10%も還元してしまうと、AXIAにとってのメリットはあるのでしょうか?
正直、会社にとってのメリットがすごくあるというわけではないんだけど、ずっとそのエリアで暮らしてきた人にとってはAXIAに頼むことで愛着ある地域に少しでも還元できるし、自治会にとっても運営費用が増える。それに、AXIAも地域の色んな人とつながれるから、「これって三方よしじゃん!」と思って始めたの。
話を聞くうちに、地域に暮らす一人ひとりにとっての心地よさにフォーカスを当て、それに関連することを事業として形にする、という会社のあり方が手にとるように分かったような気がします。
はじめは「お洒落なリサイクルショップを運営しているところ」という単純なイメージを持っていたのですが、裏側を知れば「こんなにも地域と社会のために志を持って活動しているなんて…」と心の底から驚きました。
家族のようなアットホームな関係性。入社後、一緒に学んでいくスタンスでOK!
そんな株式会社AXIAでは、ともに事業をより良くしてくれる仲間を募集予定(現在準備中!乞うご期待です✨)。
何度もお伝えしているように、リサイクルショップの運営で大切にしていることは、お客様への寄り添った提案。となると、「空間コーディネートや様々な家具に関する知識がないと働くのは難しいのでは…?」という疑問がどうしても浮かんでしまいます。
実際、働くとなると難しくないのでしょうか?
うちが育てるから、そこは心配ない!リサイクルショップってそんなに数が多いわけじゃないからスタッフも俺以外全員素人からのスタートだし、工場勤務とか歯科助手とか、みんな畑違いの仕事をしてたんだよ。
未経験者がほとんどなんだ…!
「私もここでキラキラしたい」って入ってくれた人もいてさ。地味でつまらない仕事もあるけど、これからの地域発展のためには絶対に欠かせない仕事だと思ってる。だから、スタッフはみんな志が高いんだ。
それに、誰が一番偉いとかここではないからね。AXIAっていう会社のためにそれぞれが能力を発揮していくだけだから、一緒に成長していける人だと嬉しいかな。うちみんな本当仲良くて。毎年沖縄旅行とか行ってるもん。
もはや家族ですね!(笑)
家族だよ(笑)普通、休みまで一緒にいたいと思わないよね。だから、「沢山給料稼ぎたいな」「条件いいな」っていう人よりも、「本気で関わってみたい」っていう人は楽しくてしょうがないと思うな。
主に関わってほしい業務は、オトワ事業部の『オトワリバース』の運営(※住関連事業部の求人は現在調整中)。リサイクルショップという言葉に囚われず、一人ひとりに必要とされているかどうかを軸に据えた事業が展開されており、そこには「人との関わりやつながりを大切にしたい」という切な想いが隠されていました。「地域と関わって働いてみたい」「人が好き」という人はきっと自分らしく輝きながら成長できるのではないでしょうか。
永祚さんは、リサイクルショップの魅力は「誰かが要らないと言ったものを別の誰かが欲しいと言っている瞬間にある」と語っていました。ごみになってしまうはずだったものに、もう一度、いのちが吹き込まれる。一つひとつのものに宿ったストーリーに想いを馳せいのちを吹き込むということも、リサイクルショップで働く上での醍醐味かもしれません。
次世代のリサイクルショップ『オトワリバース&リバイバルワークショップ』。気になった方は、ぜひ店舗にも足を運んでみてくださいね!
店舗情報
店名:オトワリバース&リバイバルワークショップ【OTOWA Rebirth&Revival workshop】
住所:栃木県 宇都宮市陽東5-10-28
TEL:028-612-2223
営業時間:10:00~19:30
定休日:木曜日、他
駐車場:有
HP・SNS情報
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